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笹子トンネル 天井板落下事故
【災害事例ドキュメント】
数を揃えておきたい必須ツール
トンネルという閉鎖された特殊な空間で長時間活動する場合に共通する問題が、大量に必要とされる空気ボンベをどう確保するか。特に空気充填装置を本部で保有していない場合は、活動開始と同時に対策を考えておかなければならない。
2012年5月に新潟で発生したトンネル爆発事故でも同様の問題を抱えていたが、今回の事故でも、トンネル内の状況把握に時間がかかり、空気ボンベの数が足りなくなることが危惧された。大月市消防本部が保有する空気ボンベは150L×32本、300L×12本。これを全て現場に持って行ったが、すぐに足りなくなり、充填する装備も消防本部では保有していなかったため、隣接する都留市消防本部に充填させてもらったという。予算の問題もあるが、ある程度の時間は充填しなくても活動できるだけのボンベ数は揃えておきたいところだ。
見落とされていた通信の盲点
2つの消防本部の管轄地域をまたがるトンネル内では、救急搬送時など日常的な無線交信を両本部で行えるようにアンテナが整備されている。このため、消防本部間の交信も周波数を合わせれば問題なく行え、トンネルと各本部の通信指令センター間の交信も行えるようになっていた。今回の事故対応では、事故現場の東山梨消防と大月消防が事故現場の西側と東側に分担して活動したり、合同で救助活動を行う場面があったが、隊員間のコミュニケーションはストレスなく行えていた。
ところが、このトンネルにおける無線の整備に関しても盲点があった。全体の活動を指揮する統合指揮本部はトンネルの外に設営され、トンネルの内外で指揮隊と活動隊が交信しなければならないが、トンネル外の指揮本部とトンネル内部間の無線が通じなかったのだ。
トンネル内で事故や災害が発生して、指揮本部を設置する場合はたいていの場合、トンネルの出入り口付近に指揮本部を設置することになることを考えると、今後の備えとして無線が通じる場所の確認、アンテナの整備を進めておきたい。
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あらゆるツールを駆使してコンクリートを斫る!