消防ロボットシステム「スクラムフォース」
市原市消防局
千葉県の市原市消防局に特殊装備小隊「スクラムフォース」が実戦配備された。
写真・文◎伊藤久巳
「日本の消防車2020」掲載記事
搬送車とコンテナが活動拠点、降ろした4台のロボットが現場へ
2019年(令和元年)5月24日、千葉県の市原市消防局に発足した特殊装備小隊が運用する消防ロボットシステム「スクラムフォース」は、石油コンビナート火災など放射熱によって消防隊員が火点に接近できない事案で、消防ロボットシステムが自律して活動し、災害の拡大を抑制するシステムだ。
2011年(平成23年)の東日本大震災で、市原市消防局管内で発生した石油コンビナートLPG貯蔵施設の爆発炎上事案、さらには2012年(平成24年)に大きな人的被害が発生した兵庫県の爆発火災事案を受け、総務省消防庁が2015年(平成26年)から5カ年計画で研究、開発を進めていた。計画開始から3年が経過した2017年(平成29年)3月、その実戦配備型が完成。今後2年間をかけて実証すべく市原市消防局に配備された。
ロボットシステムは、地理空間情報通信技術を活用した精度の高い動作を行うこと、人が近づけない危険な現場で近接活動することの2点を主眼としている。
システムの中心となるのは、指令システムを備えたコンテナを積載する搬送車で、搬送車が拠点としての役割を担い、コンテナ内の指令システムがロボットシステムの自律、協調連携という高度な制御を行うためのいわば司令塔となる。搬送時には、コンテナには4台のロボットが積載、収納されることになる。
ロボットは、
●偵察・監視ロボット「スカイ・アイ」
●走行型偵察・監視ロボット「ランド・アイ」
●放水砲ロボット「ウォーター・キャノン」
●ホース延長ロボット「タフ・リーラー」
以上4台で形成される。
活動のイメージはこうだ。まず、飛行型偵察・監視ロボット「スカイ・アイ」が現場上空を自律飛行し、空中から災害の状況、放水砲ロボットが走行する経路の状況を偵察する。
次に、走行型偵察・監視ロボット「ランド・アイ」が「スカイ・アイ」からの情報を参考とし、放水砲ロボット「ウォーター・キャノン」が走行することになる経路を先行して自律走行し、経路や災害の状況をより詳細に偵察する。
これらの偵察情報をもとに、放水砲ロボット「ウォーター・キャノン」が放水位置まで自律走行し、風の状況を勘案しつつ放水到達目標への最適なノズル方向を設定する。
その「ウォーター・キャノン」に150㎜ホースを接続したホース延長ロボット「タフ・リーラー」が自律的に追従走行して放水位置まで移動したのち、水利方向へと自律走行により後退し、同時に150mmホースリールを自律的制御による自動的に繰り出し、消防隊員が活動可能な領域までホースをいわば逆延長する。その際、ホース延長した先の水利は、すでに配備されている遠距離大量送水システム「ドラゴンハイパー・コマンドユニット」が第一に考えられる。
そして、「スカイ・アイ」と「ランド・アイ」は現場に留まり、「スカイ・アイ」は放水の軌跡を上空から撮影、「ランド・アイ」は同じく横から撮影し、火点の目標に放水が到達しているかを監視し、その情報を指令システムへと送り続ける。
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コンテナは搬送車から降ろして一体運用