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【コラム】消防装備のマメ知識
冬の備え「消防ポンプ車でお湯を作る」

消火栓が凍り付いたときや、資機材を洗うときなど、厳寒期の活動ではお湯が欲しい場合がある。そんなときは、車両の冷却装置の水を利用してみよう。これが結構温かくて、寒い中ではありがたい存在なのである。

写真・文◎橋本政靖
(Jレスキュー2010年3月号掲載記事)

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冬の災害現場はかなり寒い。寒さに辟易している消防隊員も多いことだろう。

災害は天気や時間を選ばないために氷点下での活動も多く、消火栓や資機材の解凍、隊員、被服、資機材の洗浄などはそのほとんどを冷たい消火用水で行っているのが現状である。そのため、火災現場などの活動現場でお湯が欲しいと思う場合も多くあるだろう。今回は現場でお湯を得る方法について紹介しよう。

消防ポンプ自動車には特有の装備として「サブラジエター」というものがある。火災現場等で停車した状態で機関を高回転とした場合に機関、ミッション、ポンプグランドなどが過熱するのを防ぐため、ポンプの消火用水を少し流して冷却する装置である。冷却後の水は車両下部に排出される構造である。近年は貴重な消火用水を捨てないためにポンプやタンクに還流する冷却水還流装置が装備されている場合もある。

この、機関などを冷却後に下部に排出される水は結構温かくなっているから、これを利用しない手はない。サブラジエターの排出口に13mm程度のホースを接続すれば、車両周辺でお湯を使う事が可能となるのだ。使いやすいのは車両前部床下にある機関用で、ホースの接続については排出口の形状が車両メーカーごとに異なるのでいろいろと工夫していただければと思う。ポンプ車では水利に接続する必要があるが、タンク車であれば保有水を使用することができる。お湯の温度については機関回転数と冷却水流量である程度は調節可能だ。ただし、使用時には機関油温計を確認して機関が過冷却にならないように注意することが必要である。

大震災時などにはこのお湯と組み立て水槽などを組み合わせることでお風呂を作ることもできる。

ホースかー
放水を受けて凍結したホースカー。氷点下での現場ではあらゆるものが凍結してしまう。そのため、消火活動が終わってからの撤収作業にも時間がかかる。
エンジン
ポンプ車の下部にある機関用サブラジエター。写真右側の排出口から冷却後の冷却水が排出される。この排出口にホースを接続すればお湯を得ることが可能となる。
消火栓が凍り付いたときや、資機材を洗うときなど、厳寒期の活動ではお湯が欲しい場合がある。そんなときは、車両の冷却装置の水を利用してみよう。これが結構温かくて、寒い中ではありがたい存在なのである。
写真・文◎橋本政靖 (Jレスキュー2010年3月号掲載記事)

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