栃木県に高度救命救急センターの設置を!<br>次の栃木を考える会「つぎとち」開催

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栃木県に高度救命救急センターの設置を!
次の栃木を考える会「つぎとち」開催

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次の栃木を考える会
一般公開セミナーには総勢550人以上が参加した。

本セミナーのコメンテーターを務めた栃木県済生会宇都宮病院救命救急センターの小倉崇以(たかゆき)センター長は、栃木県の救命救急医療の現状について訴えた。栃木県民が万が一、重篤な広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒などの特殊疾病におちいった場合、今の県立病院では、対応できないと話し、その理由について次のように述べた。

「栃木県は関東で唯一、高度救命救急センターを設置できていないからである。現に栃木県では、一酸化炭素中毒などの重篤な患者を、高度な設備を持った他都県の病院まで搬送しなければならない事案が複数回にわたって発生している。また、新型コロナウイルスに代表される指定感染症は、感染症予防法を根拠として都道府県が責任を持って対応することになっている。しかし栃木県では、県立病院に感染症病床が存在しておらず、コロナ禍においても、栃木県は自らが感染症診療の責任を果たすことができない状況であった。県庁コロナ本部はコロナを自前で対応することができないため、本部としては、県内で感染者が発生しても、ほぼ他の病院にその診療をお願いすることしかできない状況だった。県庁本部の指揮力など、まったくもって発揮できる状況になかった」

高度救命救急センターとは

  • ICU(救急診療科の集中治療室)やSCU(脳卒中集中治療室)、CCU(心疾患集中治療室)に加え、広範囲熱傷、指肢切断、急性中毒などの特殊疾患患者の治療を担う。
  • 災害時には医療拠点となる基幹災害医療センターとしての役割を果たすことができる。
  • 他の「救命救急センター」と連携することで、最重症患者を効率的に受け入れる体制を構築でき、自県の救命救急医療体制を強化できる。

栃木県に「医療のグランドデザイン」を

栃木県内の県立病院は、栃木県立がんセンター、栃木県立リハビリテーションセンター、栃木県立岡本台病院(精神病センター)の3カ所がある。しかし、これらの病院は救急部門も感染症病棟もない。このような状況が今後も放置されれば、将来に必ずやってくる感染症パンデミックや震災や水害などの緊急事態においても、住民の命を守るという点で不安が残る。

栃木県は、「高度救命救急センター」がないこと以外にも、多くの課題を複数抱えている。宇都宮救急医療圏のICUの設置病床数は全国平均の半分しかなく、栃木県内の公的病院数も13施設と全国最下位である。一般的に“救急医療を担うべき”とされる公的医療機関の数が少ない栃木県の実情とは裏腹に、県内の救急車出勤件数は平成20年から令和4年までの間に1.5倍に増加している。このしわ寄せが、現存する救急医療の現場の負担となってきており、済生会宇都宮病院では全国の救命救急センターの平均救急車受け入れ数の約2倍の救急車を受け入れざるを得ない状況におちいっている。一つの病院にこれだけの負担が強いられる状況は、医師、看護師等の忍耐に限界が迫り来るリスクだけでなく、助かるべき患者が助からなくなるという事態のリスクもはらむ。

このセミナーで小倉救命救急センター長は
「我々にはたたの一秒たりともありません。必要なことは、栃木県の医療のグランドデザイン(医療設計)を思い切って書き換えること」
と強く訴えた。

次の栃木を考える会
小倉救命救急センター長はセミナーの最後に「栃木県に高度救命救急センターを設置すべき!」と強く訴えた。
2024年(令和6年)8月29日、栃木県宇都宮市にあるライトキューブ宇都宮で、「次の栃木を考える会」の一般公開セミナー「奈良県救急医療の変遷:全国最下位からの脱却 ~高度救命救急センター、再考~」が開催された。
写真◎編集部

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