緊急消防援助隊【大阪方式】<br>団結力と現場対応力(1)

Special

緊急消防援助隊【大阪方式】
団結力と現場対応力(1)

Twitter Facebook LINE

Close-Up! 【指揮支援活動】

大阪方式(4) 指揮命令系統のピラミッドづくり

部隊の規模が大きくなればなるほど、指揮命令系統を明確にし、トップダウンで動ける部隊のピラミッドづくりが重要である。大隊をどれだけまとめられるかは、指揮隊長の技量が試される部分である。しかし出動時は一刻を争っているので、うっかりしていると配下の各小隊長と意思疎通を図る時間がとれないまま現地入りしてしまいかねない。
そのことを懸念していた指揮支援隊長の中田富博消防司令長(大阪市消防局)は、移動中に各小隊長に「パーキングに寄った時に一度集まってくれ」と携帯メールで招集をかけ、進出途上で意思の統一を図った。

進出途上のサービスエリアで集結し、今後の予定を伝えるだけでなく、大隊としての方向性、身なりを正すなどの統制を図った。写真は7月7日のSAでの様子。
大阪方式(5) 移動時間を活用し、チームの心を一つに

消防本部間の横の繋がりを作るために、指揮支援隊長はあれこれと作戦を練る。第二陣として出動した中田指揮支援隊長は、移動のバスの中で一人ずつ自己紹介をしてもらうことにした。

すると、隊員一人ひとりが所属本部と名前だけでなく、「ぼくは一人でも多くの人を助けたいと思っています」などと決意表明をしていき、各隊員の士気の高さを感じると同時に、チームとしての一体感が生まれたという。

大阪方式(6) 「思いをもって活動する」精神

宿営地の利便性、交通事情、活動に必要な車両や資機材が十分でないなど、災害現場では平時と同じ活動環境は求められない。しかし、中田隊長は隊員らに「どんな状況でも自分たちができる最大のパフォーマンスを出そう、出していこう」と思いを伝える。

その背景には、過去の災害で大阪府大隊を取りまとめてきた先輩指揮支援隊長から代々引き継がれている「自分たちは(隊員1人あたり)せいぜい4、5日の部隊。そこだけ頑張ればいい。被災地の消防、住民はずっと大変な状況が続いていくんやから、我々はどんな状況でも受け入れて、思いをもって活動せなあかん!」という教えがある。

7月29日、広島市安芸区小屋浦での活動で、各方面隊員を集め、活動方針を示す中田指揮支援隊長。
大阪方式(7) 救急部隊は現場へ直行せよ

避難所や孤立住宅で避難できずにいる被災者のもとに消防が駆けつければ住民は安心する。だから一刻も早く避難所に行って住民を安心させよう、という考えに基づき、大阪府大隊は熊本地震以降、救急隊だけは指揮本部に立ち寄らず、直接救急ニーズのある現場に入るようにしている。大部隊での移動にかかる時間、現地指揮所で待機するタイムロスをなくし効率化を図っているのだ。

救急隊は捜索救助と併せて被災地の住宅地を巡回し、避難の支援や応急処置に当たった。
現地における活動隊の体調管理も救急隊が担った。
「小隊長を信頼して任せる」

「小隊長を信頼して任せる」

大阪市消防局
警防部 司令課 西方面隊
消防司令長 中田富博
(指揮支援隊長、大隊長として2回出動)

指揮する上でモットーとしていることは、各小隊長の意見を聞いたうえで必ず方向性を示し、一度その方針を告げたら、変更せずに最後まで貫くこと。
今回の大きな目的は「人命救助」一点のみだった。具体的な隊の運用は小隊長に任せ、他機関との調整など必要なところだけ動いたほうが、部隊はうまく回る。

大阪府は大規模部隊だが、所属の異なる隊員で編成する混成隊であっても上手くまとまり、熱い想いと冷静な判断で同じ方向を向き活動することができた。撤収時には、後方支援部隊に「ありがとう」と言い、自分たちが緊援隊として被災地に来ていることをきちんと理解できている集団だったと思う。

「ノウハウは文字で残す」

「ノウハウは文字で残す」

大阪市消防局
警防部 警防課 警防担当
消防司令補 薪先友宏
(大阪府大隊・後方支援本部担当)

大阪府は東日本大震災や熊本地震、広島豪雨に伴う派遣経験の蓄積があるので、緊急消防援助隊の仕組み、各隊の役割を理解している人が増えてきていると感じている。後方支援本部も現地の活動隊のことを考えた後方支援体制が確立されていた。緊援隊担当としては、こうしたノウハウをマニュアル化し、細かく文字にしておくことで経験のない職員でも読めばある程度わかるようになり、後方支援本部がよりレベルアップしていくことができると思っている。

2018年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)において、緊急消防援助隊約400名体制(活動後半は規模縮小)で約1カ月間にわたり捜索活動を続け、みごとなチーム力を発揮した大阪府大隊。 その代表本部となる大阪市消防局に、「大阪方式」ともいわれる緊援隊運用の秘訣を聞く。 (誌面掲載時の記事を3回に分けて掲載します)
Jレスキュー2018年11月号掲載記事 写真◎大阪市消防局提供(顔写真を除く)

Ranking ランキング