支援車II型 枚方寝屋川消防組合消防本部 

日本の消防車両

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ハイドロサブHS60を採用

前述の2つと大きく異なるのが、大量送排水用コンテナだ。同コンテナはウインチで繋がれたポンプユニットと150mmホースや分岐金具、ホース巻き取り機の積載部で構成されており、すべて合わせてハイドロサブシステムと呼ぶ。メインのポンプは帝国繊維のハイドロサブHS60(油圧で駆動)で、送水流量の大きいハイフローと高圧で送水できるノーマルの2つのインペラ―を状況に応じて付け替える。150mmホース使用時でハイフローならば1km先まで毎分約3000L、ノーマルならば約2000L送水できる。

また先代のフロートジェットポンプに使用していた100mmホースは廃棄せず、150mmホースと併用運用している。媒介金具を使って100mmホースを使用した場合、1km先までハイフローで毎分約2000Lの送水能力を有する。能力としては150mmホースに比べてやや劣るが、150mmホース(1本50m)が約100kgなのに対し100mmホース(20m)は約18kgなので手びろめで延長できる。つまり、インペラ―やホースを使い分けることで様々な状況に柔軟に対応できるのだ。

さらに同システムは送水だけでなく、排水にも活用できる。管内には低地が多いため、近年頻発するゲリラ豪雨により地下駐車場等が浸水する事案がたびたび発生しており、2012年(平成24年)8月14日の豪雨では1時間に140mmを超える雨により、管内で約1700棟が床上浸水、約9000棟が床下浸水した。これまではポンプ車等で排水していたが、そもそも消防ポンプは排水を前提として設計されていないため活動場所が限られていたり、排水量が不足するなどの問題があった。ハイドロサブHS60は毎分4000Lという強力な排水能力を持つため、浸水被害時の迅速な排水活動も可能となった。

また、消防力の偏りを防ぐため同車の導入に合わせて寝屋川消防署にも大量送排水システム車を新規配備した。こちらは大量送排水に特化した車両で、平トラックにハイドロサブシステムを搭載したシンプルな構造となっている。

さまざまな隊が運用

同車は特殊災害事案では救助隊、遠距離送排水事案の際は消防隊という具合に、災害種別や事案に応じて運用隊を換える。その上ポンプ車や救助工作車のように慣れ親しんだ車種ではないため、どの隊も同様に習熟度をアップさせることが重要だ。現在はメンテナンスや点検のたびに習熟訓練を行い、今後は管内の淀川を実際に利用した遠距離送水訓練も予定している。万が一の出動に備えてすべての車両機能を使いこなせるよう、隊員たちは目下習熟訓練に努めているところだ。

特殊災害用
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それぞれのイメージに合わせて何度も協議して作り上げた車両デザイン。同コンテナは二羽の鷹が鋭い爪でNBC災害を防ぎ、市民の安全を確保するイメージで作成。
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同コンテナには先代車両から引き継いだNBC関係資機材を積載する。
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コンテナ前方のシャッター式収納庫内にはエアーテントやロープ、ストレッチャー型指揮机を収納。
支援用
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助けを求める全国の人たちに対して、二羽の鷹がその力強さで安心感を与えるイメージでデザインした。
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観音開きの扉内部に跳ね上げ式のスロープを装備。さらに一工夫してスロープ側面に取っ手をつけ、収納しやすくした。

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ハイドロサブシステム

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