横浜市消防局 機動消防艇 「よこはま」大解剖!!

日本の消防車両

横浜市消防局 機動消防艇 「よこはま」大解剖!!

横浜市消防局 鶴見水上消防出張所[神奈川県]

写真◎官野貴(アートファイブ)
Jレスキュー2019年1月号掲載記事

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消防機関が有する消防艇として東京消防庁の「みやこどり」「おおえど」、大阪市消防局の「まいしま」に次ぐ総トン数120tを誇る。
手のひらよりも大きい口径の1万5000L放水砲。
上甲板船首部に有効最大射程120mの1万5000L放水砲2門をはじめ、羅針甲板上に5000L放水砲2門、最大20m伸長する5000L伸縮式放水塔2門を装備。伸縮式放水塔の間に赤外線画像または通常のカメラに切り替え可能なカメラを設置。
船尾部にはヘリポートを設置。マスト部に見えるのは大口径ホース等を積み込むための屈曲式クレーン。
鶴見水上消防出張所には大口径ホースが配備されている。
陸上の消防車両と連携して大量送水を行う際に使用する65mmの放水口8口、特別高度救助部隊配備の海水利用型消防水利システムと連携するための大口径放水口2口を備える。
たくさんの機器が並ぶ操舵室。
赤外線画像やテレビ、ヘリテレ画像などが切り替えられるモニタ、デジタル海図、ソナーモニターと、情報を一括して確認できる船長席。
操舵室中央には舵輪が設置されている。船は波の影響を受けるため、放水中や待機中にも1名が操縦席に座り定点を維持する。
放水砲を操作する機関長。操舵室の窓から目視しながら放水角度を調整する。
消防艇としては最大級の消防ポンプ。
機関室運転中は話声も聞こえないほどの轟音が発生する。写真はMTU/DDC製エンジン。
水難救助事案などで活動隊が待機する作戦室。
長期にわたる活動に備え、船内には壁収納式ベッドが設置されている。
<乗組員の種類>

消防艇の船上では1人が何役も担うため、通常の消防隊に比べて持ち場で1人になる場面が多く、個々人の確固たるスキルが重要になる。

  • 船長…レーダー監視や無線連絡などの船外との連絡や、船内全体の把握を担当する。
  • 航海士…航海に先立って災害現場までの航海計画を練る。
  • 機関長…エンジンの回転数の調整などエンジン系統の管理全般、放水時には6門すべての放水角度の調整などを担当する。
  • 一等機関士(甲板長)、甲板員…主に甲板上での作業を担当する。
横浜市消防局 鶴見水上消防出張所のみなさん。
(後列左から)消防士長 成田篤春、消防司令補 久松良匡、消防士長 伊藤隆、消防士長 堀脇浩一、消防士長 高橋歩
(前列左から)消防士長 辰野弘毅、消防士長 西村信哉、消防司令 小倉宏文所長、消防司令補 大賀匠、消防士長 札川喜隆
横浜市消防局 鶴見水上消防出張所

大黒ふ頭に位置する横浜市消防局鶴見水上消防出張所は、同局唯一の消防艇が配備される署所で、金沢区~鶴見区までのいわゆる京浜港横浜区を管轄する。横浜港は東京港に次ぐ国内第2位のコンテナ取扱個数を誇り、入港船舶総トン数は全国で1位。また東京湾内に入港する船すべてが通過する中ノ瀬航路が管轄付近にあり、水深が浅く交通量も多いため海難事故の発生しやすい海域でもある。

鶴見水上消防出張所には2交代制で31名が所属。所長以外の30名が機動消防艇「よこはま」、消防艇「まもり」、救助艇「ゆめはま」に乗り込み、船舶火災、水難救助、浮流油に対する防除活動といった災害対応のほか、特定事業所所有桟橋や大型客船着岸時における「ファイアーコントロール・プラン」と呼ばれる消防計画等の警防査察、他消防本部や各関係機関と連携しての訓練など、海にフィールドを変えて消防業務を行っている。また時には港湾局より依頼を受けて大型客船入出港時の歓迎放水を行ったりと、消防艇ならではの活動も。港町・横浜に賑わいをもたらしつつ、日々海の安心安全を守っている。

横浜市消防局では、水上消防隊への異動は狭き門。多くの隊員が「何年も希望を出し続けてやっと配備された」という。消防車と消防艇は扱いがまったく異なり、業務に必要となる知識も異なるため、ベテラン隊員であっても鶴見水上消防出張所に配備されたら新人隊員からのスタート。2~3年の乗船経験を積んだ後に海技士の資格を取得し、ようやく一人前の水上消防隊員と認められる。

消防艇「まもり」
日本で初めて1万5000L放水砲を装備した消防艇。河川にかかる橋梁下を通過し上流まで航行できる起倒式マストが特徴。昭和63年度配備と30年もの間第一線で活躍している船で、日々隊員たちが点検を行いつつ大事に使われている。東日本大震災を起因とする市原市LPGタンク火災では緊急消防援助隊として出動し、海上からの放水を実施した。
非常用消防車も1台配備。
救助艇「ゆめはま」
機動力を活かして初期の情報収集や水難救助事案で使用される救助艇。隊員3名で運用される。
【SPECIFICATIONS】

総トン数:120t
全長×全幅:32.2m×7.3m
放水量:50000L(15000L/分×2門、5000L/分×4門)
航行区域:沿海
最大搭載人員:<1.5時間未満>40名 <1.5~24時間未満>30名 <24時間以上>14名
運用開始年:平成14年
製造メーカー:横浜ヨット

横浜市消防局 鶴見水上消防出張所[神奈川県]
写真◎官野貴(アートファイブ) Jレスキュー2019年1月号掲載記事

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