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【コラム】消防業務は警察の仕事だった
日本の消防業務は自治体消防制度が発足するまで警察の仕事だった。
写真◎編集部
明治維新後、現在の東京の歴史をさかのぼると東京府(現在の東京都庁)、司法省警保寮(現在の警察庁)、東京警視庁(現在の警視庁)などと所管が次々と変わっている。
1880年(明治13年)6月1日、消防事務は現在の警察庁にあたる内務省警視局のもとに創設された消防本部(現在の東京消防庁の前身)が所管することとなった。ここに初めて公設消防機関が創設されることになる。さらに、今日の消防団の前身となる消防組とは別に、現在の東京消防庁の前身となる公設の消防機関としての消防本部が誕生した。
このとき初めて、現在の消防吏員にあたる消防職員が採用され、従来警察分署に属していた消防組も消防本部に所属することになり、「消防本部職制」、「消火卒規則」、「職務心得」などが新しく制定された。
消防本部が誕生して約半年後の1881年(明治14年)1月14日、消防本部は消防本署と改称され、同日、再設置された現在の警視庁に属することとなった。以後、消防は自治体消防制度が誕生するまでの間、警察機構の中に属していた。
1945年(昭和20年)、太平洋戦争が終戦を迎えた。連合国軍最高司令官に就任したマッカーサー元師は、東京日比谷に総司令部(GHQ)を設置し、1946年(昭和21年)、警察制度審議会を設置する。そこでは、消防機能の強化拡充を図るため消防と警察は分離し、市町村に担当させることを進めた。翌年には、消防組織法制定され、1948年(昭和23年)3月7日、消防組織法が施行され自治体消防制度が発足、国家消防庁(現在の総務省消防庁)も発足し、各地に新しく自治体消防が誕生した。
現在の東京消防庁も、同年に警視庁から分離独立して「東京消防本部」として誕生し、約2カ月後の同年5月1日には、「東京消防庁」と名称を変えた。その理由の一つにGHQは「警察と消防は同格であり、重要性も同一である」と強調している。
参考文献:日本の消防史/国書刊行会編