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緊急消防援助隊【大阪方式】
団結力と現場対応力(2)
2018年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)において、緊急消防援助隊約400名体制(活動後半は規模縮小)で約1カ月間にわたり捜索活動を続け、みごとなチーム力を発揮した大阪府大隊。
その代表本部となる大阪市消防局に、「大阪方式」ともいわれる緊援隊運用の秘訣を聞く。
(誌面掲載時の記事を3回に分けて掲載します)
Jレスキュー2018年11月号掲載記事
写真◎大阪市消防局提供(顔写真を除く)
Close-Up! 段取り、引継ぎが大事!【後方支援のイロハ】
①宿営地の レイアウト作り
後方支援部隊の役割は、活動隊が管内で活動しているのと同じような活動環境を被災地に作り上げること。現場活動以外のすべて、すなわち食事、風呂・トイレ、休息(睡眠)が行える環境を作ることである。具体的には次のとおり。
(1)クリアゾーンとの境界線設定とデコタミ(デコンタミネーション)の作成
活動期間中の衛生的な環境を維持し、隊員の健康管理にも配慮するため、宿営エリア内に活動ゾーンとクリアゾーンの境界線をラックや土のうで作成し、その境界線に隊員の土まみれの靴を洗浄し、手や消毒、うがいなどを行うデコタミ(デコンタミネーション:除染)施設を設定し、宿営所に帰隊した際は活動隊の除染を支援する後方支援隊員を配置する。
(2)動線を考えたレイアウト作成
隊員が宿営地に戻ってきた時に、除染で手足をきれいにして、そのまま食事を受け取り、食事をとり、ごみを捨てるまでの一連の動作を一方向に行えるよう、調理場→配膳・水→食事エリア→ごみ置き場、と動線を考慮した配置を考える。
先回りしてレイアウトを決める
スムーズな宿営地づくりは、先にレイアウトを決めること。広島県の救助活動は、宿営地の消防学校から現場まで毎日片道2〜3時間(渋滞時には7時間)かかっていたため、活動後半は宿営場所を変更した。その際、大阪府後方支援隊の光山消防司令補は、指揮支援中隊長らと3名で一足先に施設入りし、会場を見た上でレイアウトを決め、物資の置き場所を指示。これが無駄のないスピーディな宿営所づくりだ。
②班分けと24時間体制づくり
後方支援部隊の仕事は多岐にわたるため、大阪府の場合は初動で主たる任務に担当責任者を置き、各任務の実施方法の決定、現状把握、改善点や要望事項の検討を任せた。さらに後方支援部隊は、24時間体制で活動するために約50人の後方支援隊員を3班での交代制とし、それぞれに班長を置いた。
〈責任者配置任務〉
デコン担当/食事担当/ゴミ担当/掃除担当/買い出し担当/ベッド担当/給油担当/記録・事務係
③リーダー会議
各担当の業務がひと段落ついた時など、空き時間があればリーダー会議を行い、「今以上に隊員のために何かやれることはないか?」と各リーダーに投げかける。すると「学校前の一般道が汚れた消防車の出入りで汚れているから,きれいにしておこう」「ゴミは分別してもらったが、間違っていないかもう一度確認しておこう」「隊員にねぎらいの声をかけよう」など次々と意見が挙がり、それらを次々に採用していき、積極的な支援が行えた。
④引き継ぎ事項を詳細に書き残す
後方支援業務の引き継ぎ事項は多い。たとえば買い出しできるお店リスト、「氷」の買い出し時間と場所、飲料水の必要量、備蓄食材や後方支援物資(ウエットティッシュ、ごみ袋、紙皿など)の在庫状況、賞味期限が近いもの(優先的に消費したほうがよいもの)、現地周辺の情報など伝達事項は無数にある。活動隊が現場で活動している時間にこれらの引き継ぎ事項を書類にまとめておき、大阪の後方支援本部に送信する。それによって、交替の隊員は移動のバスの中で読み込んで後方支援業務を引き継ぐことができる。
⑤大阪府の備蓄の有効活用
大阪府では府民用の備蓄食料があるが、定期的に賞味期限が切れるので、府と消防の取り決めで、緊急消防援助隊として出動する際には府が備蓄する食料を活用することにしている。
西日本豪雨のような猛暑下での活動では、飲料水など足りないものも発生するため、それらは消防局が大阪で用意した必要物資を交代要員と共に現地に搬送したり、現地調達で対応することにしている。
⑥「いってらっしゃい」「おかえりなさい」の声かけ
リーダー会議で提案された、活動隊員への声かけアイデアを採用し、現場へ出発する時には「いってらっしゃい」、夕方活動から戻ってきた時には「おかえりなさい」と積極的な声かけを行い、活動隊員が気持ちよく過ごせるよう配慮した。
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