Special
救急隊だけでも負担が少ない階段搬送
エアーストレッチャー等を活用した救出方法
入間東部地区消防組合西消防署
【発案者】川上大輔
(消防本部名は取材当時のもの)
写真・文◎伊藤久巳
Jレスキュー2017年1月号掲載記事
「誰でも」「簡単に」「安全な」救出を実現
自力では動けない傷病者を階段搬送する場合、多くの救急隊はターポリン担架等を使用する。ただ、この担架は隊員の力で持ち上げて運ぶ方式のため、腰痛症等の隊員がいたりすると、救急隊単独で安全に傷病者を搬出することは難しい。その際は支援隊を増隊要請するが、日本の一般住宅の階段は狭く、人数が集まってもそのマンパワーを最大限に活用できないことが多い。
また、地震等の災害ではエレベーターが使用不能になる。支援隊の現場到着が遅延することもある。そんなときに、「救急隊だけで上階からの救出を行うには、どうしたらよいだろうか」をテーマに、最少の資器材で「誰でも」「簡単に」「安全な」救出を行えることを第一に考え、思いついたのが「エアーストレッチャー等を使用した救出方法」である。オープンスリング、カラビナ、ロープ、エアーストレッチャーを活用した隊員3名による簡単かつ安全な救出方法で、エアーストレッチャー上部ハンドベルト2箇所にオープンスリングを通す際、ハンドベルトの負荷軽減のため、流動分散の結着としたのがポイント。
【使用資機材】
エアーストレッチャー
カラビナ
長ロープ
オープンスリング(90cm)
ガムテープ
(必要に応じて)
ブルーシート
【救出準備】
隊員1
隊員1は、エアーストレッチャー上部の安定しているところで、長ロープの腰確保を行う。
隊員2
隊員2は、エアーストレッチャー上部黒ループベルトを保持し、傷病者の状態管理を行う。
隊員3
隊員3は、エアーストレッチャー下部ハンドベルトを進行方向に誘導し、エアーストレッチャーを下降する。
使い方のバリエーション
腰痛症や脊髄損傷が疑われる傷病者が高層階にいる場合、本来ならば救助隊等の資機材を活用し、窓やベランダから救出するべきだが、消防力劣勢かつ狭隘等の理由で屋外に救出できない場合、エアーストレッチャーにバックボードを結着し、安全に救出する方法もある。また、屋外階段で雨天・寒冷時もブルーシートを活用することで、傷病者の保温を継続しながら安静に救出する方法もある。