消防ポンプ自動車CD-I型 渋川広域消防本部

日本の消防車両

消防ポンプ自動車CD-I型 渋川広域消防本部

渋川広域消防本部 西分署[群馬県]

写真◎伊藤久巳
日本の消防車2020掲載記事

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渋消式ホースバッグ積載OK!
伊香保町を守るコンパクト車両

更新で新たに道路11カ所と
消防水利10カ所をカバー

渋川広域消防本部 西分署が管内とする渋川市伊香保町は、万葉集にもその名が登場する古くから知られた名湯。高低差のあるエリアに旅館やホテルが建ち並ぶ、情緒あふれる温泉街だが、大型の消防車両が進入できない狭隘な場所が多い地域でもある。

そこで同広域消防本部では、ポンプ車の更新にあたり、従来運用してきた中型車両の水I-B型ではなく、よりコンパクトな小型車両のCD-I型を新たに運用することとした。これにより更新配備されたポンプ車は、全長が6590㎜から5900㎜と690㎜も短縮されたほか、全幅も同様に2280mmから1920mmと360mm短くなった(全高は2780mmと変わらず)。

さらに特筆すべきなのがホイルベース。更新前車両の3790mmに対して2800mmと990mmのマイナスとなっている。これが貢献して最小回転半径も6.4mから6.0mmになり、より小回りの利く車両が実現した。この小型化の結果、伊香保町管内では、これまで消防車両が進入できなかった道路11カ所と消防水利10カ所を新たにカバーできるようになった。また同広域消防本部管内には伊香保町に限らず狭隘な地域が数多くあるので、今般の車両コンパクト化による効果が今後、管内各地でも見込まれている。積載する水ポンプは引き続きA-2級なので、車両更新後も放水能力に変わりはない。

ホースバッグ積載のため
右側面は分割式吸管に

更新車両の仕様作成のポイントは、車両がCD-I型でも、「渋消式」の火災防御戦術においてもっとも重要視される「渋消式ホースバッグ」を資機材庫に積載可能とすることだ(最低でも1線2口分=65mmホース1セット、50mmホース2セット)。そのためには、車両の小型化により少なくなった資機材収納スペースを最大限活用する必要がある。そこで、車両右側面の吸管については常設ではなく、分割式の吸管を必要な場合のみ結合する方式とし、その分の浮いたスペースに渋消式ホースバッグを積載している。

水槽容量については、更新前車両の1500Lから850Lになっている。積載する水の量が落ちているが、これは管内の消防水利の設置状況が非常に充実していることから、火点に放水しつつも同時にすぐ消火栓等に水利部署できること、また戦術面において車両同士の連携活動要領が確立していることから、水槽容量が850Lであっても水が足りなくなるということはないだろうという判断がなされた。

さらに更新に合わせ、新たに電動式の油圧救助資器材(マルチツール)を積載した。伊香保町は本署から緊急走行でも10分程度かかる。本署のみに配置されている救助隊を待つのでは救出までに時間を要してしまうことから、このタイム差を埋めるための措置である。

コンパクトになってもさまざまな工夫が新たに盛り込まれてパワーアップしたこの新ポンプ車が、坂道や狭い路地の多い伊香保町の安全を守っていく。

外観

消防車
渋川広域消防本部にとってCD-I型の運用は初。全長、全幅、ホイルベース、最小回転半径、車両重量のすべてがショート化された。
消防車
ベース車両は日野デュトロ。
消防車
リアにはバックビュー用のカメラを装備し、運転台のモニターで後方を常時監視できる。
消防車
「群馬県」の対空表示が大きく入る。
消防車
最先着して水利部署、あるいは火災の状況によっては火点直近に部署して水槽の水を放水する役回り。
消防車
ハイルーフでありながら三連はしご込みで全高を更新前車両と同等の2780mmに抑えるのに苦労した。

左側面

消防車
左側面はリア吸管仕様。
消防車
ポンプは更新前車両と同等のA-2級ポンプ。
消防車
キャスター付き延長器を吸管の中央に縦置きのまま収納。渋川広域消防本部では分署によってホースの色を変えており、西分署は緑色のホースを使用する。
消防車
左右の資機材庫扉の裏側には消火栓ハンドル。

右側面

消防車
右側面には吸管を結合せず、分割式にすることで渋消式ホースバッグを3セット収納する。
消防車
ホースを3本収納した渋消式ホースバッグ(65mmと50mm)は通常のホースバッグより幅があり、そのままでは入らない。そこで資機材庫の奥行きをその部分だけ広げて収納スペースを確保している。また40mmのホースバッグはキャブ内に積んでいる。
消防車
ハリガンツールを新たに積載した。

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