全地形対応車[総務省消防庁貸与車両]岡崎市消防本部

日本の消防車両

全地形対応車[総務省消防庁貸与車両]岡崎市消防本部

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後部ユニット
後部ユニット。今回の仕様は定員6名の人員輸送ユニット。後部ユニットは発注の段階で消火、給水、発電、現場救護所などのバリエーションを選択可能。
後部ユニットの後面。キャブ後部ドアは開き戸。左右のクローラの間には容量460Lの主燃料タンクが設置されている。
後部ユニットのキャブ。左右に向い合せで6席分のシートが設置され、座面はすべて跳ね上げ可能。天井部は脱出用のスライドドアになっている。
後部ユニットのキャブはフラット構造なので、シートをたたむと中央に担架なども収容可能。豪雨・津波災害等を想定し、担架両脇にはフロートが設置されている。
全地形対応車両には専用搬送車が用意され、緊急消防援助隊として遠方へ出動する際にはこれに積載される。専用搬送車の前部をジャッキアップして後部の床を下げ、スロープを設定して全地形対応車両が進入していく。
全地形対応車両専用搬送車はいすゞ・ギガのトラック車で全長は11.71m。今回は全地形対応車両の艤装を担当したモリタが直接納入するのではなく、両車をまとめていすゞ自動車が納入した。
いかなる悪路でも走破する「走行力」をチェック!
平坦地での最高速度は時速50km。専用搬送車から降ろされたのちも災害現場まで高速で走行可能。
斜面は50%勾配(28.6°)まで登はん可能。なお、テストでは60%の勾配も登り切っている。
ゴム製クローラのため、平時の市街地走行も可能。たとえば東京消防庁消防救助機動部隊の救出救助車のような金属のキャタピラ構造の場合、通常は一般道を走行できず、必ず搬送車による運搬が必要となる。
走行中の前部ユニットのキャブ。乗り心地は通常の車両より相当硬いが、疲労が伴う硬さではない。水深1.2mまでの水中も走行可能のため、前後ユニット、エンジンルームなどはすべて耐水構造になっている。クローラが地に付かない深さの水にも浮く構造だが、3室それぞれに2基ずつの排水ポンプが設置され、万が一に備えている。なお、接地しない水面上ではクローラを回転させることによって時速約4kmでの走行が可能。
前後ユニットをふかんする。連結装置のハの字のシリンダーが動くことによって操舵する構造がよくわかる。
全地形対応車両を運用する岡崎市消防本部高度救助隊。写真左から消防副士長・大原英煌、消防士長・会津宏樹、消防司令補・山本治(救助一係長)、消防士長・柴田佳伸、消防士長・鈴木修二、消防副士長・千石雄大。
消防司令補 山本治救助一係長

消防司令補 山本治救助一係長岡崎市消防本部中消防署高度救助隊

「全国に出動し、一般の消防車両が入れない場所にこの車が先頭を切って進入していけることは、緊急消防援助隊としての出動を考えた時、非常に心強い。管内の一般災害への出動はほとんど考えられないが、集中豪雨や大震災時の液状化災害などでは大きな力を発揮するだろう」

消防士長 柴田佳伸機関員

消防士長 柴田佳伸機関員岡崎市消防本部中消防署高度救助隊

「油圧モーターは非常にパワーがあるので安心している。運転では非常に視界が悪く、同乗する隊員に細かく安全確認してもらっている」

【SPECIFICATIONS】

全長:8720mm
全幅:2260mm
全高:2660mm
車両総重量:12130kg
(前総重量):7200kg
(後総重量):4930kg
乗車定員:10名
原動機型式:キャタピラC7
総排気量:7240cc
最高出力:224kW
最高速度:50km/h
燃料タンク容量:500L
登坂能力:60%以上、
30%側斜面走行
溝越え:2m
垂直壁乗り越え:0.6m

岡崎市消防本部 中消防署[愛知県]
写真・文 ◎ 伊藤久巳 「日本の消防車2014」掲載記事

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