神戸レスキューの50年<br>ー苛酷な活動を通して培った「不屈の精神力と気概」

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神戸レスキューの50年
ー苛酷な活動を通して培った「不屈の精神力と気概」

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神戸市消防局 救助隊50年の歩み

昭和41年12月10日、陸自富士学校の普通科教導連隊において、神戸市消防局は横浜市消防局とともに、レンジャー体験教育を無事に修了した。
昭和41年12月10日、陸自富士学校の普通科教導連隊において、神戸市消防局は横浜市消防局とともに、レンジャー体験教育を無事に修了した。
西日本で初となる 救助専任の部隊

昭和43年5月に発足した専任救助隊の隊員は12名。

発隊に先立ち昭和41年から42年にかけて、隊員は陸上自衛隊富士学校で救助技術に関する教育、訓練を受けている。救助隊専用の車両や資機材も用意され、局本部の直轄隊としての設置であった。戦前の警視庁消防部(のちの東京消防庁)を例外とすれば、消防による救助隊は当時、横浜市消防局の消防特別救助隊しか存在せず、西日本の消防本部としては初の救助隊発隊であった。

さらに昭和44年には灘消防署、昭和45年には須磨消防署に専任救助隊が発隊し、それぞれ東部方面専任救助隊、西部方面専任救助隊と名付けられた。一方で神戸市消防専任救助隊が名称変更した中部方面専任救助隊は生田消防署の所属となった。神戸消防としてはここに、所属の専任救助隊3隊体制が整うこととなった。

神戸市消防専任救助隊に昭和44年、配備された日産の幌型パトロール。
神戸市消防専任救助隊に昭和44年、配備された日産の幌型パトロール。
特別高度救助隊「スーパーイーグルこうべ」が運用している救助工作車。
特別高度救助隊「スーパーイーグルこうべ」が運用している救助工作車。
救助工作車も昭和50年にいち早く配備された。
救助工作車も昭和50年にいち早く配備された。
各方面で整備が進む署救助隊と専任救助隊

昭和61年、当時の自治省(現総務省)により救助隊の編成、装備および配置の基準を定める省令が発令されると、翌年には神戸市消防局でも専任救助隊の配置がない各消防署に兼任救助隊を配置することになり、東灘、葺合、水上、北、兵庫、長田、垂水、西の各消防署に署救助隊(兼任救助隊)が発隊する。

平成5年には兼任救助隊である西消防署救助隊、さらに平成12年には長田消防署救助隊が専任救助隊となり、それぞれ第5方面専任救助隊(西消防署)、第4方面専任救助隊(長田消防署)に改組された。

また東部方面専任救助隊は第1方面専任救助隊(灘消防署)、中部方面専任救助隊は第2方面専任救助隊(生田消防署、平成12年から中央消防署)、西部方面専任救助隊は第3方面専任救助隊(須磨消防署)と改称され、東部、中部、西部から第1、第2、第3へと名称が変更された。

その後、平成13年には第1方面専任救助隊が灘消防署から東灘消防署に、第3方面専任救助隊は須磨消防署から北消防署に配置転換されている。平成15年には北消防署管内に北神消防分署が設置され、同分署に署救助隊が発隊した。

六甲山の山中でロープによる進入技術「セーラー渡過」を訓練する救助課程風景(昭和44〜47年の風景)。
六甲山の山中でロープによる進入技術「セーラー渡過」を訓練する救助課程風景(昭和44〜47年の風景)。
現在はセーラー渡過の訓練は、神戸市消防学校で実施される。
現在はセーラー渡過の訓練は、神戸市消防学校で実施される。
先輩から後輩へ受け継がれてきたテンマイル走。その伝統は今日も変わらず。
先輩から後輩へ受け継がれてきたテンマイル走。その伝統は今日も変わらず。
六甲山中を約30キロ走破するテンマイル走(昭和44〜47年の風景)。
六甲山中を約30キロ走破するテンマイル走(昭和44〜47年の風景)。
山元町付近で活動する兵庫県隊。東日本大震災における緊援隊派遣は45日間におよんだ。
山元町付近で活動する兵庫県隊。東日本大震災における緊援隊派遣は45日間におよんだ。
特別高度救助隊 スーパーイーグルこうべ

平成18年、総務省による救助隊の編成、装備および配置の基準を定める省令の改正に伴い、第2方面専任救助隊(中央消防署)は特別高度救助隊「スーパーイーグルこうべ」(通称SEK)として生まれ変わり、水上消防署へ配置転換された。また第1方面専任救助隊が東灘消防署から再び灘消防署に、第5方面専任救助隊が西消防署から垂水消防署に配置転換されている。

平成25年には第2方面専任救助隊(特別高度救助隊)が本部直属隊となって、中央消防署に常駐することになった。これにより、神戸市消防局の現在の救助隊の編成、配置が整うことになった。

一方、市街地が東西に長く海岸線に接している神戸市では、陸上の救助隊だけでなく、いわゆる水難救助隊の存在も重要だ。神戸消防では水難救助隊という独立した隊としては設置していないが、第2方面専任救助隊(特別高度救助隊)、第4方面専任救助隊、第5方面専任救助隊、水上消防署救助隊、以上4隊が潜水隊指定隊となっており、水難救助事案で潜水隊として出場する。なお、他の方面専任救助隊、署救助隊では各隊員が急流救助研修を修了し、全隊が水面救助事案に対応できる。

さらに六甲の山並みが迫るため、各救助隊は文部科学省が実施する山岳遭難救助研修修了者を中心に山岳救助事案への対応も万全だ。

平成30年7月豪雨で緊援隊として広島県に出場したスーパーイーグルこうべ。
平成30年7月豪雨で緊援隊として広島県に出場したスーパーイーグルこうべ。

神戸市消防局の救助隊配置

[東灘消防署] 署救助隊
[灘消防署] 第1方面専任救助隊
[中央消防署] 第2方面専任救助隊(特別高度救助隊)
[水上消防署] 署救助隊
[北消防署] 第3方面専任救助隊
[北神消防分署] 署救助隊
[兵庫消防署] 署救助隊
[長田消防署] 第4方面専任救助隊
[須磨消防署] 署救助隊
[垂水消防署] 第5方面専任救助隊
[西消防署] 署救助隊

平成30年5月、神戸市消防局では専任救助隊発隊50周年を迎えた。 消防救助の黎明期に早くも産声を上げ、救助の意識を高く掲げつつ駆け抜けた50年の間には、阪神・淡路大震災という過酷な活動の歴史もあった。 「不屈の精神力と気概」を伝統とし、現場活動と厳しい訓練のなかで培われてきた、災害現場でけっして諦めない強い気持ち、強靭な体力、そして強固なチームワーク…。 平成30年12月19日、かの阪神・淡路大震災から24年目を迎えるにあたって行われた実践的な震災想定訓練の様子を紹介しつつ、神戸レスキュー50年の歴史を振り返ってみたい。
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写真・文◎伊藤久巳 写真協力◎神戸市消防局 Jレスキュー2019年3月号掲載記事

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