ココまで活用できる!消防ドローンのポテンシャル<br>Case04:ドローンメーカーの視点

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ココまで活用できる!消防ドローンのポテンシャル
Case04:ドローンメーカーの視点

これまでに二つの消防本部のドローン活用法と今後の展望を紹介してきた本連載(詳細はこちら)。今回は国産ドローンメーカーのVFR社が考える消防ドローンの現在地と今後について、代表取締役社長の蓬田和平氏に寄稿いただいた。同社の今後の事業展開と併せて紹介しよう。

文◎蓬田和平(VFR株式会社 代表取締役社長)
Jレスキュー2024年9月号掲載記事

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case04 ドローンメーカーの視点

連載を通じて感じた「消防のドローン」

今年から当社では全国消防向けの活動を本格化しており、その中で縁あって、代表である私、蓬田が当誌の連載に関わらせていただいております。これまでに掲載してきた合計3回の「『消防』ドローンのポテンシャル」では、取材という形で消防本部にお伺いし、意見交換と質疑応答をさせていただいた内容を編集部でまとめていただきました。

4回目となる今回は、まず私自身と当社メンバーが全国の消防本部にお伺いして感じた所感、次にドローンの可能性と挑戦、私たち民間事業者にできること、最後に当社がやろうとしていること、これらを書かせていただこうと思います。

消防組織がドローンを活用する場合、民間企業の利活用とは違って組織の規模が同じくらいだとしても、地形や地域の特性によって運用方法が異なる。
消防組織がドローンを活用する場合、民間企業の利活用とは違って組織の規模が同じくらいだとしても、地形や地域の特性によって運用方法が異なる。(写真/幡原裕治)

地域特性で変わる運用法
行政規模で違う予算感

私自身は当誌の取材に同行し、木更津市消防本部と佐野市消防本部にお伺いしました。同じ関東圏、人口で比較すると木更津市が約13万人、佐野市が約11万人と規模が似ている消防本部で、共通点としては両本部ともにドローンの導入にあたって、それぞれ入念な準備を行っていたこと、地域特性に合わせた運用方法の検討と、それに合わせて規定・マニュアルの整備を行っていたことでした。他組織との連携という点では、木更津市消防本部では千葉県、そして市内にある陸上自衛隊の駐屯地、航空自衛隊の基地と連携する必要があり、それぞれと連絡手段を確立されていることが非常に印象的でした。ドローンや次世代エアモビリティが飛び交う時代を見据えて、既存のモビリティとの協調が官民学で議論されている中で、非常に興味深い運用をされており、大変勉強になりました。

佐野市消防本部では、地形の特徴から隣の消防本部との連携に力を入れておられ、例えば一級河川を跨いだ共同訓練の内容にドローンの共同運用も含め、実際の出動時の運用を想定した訓練をされていることが印象的でした。また佐野市役所から操縦訓練者を受け入れるなど、導入すると決めた装備品を使い切るという意気込みを強く感じました。

これまでに当社のメンバーは、全国の消防本部の方々と直接お話しさせていただいております。代表である私から見ていると、ドローンが地域を守るための手段として確立されてきていることを実感でき、メンバーの仕事に対するモチベーションが上がっているよう感じています。アポイントにご対応いただいた各消防本部の方々には、この場を借りて御礼申し上げます。

一方で、当社は地形や地域特性による運用の違い、行政規模による予算感の違いを伺い、一定レベルまでの運用や規定・マニュアルの標準化を進めることは可能ですが、すべてをトップダウンで行うことは難しいと痛感しました。当社が製品としてのドローンを提供することはもちろん、その他に我々ができることはないのかと自問自答しております。

民間領域におけるドローンの活用で実証実験が進んでいる物資の運搬。
消防でも物資の運搬を視野に入れている本部がある。
民間領域におけるドローンの活用で実証実験が進んでいる物資の運搬。消防でもこの分野で活用を視野に入れている本部がある。(写真/VFR提供)

「空飛ぶロボット」として利活用の可能性

当社が各消防本部からお話を伺っている中で、さらなるドローンの可能性に繋がるヒントとなったひと言があります。それは、「火事が起きている中で、ドローンが空を飛んでいるか、気にする人はあまりいないです」という言葉でした。現場にいるすべての方がそうではないと思いますが、飛んでいることが認識されていないほどに災害現場に溶け込んでいる状態なのだと思います。民間領域におけるドローンの活用においては、まだ実証実験レベルのものも多く、良くも悪くもドローンが主役となっているケースがあります。その点において、消防におけるドローンの活用から民間領域が学ぶことは多くあると感じております。

ドローンの活用が溶け込み始めている消防分野だからこそ、これまではカメラを含むセンサーで空から情報収集する手段、空飛ぶセンサーとして利用されることが多かった使用方法から発展して、これからは物資を運んだり、作業したりといった“空飛ぶロボット”として利用されるケースに可能性を感じています。消防士の方や要救助者の方を危険に近づけさせない、遠ざける、そのためにドローンを活用するイメージです。

こういった新しいユースケースを創っていくにあたっては、民間事業者との協調が重要になってくると思います。民間事業者が、先進的な製品を開発・生産することに加え、諸外国の製品やサービスをユースケースとセットで紹介することも非常に重要になると考えます。特に当社は、国内外のドローンを生産・販売していることから、そういった役割を担える存在にならなければと思います。

また、国内の各消防本部同士の情報共有や連携の機会を創出することについても、民間事業者が関与することで取り組みが加速していくと考えています。それはJレスキューにも協力いただき、アクションを起こしていきたいです。

VFRでは消防・警察向けに特化したドローンのカスタマーサポートサービスを開始した。
VFRでは消防・警察向けに特化したドローンのカスタマーサポートサービスを開始した。(写真/VFR提供)

幅広いサポートを開始

最後に、ドローンのさらなる利活用を見据えた当社の新たな取り組みを紹介させてください。前述した当社における自問自答の中で、各消防本部の皆様が入念な準備をして導入されたドローンについて、稼働できない状態を作らないことが当社にできることの一つではないかという考えに至りました。そこで当社では、消防向けのカスタマーサポートサービスを立ち上げます。このJレスキュー2024年9月号が発売されるまでの1カ月間、中部地方の消防本部にトライアルサービスを提供させていただいており、8月19日から正式にサービスの申し込み受付と提供を開始いたします。

サービス内容に関しては、当社の取り扱い製品以外も含めたドローンに関する相談窓口、機体登録や飛行許可などの法務相談、お手持ちのドローンが故障等により利用できない場合の代替機の提供、当社指定の機体を対象とする電子マニュアルからスタートし、操縦トレーニング、定期点検、修理窓口、保険窓口といった総合的なフォローアップサービスも今後提供していきたいと考えております。

VFR社・蓬田社長

蓬田和平

(よもぎた・かずたか)
三井住友銀行、マッキャンエリクソン、リクルートを経て、IoTデバイス開発メーカーにCOOとして参画。その後、2020年にDRONE FUNDに参画し、3号ファンドの新規投資をリード。2023年2月にVFR株式会社代表取締役社長に就任。
これまでに二つの消防本部のドローン活用法と今後の展望を紹介してきた本連載(詳細はこちら)。今回は国産ドローンメーカーのVFR社が考える消防ドローンの現在地と今後について、代表取締役社長の蓬田和平氏に寄稿いただいた。同社の今後の事業展開と併せて紹介しよう。
文◎蓬田和平(VFR株式会社 代表取締役社長) Jレスキュー2024年9月号掲載記事

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