消防ロボットシステム「スクラムフォース」<br>市原市消防局

日本の消防車両

消防ロボットシステム「スクラムフォース」
市原市消防局

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最前線で現場活動する4台の消防ロボット

偵察・監視ロボット「スカイ・アイ」は、同軸二重反転のローターによる回転翼航空機ロボットだ。反転する2枚のローターはバッテリーによるモーター駆動で飛行する。カメラ、熱画像カメラ、可燃ガス検知器、放射熱量計、無線装置、高精度GPS、移動距離速度や針路を計測するセンサーなどを搭載する。

走行型偵察・監視ロボット「ランド・アイ」は、「ウォーター・キャノン」よりも先行して現場活動を開始するため、走行経路に障害物が飛散していることも考慮した走行型ロボット。走行方式には4輪の車輪のほか、車輪を収納することによりキャタピラによる走行も可能。これらはバッテリーによるモーターで駆動し、最高速度は時速約5.5㎞。ロボットハンド、カメラ、熱画像カメラ、燃焼ガス検知器、放射熱量計、無線通信装置(中継器を搬送して設置する)、高精度GPS、回転式レーザー距離計、車輪回転計、移動速度や方向を計測するセンサーなどを搭載する。

放水砲ロボット「ウォーター・キャノン」は質量1700㎏の四輪駆動車。放水、泡放射するノズルを装備する最前線車両で、放水と泡放射を、ひとつのノズルを切り替えて行う。その能力は毎分4000L、圧力1.0MPaにより有効射程70mに達する。走行はバッテリーによるモーター駆動で、最高速度は時速7.2㎞。カメラ、熱画像カメラ、可燃ガス検知器、放射熱量計、風向風速計、高精度GPS、回転式レーザー距離計、車輪回転計、移動速度と方向を計測するセンサー、電子地図生成機能などを搭載する。情報伝達は有線方式。

ホース延長ロボット「タフ・リーラー」は150㎜高耐熱ホースを300m分巻いたリールを自律的に制御して自動繰り出しする(システムもホースも特許出願中)。車体は耐熱構造で、自衛噴霧機構を装備し、耐輻射熱は20kW/㎡まで耐用可能。走行はバッテリーによるモーター駆動で、最高速度は時速7.2㎞。カメラ、高精度GPS、回転式レーザー距離計、車輪回転計、移動速度と方向を計測するセンサー、電子地図生成機能などを搭載する。情報伝達は有線方式で、先行する「ウォーター・キャノン」に追従するための先行車追従自律走行機能も有している。

これらの消防ロボットシステム「スクラムフォース」は、今後2年間をかけて実証を行い、総務省消防庁では量産型ではさらに高度化した上で実戦配備を行っていくとしている。

ウォーター・キャノン
スクラムフォース
放水中の放水砲ロボット「ウォーター・キャノン」。自律走行により火点に対して理想のポジションに自律的に部署し、高温の放射熱にさらされる中で泡放射や放水を実施する。
スクラムフォース
質量1700kgの四輪駆動車で、放水、泡放射するノズルを装備する。自衛噴霧機構を装備し、輻射熱20kW/㎡まで耐用。
スクラムフォース
ノズルはこのままで放水と泡放射の切り替えが可能(特許出願中)。放水は広角とストレート、泡放射はセミアスピレート。
スクラムフォース
車体上面。カメラ、熱画像カメラ、風向風速計、高精度GPSアンテナ、回転式レーザー距離計、移動速度と方向を計測するセンサー(上面四隅のアンテナ)などが設置されている。
スクラムフォース
耐熱ゴムによるブロックタイヤは悪路の走行も可能。
タフ・リーラー
スクラムフォース
ホース延長ロボット「タフ・リーラー」。質量2800kgの四輪駆動車で、内部にはリールに巻いた150mm高耐熱ホースが300m分収納され、自律的に制御して自動繰り出しされる(システムもホースも特許出願中)。輻射熱20kW/㎡まで耐用。
スクラムフォース
後退してホース延長していく「タフ・リーラー」。高耐熱150mmホースの延長は300mで、「ウォーター・キャノン」に連結される先端部はさらに耐熱材が巻かれている。
スクラムフォース
「ウォーター・キャノン」が火点部署し、「タフ・リーラー」が後退してホース延長する状態。「タフ・リーラー」に取り付けられていた、指令システムと「ウォーター・キャノン」をつなぐ有線コントロール用のワイヤーのガイドが地上へと落とされる。
スクラムフォース
火点進出の際の「ウォーター・キャノン」(写真左)と「タフ・リーラー」(右)のペア状態。「タフ・リーラー」から「ウォーター・キャノン」へ150mmホースが連結され、さらに指令システムと「ウォーター・キャノン」を接続するコントロール用有線ワイヤーが「タフ・リーラー」の床下を通るほか(手前のワイヤー)、「タフ・リーラー」が「ウォーター・キャノン」に追従するためのコントロール用有線ワイヤーも接続されている(奥側のワイヤー)。
スクラムフォース
「ウォーター・キャノン」が「タフ・リーラー」を従えて火点進出する状態。
スクラムフォース
「タフ・リーラー」が延長する高耐熱150mmホースと「ドラゴンハイパー・コマンドユニット」の大型放水砲搭載ホース延長車の150mmホースを連結する媒介金具。写真手前が大型放水砲搭載ホース延長車側で、奥側が緊締金具を必要とする「タフ・リーラー」側。
スクラムフォース
先行偵察任務が終了した「ランド・アイ」はその後も現場を横から撮影し、放水状況の映像を指令システムに送り続ける。
スクラムフォース
コンテナ内で運用中の指令システム。
スクラムフォース
ホース延長ロボット タフ・リーラー
【SPECIFICATIONS】

