ハイパーミストブロアー車&重機搬送車 那覇市消防局
那覇市消防局 那覇市西消防署小禄出張所(沖縄県)
写真◎三上一行、吉田直人、那覇市消防局 文◎吉田直人
日本の消防車2018年掲載記事
全国初登場! 消防と技術者の執念で生まれた自走式の大型ブロアー車
増え続ける人口と観光客の命を守るために
国内屈指のリゾート地として人気の沖縄。戦後27年間にわたって米軍統治下にあった沖縄が日本に復帰したのが1972年(昭和47年)。この年の観光客数は44万人ほどだったが平成28年には約877万人と、40年あまりで約20倍という爆発的な伸びを示している。東京オリンピック2020が開催される令和2年(当時)には那覇空港の2本目の滑走路も供用開始予定で、観光客数1000万人を突破しそうな勢いだ。
県民人口も増え続けている。平成27年の国勢調査では日本の総人口が減少する中で、人口増加率が全国一の3%を記録したことが報告された。那覇市も今や人であふれかえっており、この状況は今後も続くだけでなく、ますます激化が予想される。
こうした状況下で災害が起きると、多くの人が被害に巻き込まれかねない。それにどう対処するか。県都那覇の命を守る那覇市消防局にとっても喫緊の課題だ。
那覇消防の要望で生まれた 自走式HMB
そんな中、各種災害において強力な武器となる新車両が日本で初めて那覇市消防局に導入された。ハイパーミストブロアー車(以下、HMBという)である。
従来の大型ブロアー車は、車両後部に大型ブロアーが架装されている。ありていにいえばトラックの荷台に巨大な扇風機が載っている状態である。だが、それでは車両の幅より狭い現場には入っていけない。それなら、大型ブロアーだけを単独で運用できるようにすれば、使える現場が格段に増えるのではないか。この発想を原点に開発されたのが那覇市消防局のHMBであり、最大の特徴は大型ブロアーを「自走式」にしたことだ。つまり、大型ブロアーそのものが車両(自走式大量噴霧放水大型ブロアー車)であることで、これが日本初なのである。
「従来のタイプでは車両と大型ブロアーは一体なのに、エンジンは別々。ならば分離できないかと考えてメーカーに相談した」と話すのはMHBの導入を担当した那覇市消防局の玉城啓消防司令補と宮平辰史消防士長。そしてそれが可能であることがわかった。自走式にこだわる那覇市消防局に対して、製作を請け負った帝国繊維とマルマテクニカは日本の最先端技術をもって応えた。それだけでなくミスト放水と放水銃の機能を追加、駆動方式は無限軌道式とするなど、装備担当者と技術者の執念によってHMBの細かな仕様が決まっていった。
こうしてでき上がったHMBは〈送風〉〈ミスト+送風〉〈放水銃+送風〉〈ミスト+放水銃+送風〉という4つの機能を持ち、リモートコントロールの操縦範囲は最大100m、最大風速39m/秒、放水距離最大80m。さらに駆動方式を無限軌道式とすることで悪路や段差がある場所、ぬかるんだ場所にも対応できる性能を持つ。
HMB(Hyper Mist Blower)
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