消防ポンプ自動車CD-I型(救助資機材積載)いわき市消防本部
いわき市消防本部 内郷消防署[福島県]
写真・文◎橋本政靖
「日本の消防車2018」掲載記事
Ⅱ型救工→CD-I型ポンプ車級
兼任隊に求められているのは迅速出動・直近部署の “マルチ消防車”
外観
東北有数の都市消防
福島県いわき市は東北の沿岸部南東端に位置し、面積1231平方キロメートル、人口約35万人。かつては常磐炭鉱で栄え、現在は石油コンビナート等特別防災区域を有する化学工業のほか、常磐湯本温泉やスパリゾートハワイアンズなどのリゾート施設も立地する東北有数の都市となっている。昭和41年に平市、磐城市、勿来市、常磐市、内郷市、旧石城郡全域(3町4村)、双葉郡の一部(1町1村)の計14自治体が1つとなり当時日本一の面積を誇るいわき市が誕生している。
いわき市消防本部は1本部4課5署1分署7分遣所、車両82台、353名の体制で、このうち内郷消防署は約1万8000世帯、人口約4万1000人を管轄。配備車両と隊員数は消防ポンプ自動車、水槽付消防ポンプ自動車、救急車など7台42名である。管内には主要道路が縦横に通じており、国道6号線および国道49号線のほか常磐自動車道いわきICからいわき湯本IC間、磐越自動車道いわきJCTから小野IC間を管轄している。
兼任隊は迅速出動せよ
平成28年度末、この内郷消防署にCD-I型消防ポンプ自動車とⅡ型救助工作車の更新として救助資機材を積載したCD-I型消防ポンプ自動車が配備された。新車両のコンセプトは、先代救助工作車と消防ポンプ自動車のスペックを極力落とすことなく、消火、救助、幅広い災害に対応できる車両とすること。また運用は専任化された救助隊ではなく消火隊との兼任(いわゆる乗換)のため、運用のしやすさも考慮された。というのも、以前はポンプ車で出向中に救助要請が入ると、一旦署に戻って車両を乗り換えなければならず、出動に時間を要していたからである。
救助工作車とポンプ車の機能を1台に集約することで、出向中は転戦による迅速対応が可能になる。また、火災現場などで破壊系の資機材などが必要になった場合にもすぐに対応可能である。いわき市消防本部では、管内5署すべてに救助工作車を配備しており、とくに内郷消防署は隣接の平消防署と常磐消防署から約5㎞しか離れていない。積載以外の資機材が必要となった場合などでは速やかな応援が可能という立地のため、内郷は初動に特化すれば良かったのだ。
中型車から小型車へ
ベースとなるシャーシは低床四輪駆動3tシャーシを使用した。従来の中型シャーシから小型シャーシであるCD-I型消防ポンプ自動車と同等サイズとなり、狭隘路を走行しての直近部署が可能となった。また高速道路においては橋梁やトンネルがあるために路肩が狭い箇所が随所にあり、これまでは事故渋滞等で現場到着に時間がかかることもあったが、車両の小型化により現場到着までの時間短縮が期待できる。
消火の主力となるポンプ装備は、一般火災にも十分対応する必要があるため、CD-I型消防ポンプ自動車のスペックを維持できるようA-2級のポンプ性能を求めた。しかし、小型シャーシに通常のポンプ一式と救助資機材などの積載を両立しようとすると、重量やスペースの面でかなり厳しい。そこでポンプはオールアルミ製であるALR-3型2段バランスタービンポンプで軽量化を図り、ポンプ操作部は一般のポンプ車と同様に両側に設けた。大きな収納場所をとる吸管は側方取出式とし、もう片方に資機材の収納スペースを確保している。なお、もう一本は接続吸管として車上ボックス内に積載してある。
内郷消防署では火災出場する場合には水槽付消防ポンプ自動車とのペア出場となる。このため、同車は送水担当としての水利部署が主任務となるので、積載する資機材も水利部署と送水関連の資機材が中心。このため車両右側後部にスタンドパイプや消火栓鍵などの吸水関係、車両後部にホース延長用の加納式ホースカーが積載されている。
右側面
左側面
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