Special
三連はしご+かぎ付きはしごの
『コンビネーションラダーシステム』
第47回 全国消防救助技術大会 技術訓練(陸上の部)福井市消防局
台風襲来のために断腸の思いで中止の決定が下された2018年の第47回全国消防救助技術大会。
技術訓練を披露する予定で準備を万端整えてきた福井市消防局の出場隊員が、考案した訓練内容が全国の消防職員の役に立てればという思いから、誌上で技術訓練を再現する。
Jレスキュー2018年11月号掲載記事
写真提供◎福井市消防局
コンビネーションラダーシステムの訓練を再現!
【訓練想定】
- 大規模地震の発生により、1階フロアは一部崩落、地階の倉庫内では火災が発生し、倉庫内で作業中だった男性1名が取り残された。
- 1階フロアから地階フロアに通ずる階段等が崩落により使用不可、地階フロアへの進入は1階フロアの崩落箇所に限定。
- 訓練塔上を1階フロア、訓練塔地上を地階フロア、塔下煙道を火災室(倉庫)と想定。
- 訓練塔上の支点となる箇所についてはすべて使用不可。
【救助方法(活動内容)】
①隊員2名が降下、検索活動を実施
②火災室内で要救助者発見、身体縛着後に救出
③連結はしごを設定し、引揚救助を実施
④再検索を実施中に余震が発生、隊員1名が負傷
⑤負傷隊員の引揚救助を実施
⑥隊員脱出
ただいまから技術訓練を開始します。 テーマは「状況変化に応じた救助活動」です!!
〈ナレーション〉
ただいまから、福井市消防局が行う技術訓練の説明を行います。今回の技術訓練のテーマは、「状況変化に対応した救助活動」です。
訓練で着装する防火衣については、福井市消防局が防火衣メーカーの協力を得て検証を重ねている「フルボディハーネス対応型防火衣」を使用しております。火災現場等における隊員の安全性の向上はもちろんのこと、ロープを使用しての立体的な救助活動に迅速に対応することが可能となりました。
また、強固な固定物がない災害現場での対応策として、「連結はしご」を活用しています。現在、検証段階ではありますが、三連はしごとかぎ付きはしごを組み合わせ、ロープの展張力を利用した救助システムです。
訓練想定は、「大規模な地震が発生し、地上1階、地下1階構造の倉庫において1階フロアが一部崩落し、地階では火災が発生し、関係者1名が取り残されている状況」とします。
状況変化として、救助活動を実施中に余震が発生し、隊員1名が負傷して自力歩行が困難な状況になります。
訓練条件は、
◎地階への進入は1階フロアの崩落箇所に限定すること
◎1階フロアには懸垂点となる強固な固定物がないこと
以上の2点とします。
装備と技術面の双方に注目していただきたいと思います。
なお、本訓練は、救助技術の披露を主眼とするため、消火活動および救急処置については割愛します。
それでは訓練を開始します。
[隊長]
隊員集まれ!!
地階倉庫内に作業中の男性1名が取り残されているとの情報を得た。地階については少量の煙が確認できるため、火災が発生しているものと思われる。1階については、地震により一部崩落、階段等が使用できないことから、崩落箇所のこの位置からの進入とする。
1番員、2番員は降下準備、3番員、4番員は連絡はしごの設定、活動開始!!
(建物内部へ向けて)
大丈夫ですか!? だれかいますか!?
私たちは福井市消防局 高度救助隊です。私の声が分かれば、返事をするか、物音を立ててください!! 大丈夫ですか!?
…反応なし
[隊長]
隊員、活動しながら聞け!! 呼びかけを実施した結果、現在のところ反応なし、1番員、2番員については降下完了後、地階フロアの状況評価を実施せよ。
なお、活動時間は15分とし、通信にあっては無線および手信号で行う。
地震により崩落した1階フロアには強固な固定物がないため三連はしごを懸垂点として、降下ラインを設定します。三連はしごを地面と水平に寝かせ、三連はしごの重量および設置面の摩擦力を利用し懸垂点を作成しました。
フルボディハーネスをすでに着装しているため、時間をかけることなく、すみやかに降下することができます。
1番員、2番員が降下する
隊員2名が地階に降下進入します。降下完了後は、降下ラインを誘導ロープに切り替えて、検索活動を行います。
[1番員]
1番員から救助隊長。
状況評価の結果、崩落によるがれきが多数、フロア全体に煙の滞留が認められる。ただいまから人命検索を実施する。
[隊長]
その件、了解した。
詳細な人命検索を実施せよ。
1番員、2番員が火災室と思われる開口部を発見
検索活動中の隊員が火災室と思われる開口部を発見しました。
[1番員]
1番員から救助隊長。
倉庫と思われる一室を発見。ただいまから内部の状況を確認する。
[隊長]
その件了解。
[1番員]
扉確認、上部から熱気あり、扉開放。
1番員から救助隊長、
倉庫内にあっては、濃煙熱気状態、高さ約1mの中性帯が確認できる。
現地点から約8m先に要救助者らしきものが確認できるため、ただいまから倉庫内に進入する。
1番員、2番員が煙道に進入
今回、中性帯が発生している現場活動を表現するために、煙道を使用します。煙道の上部を中性帯として検索活動を行います。
[1番員]
…要救助者発見。
[2番員]
要救助者にあっては、40歳代男性、意識レベルJCSⅡ-20、自力歩行困難。
ただいまから身体縛着し、救出する。
要救助者の引きずり救助を開始
救出隊員の腹部D環に、簡易縛帯をとりつけ、中性帯をこわすことなく、低い姿勢を維持したまま、要救助者の引きずり救助を行います。
要救助者、安全マット上に到着
要救助者が引揚ポイントに到着しました。
ウェビングテープによる簡易縛帯の最大利点は「迅速さ」であると言えます。要救助者の負担を考え、引きずり・吊り上げ時にかかる荷重を分散するよう縛着しており、胸部周辺の締め付けを避けているため、呼吸を抑制することもありません。
要救助者の引き込みを開始
訓練塔上部をご覧ください。先ほど設定した三連はしごを支持点として、ロープの展張力を利用し、かぎ付きはしごを連結した「連結はしご」を設定しております。この「連結はしご」により、懸垂点を上部に作成することができ、さらにかぎ付きはしごを倒すことにより、要救助者の引き込みを安全に行うことが可能となります。
[隊長]
要救助者の引き込みが完了。
要救助者を引き込み、救出が完了しました。救急隊に引き渡します。
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至急、至急!! 余震発生!!