小型タンク車(ST)大阪市消防局

日本の消防車両

小型タンク車(ST)大阪市消防局

大阪市消防局[大阪府]

写真◎中井俊治
「日本の消防車2018」掲載記事

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超小型ポンプ車の元祖「大阪ST車」 ハイルーフになってもコンパクトさ健在

今年3月末、同時に9台がハイルーフに更新された大阪市消防局の小型タンク車(通称ST車)。手前の車両が三連はしご積載仕様で奥の車両がチタン製折りたたみはしご積載仕様。いずれも全長5.24m、全幅1.7mのコンパクト車。
車幅1.7mへの執着

大阪市は昔から木造住宅の密集する地域が多く、昭和の時代から、ひとたび火災が発生すれば延焼につながりやすいという課題と対峙してきた。木造密集地域に対応した消火戦術を検討していた大阪市消防局は、「延焼を阻止するには初期段階の即消しかない」と、消火隊が1秒でも早く現着し、消火活動が開始できるST車(Small Tank)の開発を始めるようになった。

初代ST車が誕生したのは昭和57年度。当時はシングルキャブの3人乗車で、B-1級ポンプに900リットルの水タンクの規格だったが、車幅はすでに1680mmに抑えていた。昭和60年度配備の車両からはダブルキャブとなり、A-2級ポンプに900リットルの水槽を搭載する現在の車両の原型が誕生した。一般的に前輪の1.7m幅は珍しくないが、後輪の車軸幅は前輪より広がっている。ST車ではこの後輪の車軸を切り詰めて1.7mにしているのだ。このサイズで必要な装備を積載するため、ポンプ操作盤のレイアウト、はしごや消火用資機材の積載場所はミリ単位で細かく設定されている。

現在のST車は800リットル水槽にホースカー、チタン製折りたたみはしごを積載したタイプを基本仕様とし、管内の特性に応じて、泡混合装置も搭載したポンプロ仕様(泡編成隊が運用)と、 三連はしごを追加積載した仕様がある。三連はしご積載タイプは、建物事故多発地域で早期の人命救助活動を行うためである。そして、平成28年度に登場したのがハイルーフキャブタイプのST車だ。

緻密に計算されたハイルーフキャブ

大阪市消防局では、火点に対し東西南北の各方面に消火隊1隊を部署させる「方面原則」を基本消火戦術とし、これに「直近中継相掛り体制」というST車2台でペア運用する戦術を加え、より早く消火活動を実施している。これらで主力となっているのがST車で、大阪市消防局の消火隊車両全114台のうち106台を占める主力車両なのである。シャーシは日野「デュトロ」を使用しており、1隊4名で運用。これまでのST車のキャブ内部はとりわけ窮屈で、防火衣や空気呼吸器を着装した隊員の動きに制限がかかっていた。ハイルーフ部分はFRPの一体成形になるが、三連はしご積載タイプの製作は容易ではなかった。車体全長約5.0mに三連はしごを積載すると、どうしてもキャブ上部にまではしごの先端がかかってしまう。しかも転倒傾斜角度の基準をクリアするためには全高も抑えなければならない。その上で、ハイルーフキャブによって生まれる車内空間をなるべく潰さないようにという大阪市消防局のリクエストに応じて、艤装メーカーとルーフメーカーが緻密に計算し、三連はしご積載部分(車体右側)のみをはしごの形に合わせて掘り込んだルーフと、掘り込みのないルーフの2タイプが作成された。また車高は赤色警光灯のハイルーフ一体成型により標準ルーフと同じ高さに抑えている。

平成28年度の更新ではまず局内の9台がハイルーフキャブになったが、今年度以降も更新車両はハイルーフキャブ仕様に置き換わり、将来はすべてのST車がハイルーフキャブになる予定だ。

ST専用ハイルーフ
ハイルーフ
ハイルーフ化の最大の課題が、三連はしごがかかる部分の形状。せっかく広がった車内空間を最大限に生かせるよう、はしごの形状に合わせて計算されたルーフを作成。ルーフはベルリング製。チタン製折りたたみ式はしごは全長4.6mで、三連はしごは8.7m。
車内のイメージ
車内のイメージ。圧迫感がなくなり、緊急消防援助隊での長距離移動の際の疲労度軽減にもつながりそうだ。
運転席
運転席。シャーシはオートマチックトランスミッション。
従来の通常キャブ(手前)と比較
従来の通常キャブ(手前)と比較すると、乗車隊員の窮屈さが異なるのがわかる。
ハイルーフの乗車イメー
ハイルーフの乗車イメージ。側面から見ると、隊員の頭上に余裕があることがわかる。
通常キャブ
通常キャブにフル装備で乗車すると、窮屈そうだ。

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