
支援車Ⅳ型 渋川広域消防本部
渋川広域消防本部 渋川広域消防署[群馬県]
日本の消防車2019掲載記事
ドローンやインターネットで武装し
スマート化を図った渋消初の本格指揮車
緊急消防援助隊への登録車両
平成17年の総務省消防庁告知により、消防力の整備方針において、指揮隊の設置が条文化されたことを受け、渋川広域消防本部(以下、渋消)では平成21年10月、初めての指揮隊を組織した。この指揮隊は当面、仮運用であったが、平成22年4月には本格的な運用が開始された。
渋消ではこれまで専用の指揮車を持つことなく、連絡用の車両を指揮車として活用してきた。そのため、指揮隊としての資機材はもちろん、資機材等を積載する車内レイアウトなども、既存の車両を工夫するなどして、渋消式の戦術に合わせるかたちで運用せざるを得なかった。
それらの経験を踏まえ、平成30年2月8日に満を持して渋川広域消防署本署に配備されたのが支援車Ⅳ型で、渋消にとって最初の本格的な指揮車となった。この車両は車内設備から積載資機材に至るまで、平成21年の指揮隊発足以来、練りに練ったものが装備され、隊員の現場活動の効率化を極限まで追求したものになっている。
なお渋消の指揮隊は平成30年度から、緊急消防援助隊都道府県大隊指揮隊への登録となっており、今後、大規模災害事案等にも出動する。






「指揮車」ではなく「支援車」
渋消の指揮隊には、災害現場で消防隊の指揮をとるのみならず、他隊に先駆けていち早く現場に到着して災害状況を確認し、後続隊に対して、まずどこに筒先を入れさせるか、あるいは何口の放水が必要なのかなど、現着したばかりの後続隊が迷うことなく活動に入れるようコントロールし、最善の結果を出すルートに導く能力が求められる。そのため指揮隊には初動の段階で人員不足が認められれば、すかさず指揮隊員が積極的にホース延長したり、資機材の搬送にも携わる態勢が整っている。
このような災害対応型(初期対応型)の指揮隊であることから、指揮車には他の消防本部の指揮車に比べ、より多くの資機材を常時積載していることが特徴だ。すなわち火災現場でのサイズアップや人命情報を収集するための熱画像直視装置、そしてハリガンツール、バルーン照明器具などの資機材で、これらの常備資機材が初動における渋消式現場活動であるポジティブサポートを可能にしている。渋消が当該車両を、より一般的な呼称である「指揮車」ではなく、「支援車」と称しているのもそのためなのである。
多彩な資機材を常に積載するのは渋消式ポジティブサポートのため


熱画像カメラ搭載のドローン
新たに配備された支援車Ⅳ型のベース車両は、四輪駆動のトヨタ救急車(ハイエース)。艤装は平和機械が担当した。車内レイアウトは現場の意見を聞きながら設計され、実際に使う隊員が使いやすい仕様にこだわっている。
新たに積載された資機材で目を引くのが消防活動用偵察マルチコプター(ドローン)だ。全国の消防本部において、特に大規模災害事案には欠かせない機材になりつつあるドローンだが、ここ渋消でも例外でなく、河川における救助事案、地震災害、土砂災害等において、上空からの要救助者の位置の特定等、さらに通常の火災調査などの際の情報収集手段として活用されることが期待される。実際に渋消では平成30年6月時点で、火災等の実災害において、5回の使用実績が報告されている。
支援車Ⅳ型が積載するドローンには、通常のカメラに加えて熱画像カメラが搭載され、撮影した画像を車内の21インチモニターで映し出すことができる。そのため、ドローンのパイロットだけでなく、より多くの隊員の目で災害状況の確認及び監視が可能となった。またこの車載モニターには変形可動式アームが取り付けられており、上下左右へ自由自在に展開できるので、指揮活動の現場における自由度が増すこととなった。
ドローン

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