【ロープレスキュー先駆者インタビュー】<br>ロープレスキューを極めた先、次の使命へ。

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【ロープレスキュー先駆者インタビュー】
ロープレスキューを極めた先、次の使命へ。

いわゆる「都市型ロープレスキュー」が日本の消防救助の現場に導入されてから約20年が経過した。本稿ではロープレスキュー分野において、その黎明期から活躍し、国際大会等でも輝かしい実績をもつ3名の先駆者達に、ロープレスキューの現状と未来、消防におけるチームビルディングに関する考えなどを座談会形式でうかがった。

取材◎編集部
文◎榎本洋
写真◎森位敦樹
Jレスキュー2024年3月号より抜粋

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先駆者達が見てきた世界

――長年、ロープレスキューに関わってきた皆さんに、まず最近のロープレスキューについての印象をお聞かせください。

松本:まず、ロープレスキューに関心を持つ人たちや実際にやってみようと考える若い人たちが確実に増えているという印象はありますね。肌感覚としては、ここ数年でしょうか、私たちが海外競技大会などにチャレンジしだした頃から増えてきていると思います。以前は複雑でテクニカルな分野という印象があったのですが、そのイメージは払拭された感があります。シンプルで現場でも使えるという認識に徐々に変わり、それは確かに進歩だと考えています。もちろん、現在でも俯瞰してみればテクニカルな分野かもしれないですけど(笑)。

林田:同感ですね。実際、ロープアクセスの技術が入って、資機材も進化して、システムの組み方自体もシンプルな形に進化していますしね。ただ、これはきわめて個人的印象ですが、最近は少し重装備というかオーバースペック的な傾向も感じています。これは、なにか“回帰現象”だなとも思えて。ずっとロープレスキューに関わってきて、たしかに以前もロープレスキューはたくさんのギアがごちゃごちゃしていてわかりにくいというイメージを持つような雰囲気の時代もありました。誰もが現場で使えるためには、シンプルでわかりやすいロープレスキューを目指すことが常に必要であると思っています。

山上:私は、伸び率が低いロープを使うことによる変化として、事故が減っているのではないかと思います。私自身も何回も資機材に助けられた経験があります。ロープレスキューという枠組みのなかでも、やはり資機材の進歩はすごい。ロープレスキューを変えた一つの要因は、資機材の進化が関係しているのかもしれません。自分の今までの経験を振り返って言えば、資機材が変わっていって、もうシステムが激変したというか。特に「アサップロック」が出てきたあたりとか、そういう印象が強いですね。あれで安全性が格段に高くなったよね。プーリーも、始めた当初よりベアリングが良くなって効率が良くなってますよね。フルボディハーネスの使い方も変わりました。昔は極論すれば「吊り下がっているだけ」という感じもしましたが、今はロープアクセスの影響もあって、フルボディハーネスを使いこなす人が増えてきていますね。

ロープレスキューの黎明期時代

――話は遡りますが、皆さんのロープレスキューとの出会いは、民間の講習会を受講してということになるのでしょうか。

松本:私は2004年(平成16年)頃に職場内でロープレスキューを導入しようといった動きがあり、私もその考えに共感したため、先輩と一緒に民間講習を受講しました。感銘を受けたのを今でも覚えています。

山上:私は仲間に誘われた2007年(平成19年)に受講ですね。その時、直感的に「これは、三つ打ちロープより良い」と思えて。いきなり、核心的なところに触れてしまったという感じです。その理由としてはいろいろありますが、一番は「高確率で止まる」ところに魅かれました。これまで身体確保で止まるかのテストを160回以上行ってきたのですが、止められない場合が多く、身体確保に不信感がありました。そこから、自分の感覚が果たして正しいのかを確かめたくて、確保システムをいろいろと検証しはじめました。当時からともかく検証することが大好きでして…。

林田:大体、ここにいる三人のキッカケは似てますよね。自分は専門誌で新しいロープレスキュー技術の記事を読んだことがキッカケで、2004年に受講しました。同じ年、福岡市消防局が救助シンポジウムで、日本ではじめて都市型レスキューを提唱しました。ここが、やはり日本の新しいロープレスキューのスタート地点ですよね。ここにいる三人は、数年の誤差はあっても、大体その辺からこの道に入っているというか(笑)。

――皆さん、住まいは離れていますが、元々知り合いだったのですか?

林田:私と松本さんは元々震災救助などの勉強会で顔見知りだったんですが、ロープレスキューでの繋がりは、2014年に日本国内で開催されていたロープレスキューの競技大会です。四国で行われたその大会に自分は出場し、それを松本さんが見学にきていて。

山上:私は2009年ごろから県外の競技会に参加していましたね。そうした国内の競技会を通じてお互いに知り合いました。

林田:それまで各々が個別にロープレスキューに取り組んでいたのが、大会を通じて全国的な情報交換が行われ、そこで次のステージに入ったと感じています。

松本孝志

松本孝志Takashi Matsumoto

昭和54年生。平成11年拝命。
消防救助技術大会に10年間取り組み、2004年、05年に全国大会出場。高度救助隊副隊長、警防救助係長を経て、現在は出向中。NR JAPANチームのリーダー、コントローラーとして国内大会はSR4で2回優勝(2017年、2018年)、GRIMP JAPAN 2020年優勝、台湾「橋」は2018年7位、2019年準優勝。現在は火災及びロープレスキューの分野においてグローバルスタンダードを学びつつ、国内で普及活動を実施。ロープレスキューでは、GRIMP JAPANの一員として全国各地でその普及と技術向上に努める。

林田章宏

林田章宏Akihiro Hayashida

昭和51年生。平成11年拝命。
消防救助技術大会に10年間取り組み、2007年に全国大会出場。救助隊、航空隊を経て、現在は消防本部警防課勤務。2016年から海外のロープレスキュー大会に挑戦を続け、JAPAN WEST 9PMのリーダーとして2019年「橋」優勝(日本初)、2022 年「GRIMPDAY」優勝(日本初)、他に多数の国際大会を経験。国内においては、日本で初となるロープレスキュー国際大会「GRIMP JAPAN」を主催し、その後もGRIMP JAPANで様々な取り組みを展開。現在も全国各地でその普及と技術向上に努める。

山上真一

山上真一Shinichi Yamagami

昭和49年生。平成8年拝命。
消防救助技術大会に9年間取り組む。浪岡消防署、東消防署救助係長を経て、現在中央消防署油川分署隊長。ARAチームのリーダー、コントローラーとしては、2018年台湾「橋」2位、2019年中国「LifeLine」優勝(日本初)、台湾「橋」3位、2023年中国「LifeLine」5位。ARAでは、春は青森県内で流水救助セミナー、夏は国内でロープセミナー、雪が積もると国内で消火活動セミナーを行っている。また2019年、2023年は中国でもロープセミナーを開催。

海外競技会への参加で受けた衝撃、チームビルディングの要、ロープレスキューの未来と今後の課題……など盛りだくさんのインタビューの続きは、Jレスキュー2024年3月号(2月9日発売)に掲載!

いわゆる「都市型ロープレスキュー」が日本の消防救助の現場に導入されてから約20年が経過した。本稿ではロープレスキュー分野において、その黎明期から活躍し、国際大会等でも輝かしい実績をもつ3名の先駆者達に、ロープレスキューの現状と未来、消防におけるチームビルディングに関する考えなどを座談会形式でうかがった。
取材◎編集部 文◎榎本洋 写真◎森位敦樹 Jレスキュー2024年3月号より抜粋

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