局地的豪雨災害への備え、待ったなし!<br>川崎市消防局水難救助隊が災害救助訓練を実施

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局地的豪雨災害への備え、待ったなし!
川崎市消防局水難救助隊が災害救助訓練を実施

台風19号の猛威が記憶に新しかった2019年11月7日。
川崎市消防局 高津消防署 水難救助隊が、各種の水災害に対応するための災害救助訓練を実施した。
神奈川県消防学校に付属の災害救助訓練場において、目玉施設である河川・都市型浸水モデル用プールをフル活用し、災害対応能力に磨きをかけた。

写真◎伊藤久巳
Jレスキュー2020年1月号掲載記事

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救助される方の気持ちがわかったのが、最大の収穫だった

胸まで浸かった冠水現場で 手漕ぎボートを使って活動

先の台風19号において、多摩川に接する高津消防署の管内でも複数箇所が冠水、甚大な損害を被った。台風直撃当日は、今回の訓練参加部隊が属する警防第2課は非番であったが、あらかじめ台風の直撃とそれにともなう被害が予想されたことから、当務明けの高津水難救助隊にあってもそのまま署で待機した。これは高津消防署長による、台風接近に備えて水難救助隊を増隊しておくとの方針による措置であった。案の定、夕方から救助要請が入り始め、警防第2課所属の水難救助隊も、上村文人隊長以下5名が水災害対応自動車で出動した。

冠水したのは、高津消防署の管内でも多摩川沿いの地区、計3ヵ所。夕方の時点ですでに水位は腰高に達し、その後も増水が続く。最終的に水位は胸くらいまで達し、また一面が浸水したことにより、遠望しても浸水範囲をつかむことは不可能であった。

そんななか、上村隊長が先頭に立って隊を誘導。隊員は手漕ぎボートを手で引いて、救助要請のあった家はもちろん、地区全体を巡回し、逃げ遅れた要救助者の検索、救助活動を展開。要救助者は車いすのユーザーやご高齢で寝たきりの方、小さなお子さんが3人いらっしゃって避難できなかった方などその属性はさまざま。増水が続くなかでの活動は時間との闘いで、定員6名のボートに、10名の要救助者を乗せざるを得ない切迫したときもあった。

今回の水難救助訓練は、以前より計画されていたものではあったが、図らずも実災害での活動を経験した直後の実施となり、参加各隊員はみな気合十分。自らの災害対応能力を向上せんとするやる気に満ち、実に有意義な一日となった。

訓練参加の警防第2課 水難救助隊
訓練参加の警防第2課 水難救助隊。
最大の収穫は 要救助者の体験

訓練の実施場所となったのは、神奈川県厚木市にある県消防学校。平成30年にオープンしたばかりの災害救助訓練場には「河川・都市型浸水モデル用プール」があり、局地的豪雨などで考えられる、アンダーパスで立ち往生した車両からの救出方法、あるいは地下街や地下鉄施設における浸水での閉じ込め事案における救出方法の手順を検証した。

さらに洪水時に川沿いの民家に取り残された要救助者を、河川から手漕ぎボートでアプローチして救出する訓練のほか、水災害対応自動車に積載した排水ポンプの排水能力の検証も併せて行った。

訓練後、上村隊長は 「この訓練実施場所は初めて使用したが、実にいい施設だった。安全管理を万全に行いつつ、実際に隊員が要救助者役として水没車両に乗って、水中で救助を待つという体験ができたのも初めてだったし、事前のシナリオはあるものの、実際に訓練を進めながら、『あの場合はどうしようか』、『これではうまくいかないから、次はこうしよう』など、試行錯誤しつつ改善を図りながら訓練を進められた。それにしてもおどろいたのが、浸水した地下室からの救助訓練で、水位60㎝も浸水すれば、自力での脱出が困難になるということだ。まして、マンションの1階などで床がフローリングだったら、足元が滑ってしまい、より脱出は難しくなるだろう。そんな風に、救助される方の気持ちがわかったのが、最大の収穫だった」と振り返った。

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図解! アンダーパスでの水没車両からの救助

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