
電源照明車
東海市消防本部
東海市消防本部 消防署 [愛知県]
写真・文◎橋本政靖
Jレスキュー2018年11月号掲載記事
3種の照明で死角ゼロ! 最新鋭「小型」電源照明車
電源照明車 小型化の歴史
東海市消防本部では平成30年3月、電源照明車を更新配備した。小型シャーシをベースとして高輝度照明を搭載し、さらに大きな資機材積載スペースを有する特徴的な車両に仕上がっている。
最初に電源照明車の歴史を振り返ってみよう。照明光源はこれまで高輝度化・省電力化の求めに応じて、戦前の白熱ランプ、60年代にハロゲン照明、70年代に水銀灯・高圧ナトリウムカクテル照明、90年代にメタルハライド照明と進化を経てきた。
従来の水銀灯・高圧ナトリウムカクテル照明を使用した電源照明車は、500W~1kW程度のランプを5~10基搭載したかなり大がかりなものであった。このため塔体にも十分な強度が必要で、直進式や屈曲式のクレーンブームが使われていた。また発電機も、大量の電力が必要で、発電機自体の発電効率も悪く、大型であった。
LED照明の登場により照明装置の小型軽量化が進み、塔体も軽量なもので済むようになった。さらに照明の省電力化にともない、発電機も低容量タイプで十分になったとともに、発電効率が高くなって小型化した。従来、電源照明車といえば5.5~8tクラスの大型シャーシでなければいけなかったが、近年では3tクラスの小型シャーシで造れるようになったのだ。
特に本車両は3tダブルキャブシャーシをベースとし、各部で軽量化を図ることで、車両総重量は運転免許制度の5t未満の範囲内に収まっている。そのため、これまでの中型車両では進入できなかった狭隘な場所まで進入し、照明活動が可能となった。

3種の照明を搭載
一般的に救助工作車などでは伸縮式照明を一本しか搭載できないので、一方向、約45度の範囲内で横幅約60m×距離100m程度までしか照射できない。
本車両では主照明として、同型の照明装置が前後に2基取りつけられている。照明塔はケーブルレス4段式アルミポール、昇降は電動油圧式で、高さ約6mまで伸縮する。ポール先端には明るさ90万cdの能力を有する湘南工作所製SLD-4200WD1CL2-D型LED照明装置(2100W)タイプが2台1組で取りつけられており、左右個別に仰角・俯角各90度の仰俯および全旋回が可能となっている。
この2本をそれぞれ別方向に向けることにより、100度以上かつ横幅約120m×距離100m以上の範囲が照明可能であり、一般火災、救助活動のほか、石油コンビナート災害などの大規模火災でも、広範囲の照明活動が可能となった。4段階減光機能のほか、レンズを電動で切り替えて集中光源・拡散光源で照射でき、作業灯としてダウンライトおよび上方確認灯も装備している。
さらに、この主照明の死角を照射するLED式補助照明が車両後部両側に2基取りつけられている。車両バッテリー駆動式で、手動式伸縮ポールにより約3mまで上昇し、旋回・起伏も可能である。
このほか、前述の主照明および補助照明装置でも照射できない死角を照明するため、可搬型照明装置も6セット積載した。これはAC100V-160W、13万cdのLED照明装置、三脚およびコードリールがセットになっている。後述するPTO駆動式発電機から供給される車両側面のコンセントから電源を得るほか、車両から離れた場所で使用するために発動発電機も積載している。
そしてこれらに電力供給するのが、東洋電産製PTO駆動式発電機「NMG発電システム」2基だ。AC100V正弦波の5kWタイプで、合計10kW出力できる。従来のPTO駆動式発電機と比べて小型軽量かつ低回転数で、主照明のほか、4カ所に設けられたコンセントにも電力供給する。これら発電装置および照明装置は、シャッターボックス内のリモコンパネルで操作できる。

フロント

リア


多用途に使える照明車
本車両は従来より小型のシャーシを用いているが、照明装置および発電機が劇的に小型化した結果、車両中央部に大型の資機材積載スペースが生じた。このため、電源照明車以外にも様々な用途で使用できる。たとえば東海市消防本部では、水難救助隊はあるが水難救助車を保有していない。そのため水難多発期には水難救助用資機材を入れたボックスを収納する。また、車両後部左側には空気ボンベ搬送用のラックが設けられており、空気呼吸器用や潜水用の空気ボンベを12本積載可能である。
さらに、一般的な電源照明車はシングルキャブで定員2~3名であるのに対して、本車両はダブルキャブとし定員5名となっている。そのため、救助工作車の入庫時や緊急消防援助隊などの出場時には、救助資機材を積載して代車的な運用も可能だ。
最新の電源照明車は、技術進歩の恩恵を受け、従来より高性能でより小型となっている。
両側面






