消防ポンプ自動車CD-Ⅰ型 東京消防庁
東京消防庁[東京都]
写真・文◎伊藤久巳
「日本の消防車2018」掲載記事
狭隘路への進入を容易にする東消スタイルの小型ポンプ車
ポンプ操作盤と吸管むき出し
東京消防庁ではポンプ車を実に約670台も保有し(化学車などを含まない、純然たるポンプ車のみの数字)、毎年平均約50台を更新している。これらは小型ポンプ車、普通ポンプ車に大別され、それぞれさらに水槽なし、水槽付きのタイプに分けられる。小型ポンプ車の水槽なしタイプは手動ホースカー1台、水槽ありタイプは約1トン水槽、普通ポンプ車の水槽なしタイプは電動ホースカーと手動ホースカー各1台、水槽ありは2トン水槽と手動ホースカー1台に分類され、それぞれが東京消防庁のスタンダード仕様となっている。
今回取り上げるのは、このうち水槽のないタイプの小型ポンプ車。分類上はCD-I型にあたる。ポンプ車を小型化するという考え方は、東京消防庁では第1回目の東京オリンピック開催前の昭和38年頃に早くも始まった。ニッサンFR40型のホイルベースを詰めて小型化し、都内各所にある狭隘路に備えた。そこから、署所の管内事情等に合わせた小型ポンプ車と普通ポンプ車の振り分けが開始され、以来約半世紀が経過する。
現在、東京消防庁が小型ポンプ車(水槽なし)の仕様書に示すサイズは、全長5.8m以下、全高2.7m以下、全幅1.95m以下、車体総重量6000㎏未満、最小回転半径5m以下。小型ポンプ車製作の長い過程ででき上がったこの数字は、ぎりぎり小型化されたもので、これ以上切りつめる場合は積載する資器材の小型化などを検討する必要がある。
車体形状の特徴としては、ポンプ操作盤や吸管が外に露出していることが挙げられる。現在のポンプ車の全国的傾向として、これらはシャッター内に収められることが多いが、東京消防庁では資器材収納スペースにはシャッター等を設けるが、ポンプ操作盤と吸管はむき出しだ。
「シャッターを付ければ、これらの部分にも資器材が積載できるかもしれないが、現着後の早急な放水、シャッター故障による操作不能の危険回避を優先し、シャッターのないスタイルにしている」(装備部装備課ポンプ車製作係)
また、段差や急坂の通過のため、「デパーチャーアングルは後輪から15度以上」なども仕様書には書き込まれている。
一方、積載資器材については、三連はしごと単はしごがポンプ室の上部に斜めに積載されていることが特徴だ。積載装置などを使わず、後部のロックを解除するだけで後方へとすぐに引き出せる。
1台だけ積載するホースカーは電動昇降装置で地上へと降ろされるが、省スペース、迅速性、堅牢性等から手動式が採用されている。東京消防庁ではホースカー上部に分岐金具と接続した2セットの50㎜ホース×2本、下部に65㎜ホース×10〜12本(署所によって異なる)と決まっている。
さらに細かい部分では、平成27年度車両からはタイヤがオールシーズンタイヤになり、今回の平成28年度車両からは前面窓下の左右に赤色警光灯が設けられている。
右側面
左側面
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整備のしやすさも考慮