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「三連はしご」と「かぎ付きはしご」で機動力あふれる引揚システムを構築
コンビネーションラダーシステム(連結はしご)のシステム概要。
Jレスキュー2018年11月号掲載記事
写真提供◎福井市消防局
システム単位で移動展開できる
コンビネーションラダーシステム(訓練の再現はこちら)は、セミスタティックロープの展張力を利用して三連はしごとかぎ付きはしごをT字型に固定し、かぎ付きはしごを45度に固定した状態で、ロープで展張し、隊員ひとりでロープを引き、止まった程度のテンションで展張完了となる。ふたつのはしごが接地する連結軸を作ることにより、かぎ付きはしごを稼動させることを可能にし、要救助者の引き込みを安全かつ容易に行える。
また、引揚システムの設定に不可欠な支持点も梯体にて確保することができ、支持物がない状況下での引揚救助に対応できるシステムである。
連結軸がフレキシブルに稼動するため、柵等がある場所でも、かぎ付きはしごを垂直に設定することが可能。また支持物がない状況下で構築するシステムであり、はしご上に全て設定されていることから、システムを解除することなく移動できるのも特徴である。
システム説明
設定方法
本システムのメリットとデメリット
[メリット]
- セミスタティックロープ、スリング、プーリー、ディッセンダーのみで構築できる非常にシンプルな構造であり、はしご同士の連結はロープ1本で展張力を利用して設定している
- 三つ打ちロープを使用しての設定も可能である
- 漁港等でも設定可能で、水難救助現場での重器材の搬入搬出、隊員の進入や脱出の補助、要救助者の救出等にも活用可能
- 連結軸がフレキシブルに稼働するため、傾斜角でも設置可能
- すべてが三連はしご、かぎ付きはしご内で設定されているため、システム設定された状態で移動可能
- はしご同士をロープの展張力のみで結合しているため、かぎ付きはしごを手前側にスライドすることが容易となり、要救助者の安全な引込みが可能
[デメリット]
- 無支点で設定できるシステムのため、三連はしご単体では固定されておらず、荷重のかかり方次第ではシステム自体が不安定になりうる
- 降下時の三連はしごの設定をエッジに合わせて設置しないと、力が崖側に方向転換する
- 崖側に三連はしごがはみ出すと、同様に、はしごが崖に落ちる力が増加する
- 降下時に隊員が壁体を蹴りすぎると崖側へ向かう力が加わるため、蹴らないことが肝要である
- 自己確保の位置を崖に近い箇所に設定しないと、落下した場合に崖側に力がかかる
訓練を重ねることが力学の理解にもつながる訓練隊隊長 加美川淳平
様々な救助システムには必ずメリットとデメリットが存在し、活用するにはデメリットをよく理解することが重要です。このことは、このコンビネーションラダーシステムにおいても同様です。
本システムは、支持点がない場所、柵等の障害物がある場所や傾斜面がある場所であっても設定することが可能です。また、設定されている状態のまま、システムを移動することも可能なので、多種多様な現場環境に対応できる救助システムであります。
しかし、デメリットといえる力学的な部分を理解することなく使用することは、非常に危険なシステムであることも理解していただきたいと思います。
このシステムの訓練を実施する際には、三連はしごが動かないように必ずロープやスリングなどで固定し、バックアップを確保した状態で行ってください。
そういった訓練を重ねていくなかで、力学的な部分、すなわちどういった設定ならば、システムが安定して安全なのか、あるいはどういった荷重がかかると不安定な状態になりえるのかを理解していただけると思います。
現在の救助技術に囚われず、新たな救助技術を提案するのが全国消防救助大会における技術訓練です。訓練隊員はもちろんのこと、訓練をサポートしてくれた同僚、担当である消防総務課、救急救助課、そして今回の企画に快く賛同してくれた防火衣メーカーに感謝を申し上げるとともに、この装備と技術が今後の消防活動の一助になれば幸いです。