土砂・風水害への対応待ったなしー岡山市消防局ー

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土砂・風水害への対応待ったなしー岡山市消防局ー

2019年10月の東日本台風(台風19号)は東日本を中心に猛威をふるい、
広い範囲で河川氾濫や浸水被害、土砂災害を発生させるなど、
ライフラインや交通網に大きな影響を及ぼした。
このような大規模自然災害が毎年発生することが確実視されている昨今、
消防はどのように備えればよいのだろうか。
岡山市消防局では、消防庁から重機(平成25年)及び水陸両用バギー(平成26年)が配備されたことを受け、大規模自然災害への対応能力強化を目的とした大規模災害対応複合訓練施設の整備を職員自ら行ってきた。
同局は過去の緊急消防援助隊派遣における活動実績を分析した上で、
消防教育訓練センターの用地埋め立て整備から始まり、震災救助(USAR)訓練施設、津波・浸水域訓練施設、重機運用訓練施設、土砂災害対応訓練施設の整備を進めた。
これらの取組が実を結び、昨年度2月には消防庁主催のもと、この訓練施設を活用し、「土砂・風水害機動支援部隊特殊車両習熟訓練」を開催。
全国から159名もの緊急消防援助隊員が参加した。
そして、この度令和2年6月、大規模災害対応複合訓練施設の完成を迎えた。
このように土砂・風水害への対応で全国のトップを走る岡山市消防局。
今号では同局の、水陸両用バギーと重機における取り組みを紹介する。

写真◎岡山市消防局
Jレスキュー2020年7月号掲載記事

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岡山市消防局

AMPHIBIOUS BUGGY-水陸両用バギー-

悪路と水上を制す! 二刀流を乗りこなせ!

岡山市消防局が整備した津波・浸水域訓練施設では、進む・止まる・曲がるの基本的な操作が訓練できるコースのなかに、障害物の乗り越え(超堤)、超濠、スラローム、急旋回、傾斜登坂など特殊な路面を再現したセクションを設け、災害現場における多様な路面状況に対応した最適な走破法を身につける訓練を実施している。

水陸両用バギー。
悪路の走破と水上の航行が
可能な水陸両用バギー。
操作技術向上のために日頃から走破訓練を実施

操作技術向上のために日頃から走破訓練を実施

岡山市消防局 南消防署 特別救助隊 隊長 消防司令補
髙月 勇

岡山市消防局では平成26年に総務省消防庁の無償使用により「津波・大規模風水害対策車」が配備され、水陸両用バギーを災害現場で複数回使用した経験から、大規模災害時の初動における情報収集活動において高い有用性を感じています。しかし、様々な障害のある悪路を走破できる水陸両用バギーもその路面状態によって運行方法は異なり、操作する者の技量によっては危険を及ぼす可能性もあることから操作技術の向上が必須であると考えました。

そこで、当局の消防教育訓練センター内に陸上走行、水上走行の双方が可能な津波・浸水域訓練施設を整備しました。この津波・浸水域訓練施設の整備にあたっては消防研究センター特殊災害研究室 久保田室長の監修により、災害での経験に基づいて様々な状況を再現しています。

日頃からこの訓練施設を活用し走破訓練を実施することで体感的に水陸両用バギーの操作技術を向上させ、近年増加傾向にある土砂、風水害などの大規模自然災害に備えています。

津波浸水域訓練施設
岡山市消防局が訓練の一環として自ら整備した津波浸水域訓練施設。
始動前点検の様子
始動前点検の様子。エンジン、燃料、各種灯火類の点検に加えてタイヤの空気圧点検を実施。釘の踏み抜き等によるパンクなども確認する(ウレタン発泡体入りノーパンクタイヤも開発されている)。災害発生時に迅速に運用出来るように平素から点検整備に努めている。バッテリートラブルに備えて予備バッテリーを用意しておくことも重要。
道路が寸断された状況を再現
障害物走行では電柱倒壊により道路が寸断された状況を再現。30cmの段差を乗り越えて走行できる。
傾斜地走行の様子
傾斜地走行の様子(横方向の転角は静止時で44度)。
超濠走行の様子
超濠走行の様子。80cmまでの幅の溝等を走破できる。
泥濘地走行
泥濘地走行。水域付近や集中豪雨、河川用水の氾濫などによって泥濘化した区域または積雪した路面上においても水陸両用バギーは走行できる。泥濘地では操作感覚が乾燥路面と異なるため、様々な路面状況での走行訓練を行い、総合的なスキルアップに繋げている。
水上走行
水上走行では陸上走行と違い、バランスを取りながら車体を安定させて航行する必要がある。運転員のハンドル操作の感覚や、同乗隊員の体重移動による方向変換など、息が合わなければ思うように進めない。乗車隊員間の連携がポイントになる。

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水陸両用バギー 操作技術向上のポイント!

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