PH試験紙は化学剤検知に使えるか?<br>HAZMATとCBRNの流れを踏まえて<br>【前編】

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PH試験紙は化学剤検知に使えるか?
HAZMATとCBRNの流れを踏まえて
【前編】

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和紙の製法を知ってるか?

何日か経過した後、ようやく検知紙の製法が書いてある論文を見つけた。貪るように読んだ。繊維をいったんバラバラにして、そこに赤、黄色、青の染料粒子を分散含侵させ、乾燥させて紙にする。まるで、古来の和紙の製法のようであった。

すぐに試してみた。ドラフトの中で検知紙の上に擬剤を一滴垂らして、目を近づけてじっと観察した。確かに、検知紙の表面には微細な赤の粒が見て取れた。それが、溶けていってみるみる赤色が広がっていく。そういうことだったのかと納得した。同時に、化学反応と思い込んでいた自分が情けなかった。

その後、国産の検知紙を製造してくれる企業があるのかと考えてみたが何の伝手もなかった。そんなときに、防護服の関係で時々見かける、とある繊維関連企業の方に相談してみた。すると嘘のように簡単に話が進んでいった。これをきっかけに、今では消防でも広く使われている国産検知紙の誕生につながったのである。

もちろん、そこに至るまでには紆余曲折もあった。それでも、発がん性等の問題がない国産検知紙の研究開発を日本の企業とともに実施できたことは、陸自のみならず日本のCBRN防護全体にとっても大きかったと思う。

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Jレスキュー本誌の連載「世界のCBRNe 最新トピックス」の著者の浜田昌彦氏の記事をJレスキューWebでも掲載。今回のテーマは「PH試験紙は化学剤検知に使えるか?」。著者の経験と近年の事例を交えて前後編で掲載します。
文◎浜田昌彦

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