化学消防ポンプ自動車Ⅲ型 金沢市消防局
金沢市消防局 金石消防署[石川県]
写真・文◎橋本政靖
Jレスキュー2017年11月号掲載記事
2つの“日本初”を採用してあらゆる火災に対応!!
「マルチに使える」化学車を目指す
金沢市消防局は石油コンビナート等特別防災区域を有する金沢港地区を管轄しており、石油コンビナート火災対応のため、金石消防署および同出張所には大型化学消防ポンプ自動車1台および化Ⅲ型化学消防ポンプ自動車2台を配置している。この金石消防署に、油脂火災用の機能ばかりではなく、大規模工場、倉庫、密集地における大量放水、水利の不便な地域における消火活動など、様々な機能を有する化Ⅲ型化学消防ポンプ自動車が更新配備されたので紹介しよう。
金石消防署は金沢港地区の石油コンビナート等特別防災地域のほか、市内の海岸線全域、金沢港、石川県庁周辺の新しい開発地域および古くからの木造家屋が密集する金石・大野地区等を管轄している。また、北陸自動車道やしおさいロード等の水利状況の不便な道路も有している。
先代車両は水槽容量1300リットル、薬液槽容量1500リットルと、車両サイズに対して水槽容量が若干少ないため、主に危険物火災にしか用いてこなかった。また混合方式が圧送自動混合比例方式で、少量でも泡放射を行うと泡原液を大量に消費し、かつ使用後の洗浄作業に時間がかかっていた。
そのため本車両の仕様検討に際しては、通常の危険物火災に対応できることはもちろんのこと、石油コンビナート火災などの大規模危険物火災、さらには少量危険物火災等など、様々な災害にマルチに対応できることを主眼とした。また、車両サイズをできるだけ小さくするとともに水槽容量をできるだけ大型化することで、水利の不便な場所における初動対応もできることを目指した。
水槽と薬液槽容量を自在に変更
化学消防ポンプ自動車Ⅲ型の規格として、水槽容量が1300リットル以上、薬液槽容量が1200リットル以上のものを積載していることが定められている。これに対し、本車両は水槽をGFRP(ガラス繊維強化プラスチック)製として軽量化をはかり、大幅に増槽して2500リットル、同じく泡原液槽もGFRP製として増槽し、1500リットルとしている。
従来の化学消防ポンプ自動車Ⅲ型と同等の8t級シャーシを用いて、水槽および泡原液槽を大幅に増槽することは重量的に困難だ。そこで本車両では、長野ポンプ製ALPASシステムを大型車両では初めて採用。アルミフレーム等の軽量材を多用し、約30%の軽量化を実現、大幅な増槽を可能にした。
泡原液槽は750リットルを2槽として、種類や製造年月の異なる泡原液を積載できるようになっている。一方に水槽と連結配管・コックを設けることで水槽と左側泡原液槽を連結し、水槽容量を3250リットルにすることや、逆に水槽を泡原液槽として使用することもできる。これによりすべてを水槽とした場合には、積載水のみの放水で後述するブースター消火装置で15分以上の放水が可能。またすべてを泡原液槽として使用すれば、最大能力である混合比3%、毎分2500リットルで50分以上の連続泡放射が可能となっている。
メインとなる水ポンプはNF75型2段バランスタービンポンプを搭載している。放水口は片側4口あり、うち水専用1口、水・泡兼用2口、少量泡混合装置専用1口となっている。吸口は90mmで90mm吸管が常時接続されている。中継口は片側1口で口径90mmを媒介で65mm町野雌としており、水利の状況によってはこの中継口にも90mm吸管を接続することもでき、車両片側からのみ2本の吸管を使用しての大量吸水も可能となっている。
アルミフレーム採用による利点はそれだけではない。軽量でかつシャッターの開口部を広くとることができるようになったために、一般的な化学車よりも多くの資機材をシャッター内に収納することができた。化学車は活動中は泡によって非常に滑りやすくなっているため、ルーフ上ではなくシャッター内に収納することは隊員の安全にも繋がる。
また車上には、マスターストリームノズルを取りつけた2000リットル型ギアー型放水銃を装備し、毎分1200から4800リットルまでの大量放水に対応している。このほかマスターストリームノズル付の可搬型クロスファイアー放水銃も搭載しており、車両から離れた場所からも大量放水が可能だ。
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化学車として車載型のファイアードスを初採用