鋭い観察眼で、隊員の得意分野を見極める

佐藤 孝行 Sato Takayuki

Sato Takayuki 大阪市消防局 本部特別高度救助隊 隊長/消防司令

Interview

鋭い観察眼で、隊員の得意分野を見極める

消防活動には隊長のリーダーシップが欠かせない。救助活動の最前線で部隊を率いる大阪市消防局の本部特別高度救助隊の隊長に、指揮者の視点について訊いた。

写真◎有村拓真
Jレスキュー2019年3月号掲載記事

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指揮は人間力でする

 指揮は「人」。この人の指示だったら何でも言うとおりにする。そう思わせる人間力のある人が名指揮者だと、本部特別高度救助隊隊長の佐藤孝行は言い切る。
 救助畑を歩んできた佐藤もまた、現在所属する隊の前身である機動指揮支援隊で指揮活動に携わってきた。入局からわずか1年という異例の速さで救助隊になった佐藤は、全国消防救助技術大会では引揚救助で全国1位の称号を手にし、国際消防救助隊(IRT)では指導員として消防庁が主催する初の全国規模の実践的訓練を企画。阪神・淡路大震災、JR福知山線脱線事故、東日本大震災、熊本地震、広島県豪雨災害(西日本豪雨)と数々の大規模災害にも出動し、その豊富な経験を活かして大部隊を率いてきた。

各小隊長の適性を瞬時に見抜く

 東日本大震災では、緊急消防援助隊 大阪府大隊の指揮支援隊の隊員として、岩手県釜石市・大槌町に出動した。この時の隊長が、大阪市消防局のレジェンドといわれ、あらゆる大規模災害で指揮を執ってきた竹村指揮隊長(当時、現在は退職)。佐藤に「この人のためなら、何でもやる」と思わせる人間力のある人物だ。隊長の右腕だった佐藤は、「ここは俺がやりますわ」と捜索隊の活動調整を買って出た。
 緊急消防援助隊は、大規模災害時に複数の本部で編成される臨時部隊なので、初対面の隊も多く、各隊の技量を推し量るのは容易ではない。広大な活動エリアを捜索するために、部隊を複数のグループに分けてグループリーダーを決めなければならないが、佐藤は全グループにリーダーシップの取れる小隊長をバランスよく配置できるよう部隊を割り振った。リーダーシップが取れるかどうかは、どこで見分けるのか?
「それは、顔を見ていたらわかる。隊長会議で『この現場に行けるか?』と問いかけた時に、『行けます!』と自信もって答える隊長なら問題ないと。自信がない隊長は顔を下に向けている。気をつけなあかんのは、無理をして勢いや気持ちだけで『できます!』と答える隊長や。これも勘で大体わかる」という。
 佐藤の人を見る観察眼は、幼少期から自然と身に付いたものだ。近所の子供たちのなかで一番年上だった佐藤は、グループのリーダー格として年下の子供らの面倒をみて、「たかちゃん、今日どうする?」と慕われてきた。遊びのなかでも、それぞれの得手不得手を考慮して役割分担をしていたという。災害現場での部隊捌きについて、以前はそこまで深く考えずに割り振っていたというが、緊急消防援助隊の出動を重ねるうちに、それぞれの得意分野に考慮することの重要性を感じるようになったという。
「得意不得意を見極めて、それぞれに合った仕事を割り振れることが大変重要なポイント。適材適所の見分けができれば、活動の効率は飛躍的に上がる。そして隊員もそれぞれの能力が活かせるので、自信をもって活動をすることができる。誰にとっても良い、この適材適所。この見極めができるかどうかが、リーダーとして信頼されるかどうかの分かれ目ともなってくる」

隊員の人生を預かっている

 昨年の西日本豪雨では、緊急消防援助隊大阪府大隊の救助部隊を率いた佐藤だが、20代の頃に現場活動で隊長を激怒させたことがある。特別救助隊の機関員として火災現場に出場した佐藤の隊は、燃焼中の建物2階に要救助者がいるという情報に基づいて三連はしごを架梯して進入。はしごを確保していた佐藤は、隊長らが屋内に進入してひとりになったところで、ただ待っていても仕方ないと単身、1階の玄関ドアを破壊して屋内進入し、2階の居室にいた要救助者の目の前で隊長らとドッキング。建物の外で待機しているはずの佐藤が煙の中から現れ、隊長らを驚かせた。その夜、佐藤は単独行動について隊長に説教されるなかで、初めて隊長の想いを知った。隊長というのは、隊員3人の安全だけでなく、その家族の人生をも預かっているのだということを聞き、隊長が負う責任の重さを知った。その後の消防活動への向き合い方を変える転機となった。

迷わない、変えない

 現場で最初に決断するのは指揮者である。佐藤のポリシーは、現場では迷わず、一度決断したことは貫くことだ。火災現場では、「屋内進入するなら今しかない、30秒後に決断しても手遅れ」という瞬間がある。それを経験しているから、時間をかけて考えれば別の方法が浮かんだとしても、迷わずに決断することを優先するのだ。
 途中で決定事項を変更すると部下が迷う。もちろん隊員が怪我をするような重大事故が起これば、活動方針を変えることも考えるが、そうでないならば、完璧な現場活動なんてないのだから、最初に決断したやり方で進めた方がよい。その決断の過程では、最悪の事態を想定しつつも、最終的なゴールをどこに持っていくのかを決め、そこに向けて「できる」イメージを持っておくことが大事だという。
 佐藤が指揮者として心がけているのは、カッコよくあること。部下に信頼される、カッコイイ隊長であるために、佐藤は見えない部分で技術や知識の習得の努力を怠らず、常に自らにプレッシャーをかけ続けている。

Profile

佐藤 孝行

佐藤 孝行Takayuki Sato

昭和63年4月大阪市消防局消防士拝命、住之江消防署救助隊。平成11年10月中央消防署特別救助隊、平成20年4月警防部司令課 機動指揮支援隊(ASR)隊員。平成21年10月 警防部司令課 方面隊本部(救助)、平成29年4月より警防部警防課 本部特別高度救助隊長。平成18年1月国際消防救助隊員(IRT)登録、平成23年7月国際緊急援助隊(JDR)指導員、平成28年4月国際緊急援助隊(JDR)技術検討員。
<災害派遣>
阪神・淡路大震災(LPG漏洩・消火)、JR福知山線脱線事故(救助)、東日本大震災(指揮支援隊)、熊本地震(後方支援隊)、西日本豪雨災害(救助隊)

消防活動には隊長のリーダーシップが欠かせない。救助活動の最前線で部隊を率いる大阪市消防局の本部特別高度救助隊の隊長に、指揮者の視点について訊いた。
写真◎有村拓真 Jレスキュー2019年3月号掲載記事