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【令和6年能登半島地震】消防士自宅の隣家が倒壊、閉じ込められた住民の救出ドキュメント
輪島消防署勤務の安達慎太郎係長の住む自宅の隣家が倒壊。閉じ込められた住民をいかにして救出したのか。安達係長と中村主幹にうかがった。
※Jレスキュー2024年5月号(4月10日発売)より抜粋
「まだ中に母と祖母が閉じ込められているんです、助けてください」
輪島消防署に勤務する安達慎太郎は、その日は休日で自宅にいた。自宅は輪島消防署門前分署のすぐ近く。組織規定で地震発生時などは所属勤務場所に参集しなければならないが、不可能な場合は、最寄りの署所に参集することになっている。大きな揺れで慌てて家を飛び出すと、隣の家は倒壊しており家族5名のうち3名は自力で外に出てきていたが、高齢女性と50歳代のその娘さんがまだ家の中に取り残されていると聞かされる。
自分一人では救出できない、応援が必要と判断した安達は、「すぐに戻ってくる」と家族に伝え、車に乗り込もうとしたが、家の敷地が隆起し車が出せなかったため、走って門前分署に向かった。津波警報のアナウンスが防災無線から流れ、門前分署に向かう途中にすれ違う住民には、「避難指定されている高台の中学校へ避難してください」と呼びかけながら分署に駆け込んだ。分署に配置されているのは、ポンプ車1台、救急車1台、指令車1台の3台のみ。
門前分署には、他にも駆け込みの救助要請があり、ポンプ車と救急車それぞれに3人ずつ乗り込み、二手に分われて救助対応へ向かった。隣家は分署職員が知り得る最初の覚知事案であったため、安達は救急隊隊長として隣家に向かった。
一方、輪島消防署勤務の中村隆広主幹も、最寄りが門前分署であったため、車で門前分署に向かっていた。
「私の場合、分署から少し離れていたので参集にもともと時間がかかるのだが、さらに途中の道路が壊れていたり、途上で求められた助けに応じて、救出活動を行いながら向かっていたので、分署に到着する頃には夕方になっていた。非常参集した職員の多くが、同じような状況であったと思う」(中村)
お話をうかがった方
Profile
安達慎太郎
奥能登広域圏事務組合消防本部 輪島消防署 指導広報係長 消防司令補。昭和58年5月14日生まれ。石川県輪島市門前町出身。平成14年4月奥能登広域圏事務組合消防本部消防士拝命。令和5年4月より現職。
Profile
中村隆広
奥能登広域圏事務組合消防本部 輪島消防署 主幹 兼 予防係長 消防司令補。昭和57年1月16日年生まれ。石川県輪島市門前町出身。平成12年4月奥能登広域圏事務組合消防本部消防士拝命。令和5年4月より現職。