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緊急消防援助隊【大阪方式】
団結力と現場対応力(3)
2018年の西日本豪雨(平成30年7月豪雨)において、緊急消防援助隊約400名体制(活動後半は規模縮小)で約1カ月間にわたり捜索活動を続け、みごとなチーム力を発揮した大阪府大隊。
その代表本部となる大阪市消防局に、「大阪方式」ともいわれる緊援隊運用の秘訣を聞く。
(誌面掲載時の記事を3回に分けて掲載します)
Jレスキュー2018年11月号掲載記事
写真◎大阪市消防局提供(顔写真を除く)
Close-Up!人海戦術が続いた【現場活動】
大阪方式(8) 救助全体を俯瞰するレスキュー隊を置く
大阪府大隊は、大阪市消防局指揮支援隊と堺市消防局指揮支援隊の2隊の指揮隊の下にそれぞれ活動隊を配置し、活動エリアを分担して2系統の指揮下で捜索救助活動を展開した。
大阪市消防局指揮支援隊の下で活動した大阪市消防局本部特別高度救助隊は、あえて救助活動に直接携わらず、3カ所に分かれて捜索救助に従事する消防隊・救助隊の現場を巡回し、救助方法のアドバイス、安全管理に徹し、細かな運用は小隊長に任せた。
こうした運用が行えるのは、普段から府内の救助隊合同の災害対応訓練を行い、互いの技量を把握しているからなのである。
役立ったツール
▼てみ(ちりとり)
▼カッターエッジ チェーンソー
▼根切りチェーンソー
▼救助用支柱(レスキューサポート)
▼水陸両用バギー
「後方支援は 『気持ち』がすべて」
大阪市消防局
警防部 警防課 救助担当
消防司令補 光山将太郎
後方支援隊はその活動がマスコミに報じられることのない、縁の下の力持ち的存在。後方支援隊としてチームを組む隊員は基本的に初対面の人ばかりだが、大阪府大隊はチームワークがよかった。それというのも、「我々は被災者を助けるために来ている」という基本的な考えが後方支援隊にも浸透しているからだと思う。後方支援にとって、宿営地こそが災害現場なのだ。
食事も、菓子パンやレトルトばかりに見えるが、隊員が飽きないように、健康バランスが保たれるようにと、最大限配慮して献立を立て、24時間体制でバックアップしている。我々が頑張れるのは、ただただ『この活動が要救助者の発見につながる』と信じているから。
「気持ちを切らさないこと」
大阪市消防局
本部特別高度救助隊 隊長
消防司令 佐藤孝行
広島での捜索救助は、ひたすら土をかく地道な作業となった。活動時間が長くなってくると、隊員は精神的にしんどくなり、活動が停滞してしまう瞬間がやってくる。ダラダラやっている時が一番怪我をしやすいので、隊長は注意しないといけない。そんな時は、わざと「何やっとるんや」などと隊員をいじって空気を変える。
一歩引いた目で見ている隊長は、気持ちを切り替える糸口を作って、危険を回避することが大事。それは熱中症予防でも同じ。熱中症になりそうな隊員に「大丈夫か?」と聞いても、必ず「大丈夫です!」と力強く返し、まだ頑張ろうとする。だからこそ隊長は、隊員の動きや様子の変化を見逃さず「よっしゃ、一回休め!」と隊長命令として休ませる。これが事故を防止する秘訣だ。