山岳救助での長距離搬送<br>久留米広域消防本部が負担軽減方法を検証

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山岳救助での長距離搬送
久留米広域消防本部が負担軽減方法を検証

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「半引きずり搬送」、「完全引きずり搬送」と比較する
【半引きずり搬送】頭部を3名で搬送し、足部を地面に着けて引きずる

搬送継続時間(15分目標) : 16分00秒 達成

中央隊員の疲労は少ないが、左右隊員の負荷はかかえ搬送と同程度と感じられた。傷病者への振動はかかえ搬送とあまり差はないが、段差通過等には注意が必要。

久留米広域消防本部山岳救助長距離搬送検証
久留米広域消防本部山岳救助長距離搬送検証
下りの搬送でも3名で十分可能だが、4人目の隊員がいれば、より安全にブレーキをかけながら下ることができる。さらには、負荷のかかる左右の隊員と前後の隊員がローテーションをしながら搬送できるというメリットがある。
久留米広域消防本部山岳救助長距離搬送検証
中央の隊員は担架を引っ張り、左右の隊員は担架をかかえる。
久留米広域消防本部山岳救助長距離搬送検証
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中央隊員はオープンスリングをクロスで装着することで、体にかかる負荷を均等に分散する。
【完全引きずり搬送】4名で搬送。

搬送継続時間 : 負担が少なく長時間可能

隊員への負担が最も少なく長距離搬送ができるのがメリットだが、半引きずり搬送以上に振動や段差の衝撃が傷病者に伝わりやすいため、容態管理に十分注意して搬送する必要がある。

久留米広域消防本部山岳救助長距離搬送検証
従来の訓練ではこの方法で長距離搬送を実施してきた。
〈参考〉スケッドストレッチャーを使うとどうなる?

かかえ搬送では?
オープンスリングを使用して15分目標で搬送訓練を実施した結果、15分の継続搬送は達成したものの、歩く振動が担架に伝わり担架がしなるため、歩き難さと肩への負荷は、バスケット担架より大きいと感じた。

半引きずり搬送では?
半引きずり搬送は、担架の構造上不可と判断した。(局所に荷重が集中するような引きずりは、避ける必要があり、また中央隊員のつなぐ位置がなかった)

完全引きずり搬送では?
完全引きずり搬送は、バスケット担架と同様に振動、衝撃に注意が必要であるが、摩擦抵抗が少ないため非常に有効である。

久留米広域消防本部山岳救助長距離搬送検証
久留米広域消防本部山岳救助長距離搬送検証
3つの搬送要領はそれぞれ長所と短所があり、現場では傷病者の容態や山道の状況に応じて搬送要領を選択し、長距離搬送に対応する必要がある。
消防の山岳救助のなかで、隊員にかかる負担が最も大きいのが傷病者の搬送である。管内に最高標高802mの耳納連山を抱える久留米広域消防本部は、ロープレスキューを主とした救出訓練を重ねていたが、実災害での経験を振り返ると、一番の課題は「傷病者の長距離搬送」だった。そこで、久留米広域消防の高度救助隊は、バスケット担架での効率的な長距離搬送法を探ることにした。
写真・文◎久留米広域消防本部 Jレスキュー2017年5月号掲載記事

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