ホース延長ロボット タフ・リーラー

寸法●長さ2.4m×幅1.7m×高さ2.1m 
質量●2800kg 
走行方式●四輪駆動、前輪操舵、バッテリーによるモーター駆動 
最高速度●7.2km/h(2.0m/s)
搭載機器●カメラ 
情報伝送●有線 
制御センサ●高精度GPS、回転式レーザー距離計、車輪回転計、移動速度および向きを計測するセンサなど
自律機能●地図上の指定位置まで走行、150mmホース延長敷設、先行車追従自律走行 
耐輻射熱●(放水砲ロボットに準ずる)
搭載ホース●150mmホース、300m(高耐熱)
その他●電子地図作成機能

スクラムフォース
放水砲ロボット ウォーター・キャノン
【SPECIFICATIONS】

放水砲ロボット ウォーター・キャノン

寸法●長さ2.3m×幅1.4m×高さ2.1m 
質量●1700kg 
走行方式●四輪駆動、前輪操舵、バッテリーによるモーター駆動 
最高速度●7.2km/h(2.0m/s)
搭載機器●カメラ、熱画像カメラ、可燃ガス検知器、放射熱量計、風向風速計 
情報伝送●有線制御 
センサ●高精度GPS、回転式レーザー距離計、車輪回転計、移動速度および向きを計測するセンサなど 
自律機能●地図上の指定位置まで走行、放水目標位置への最適なノズルの制御(上下左右角度)
耐輻射熱●20kW/平方メートル(自衛噴霧機構付)
放水ノズル●<放水>広角、ストレート <泡放射>セミアスピレート4,000L/分 1.0MPa(有効射程70m)
その他●電子地図生成機能

スクラムフォース
走行型偵察・監視ロボット ランド・アイ
【SPECIFICATIONS】

走行型偵察・監視ロボット ランド・アイ

寸法●長さ1.4m×幅0.9m×高さ1.8m(アンテナ等を含む)
質量●285kg 
走行方式●車輪走行(後輪駆動、前輪操舵)、キャタピラ(左右の速度差により方向転換)、バッテリーによるモーター駆動 
最高速度●約5.5km/h(1.5m/s)
搭載機器●ロボットハンド、カメラ、熱画像カメラ、燃焼ガス検知器、放射熱量計 
情報伝送●無線(中継器を搬送設置)
制御センサ●高精度GPS、回転式レーザー距離計、車輪回転計移動速度および向きを計測するセンサなど 
自律機能●地図上の指定位置まで走行 
耐輻射熱●8.0kW/㎡ 
段差乗り越え●40cm 
その他●電子地図生成機能

スクラムフォース
飛行型偵察・監視ロボット スカイ・アイ
【SPECIFICATIONS】

飛行型偵察・監視ロボット スカイ・アイ

寸法●長さ1.5m×幅0.5m×高さ1.0m(プロペラ径2.5m)
質量●69kg 
飛行方式●同軸二重反転(上下のプロペラが逆向きに回転)バッテリーによるモーター駆動 
最高速度●約60km/h(16.0m/s)(マニュアル操作時)約15km/h(4.0m/s)(自律飛行時) 
搭載機器●カメラ、熱画像カメラ、可燃ガス検知器、放射熱量計 
情報伝送●無線 
制御センサ●高精度GPS、移動速度および向きを計測するセンサなど 
自律機能●地図上の指定位置まで飛行。飛行中、2台のカメラで常に目標物を捕捉し撮影(シンバル機構搭載) 
耐輻射熱●8.0kW/㎡ 
耐風性能●12m/s 
飛行時間●13分(1飛行あたり)

千葉県の市原市消防局に特殊装備小隊「スクラムフォース」が実戦配備された。
写真・文◎伊藤久巳 「日本の消防車2020」掲載記事

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