化学消防ポンプ自動車Ⅲ型 金沢市消防局

日本の消防車両

化学消防ポンプ自動車Ⅲ型 金沢市消防局

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化学車として車載型のファイアードスを初採用

メインの泡混合装置は、水流駆動型泡原液混合装置であるファイアードスを採用している。ファイアードスを化学車の基幹システムとして採用したのは、本車両が日本初という。化学消防ポンプ自動車Ⅲ型の規格は、混合能力は毎分最大1200リットル以上と定められているが、本車両は毎分最大2500リットルの泡混合および放射が可能となっている。

これに加え、少量泡混合装置も装備している。これは水ポンプからの配管途中にラインプロポーショナーを装備し、毎分最大400リットル程度の少量泡放射を行う装置だ。通常の化学消防ポンプ自動車の泡混合装置による泡放射では、混合装置や水ポンプ等に泡原液が流入するため、使用後の洗浄作業に非常に時間がかかる。しかし少量混合装置では放水口の直前に混合装置を設けてあるため、洗浄がかなり簡便になる。

車両左後部に設置されているブースター消火装置は、20mの保形ホースの先端に空港用大型化学消防ポンプ自動車用のフラップ付ハンドラインノズル(深田工業製、HLN-8FW型)を装備している。このハンドラインノズルは水放射および泡放射両方に対応しており、さらにフラップを装備しているため、直状から扇状までさまざまな放射ができる。

これにより車両火災などの小規模火災において、迅速に延長して水および泡消火を行うことが可能となる。また放水量も抑えられていることから、水槽積載水を有効に活用することができる。

通常、化学消防ポンプ自動車Ⅲ型などのいわゆる重化学消防ポンプ自動車は危険物火災専用となり、一般火災等にはほとんど使用されないことが多い。しかし、本車両はこのようにさまざまな工夫をすることで、一般火災でも十分に有効活用することが可能になったのである。

ポンプ操作部
車両右側のポンプ操作部、上部左側から、泡吐水口(65mm×2口)、水吐水口(65mm×1口)、少量泡吐水口(65mm×1口)、下部に吸水口(90mm×1口)、中継口兼吸水口(口径90mm、通常は媒介で65mm)、左側にポンプ操作部、吸管、泡原液吸入口などが配されている。
ポンプ部横
ポンプ部横にポンプや泡混合関係の操作盤があり、液晶パネルにより操作する。
ファイヤードスシステム
ポンプ部の奥に赤い円状に見えるのが水流駆動型泡混合装置であるファイヤードスシステム。
車両右側ポンプ下部
車両右側ポンプ下部に水槽からのカラン式重力吐水口が設けられており、資機材等の洗浄等に使用可能。
車両上部の泡原液槽マンホール
車両上部の泡原液槽マンホール。泡原液槽および水槽はGFRP製として、軽量化を図った。
後部の積載部
後部の積載部は左右貫通式。かさばって重い耐熱服のアルミボックスや可搬型放水銃などは取り出しやすい位置に積載する。
ハンドラインノズル
ハンドラインノズル
ハンドラインノズルは空港用大型化学ポンプ自動車消防車補助用の水・泡兼用型ノズル。もちろん400型泡管槍による泡放射も可能。
車上
車上にはマスターストリームノズルを取り付けた2000リットル型ギアー型放水銃を装備し、大量放水に対応する。
コンビナートなどの危険物火災においては強烈な輻射熱により車両が損傷する恐れがあるため、本車両では自衛噴霧装置を強化。一般の車両左右各3口のほか、キャブ前上方2口、車両上部2口を増設している。
ブースター装置
ブースター装置は20m保形ホースがドラム巻になっている。
金沢市金石消防署301消防隊。
同車を運用する金沢市金石消防署301消防隊。
(左から)仁尾 等消防司令補、水上 正消防司令補、宮下悠也消防士、円明健有消防士長、木村晃大消防士長。
【SPECIFICATIONS】

車名:日野
通称名:プロフィア
シャーシ型式:QPG-FH1ALDA改
全長:8630mm
全幅:2490mm
全高:3420mm
ホイルベース:4880mm
最小回転半径:7.5m
車両総重量:15050kg
乗車定員:6名
原動機型式:A09C
総排気量:8866cc
駆動方式:4×2
ポンプ:A-1級
水槽容量:2500L
薬液槽容量:1500L
混合方式:ファイアードス
配備年月日:平成29年3月27日
艤装メーカー:長野ポンプ

金沢市消防局 金石消防署[石川県]
写真・文◎橋本政靖 Jレスキュー2017年11月号掲載記事

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