特殊災害対策車[大型]CS1 東京消防庁

日本の消防車両

特殊災害対策車[大型]CS1 東京消防庁

東京消防庁 第三・第九消防方面本部消防救助機動部隊 [東京都]
(※現在、第九消防方面本部消防救助機動部隊の特殊災害対策車【CS1】は、第八消防方面本部消防救助機動部隊に配置換えされています)

写真・文◎木下慎次
「日本の消防車2014年」掲載記事

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2台同時配備!

放射線災害を想定してバージョンアップした【CS1】
消防車
3HR(第三消防方面本部消防救助機動部隊)とあわせ、9HR(第九消防方面本部消防救助機動部隊)にも配備された特殊災害対策車(大型)。放射線から防護するために車体全体が鉛板と水槽で覆われ、車両全体が水膜で防護される構造になっている。

東京消防庁の特殊災害対策車「CS1」は、NBC災害対応部隊である第三本部ハイパーレスキューで運用されていた国内唯一の放射線防護強化型特殊災害対応自動車だった。平成23年(2011年)3月11日に発生した福島第一原子力発電所事故で現場に投入され、ハイパーレスキューの決死の放水活動を先導する偵察活動などで大活躍した。しかし、NBC災害対応車両は残存汚染物質による影響を考慮し、リスクを回避する観点から実戦に投入されたものは廃車とするのが原則となる。そのため、福島に出動したCS1は運用廃止され、2代目が製作されることになった。

新たに製作されたCS1は、原発事故対応という実戦経験を踏まえ、N災害での活動形態に即した仕様にバージョンアップされ、第三本部ハイパーレスキューに加え、同隊との相互補完関係にある第九本部ハイパーレスキュー(平成25年3月末発足)にも配備された。2代目は同仕様車が2台製作されたのである。

基本的な構造や装備品は初代車両と同等で、車内陽圧機能や水槽などによる放射線防護機能を備える。シャーシの大きな変更点は、2軸車から3軸車となったこと。これは活動スペースとなる車両後方スペースを拡充させたことにより防護構造部(鉛や水槽)の容積が増えたためで、先代の車両の車両総重量も初代が17tだったのに対し、2代目は22tに増えている。

同車の構造では、フロントガラスのある正面よりも、車両後方のほうが放射線の遮蔽能力が高くなっている。そのため、放射線暴露の環境下では、後進で現場進入を図ることになる。そして活動地点に最接近したところで隊員が車両から降り、それぞれのミッションを遂行し、要救助者とともに車内に戻る。この際、隊員の被曝を最小限に抑えるべく、活動は数班に分かれてローテーションで当たる。同車の後方スペースは、その交代要員の待機スペースを拡充したということなのだ。また、左右のドアには自動展開式のステップが新たに設置され、陽圧式化学防護服などを装備を着装した状態でも迅速な乗り降りが可能になっている。

消防車
2列目シートには空気呼吸器内蔵型シートを採用。テーブルも備えられている。
運転室
消防車
防護板使用時に周辺の安全確認を行えるよう、運転席には各方向の映像を映し出すモニターが並ぶ。
分析室
消防車
分析室にはカメラや測定装置等の各種ギミックの操作パネルや分析装置を置くテーブルと1人分の席が用意されている。
消防車
モニターは4分割画面で各方向の様子を映し出すカメラ映像が表示される。
消防車
通路を挟んだ反対側にもう1台のモニターがある。こちらは伸縮ポール式カメラの映像を映し出すためのもの。
積載スペース
消防車
同車には2基の空気浄化装置が搭載されており、運転室と分析室をそれぞれ陽圧状態にできる。
消防車
車両後方の積載スペース。活動時の前進拠点にもなるスペースで、先代より広い空間が確保された。

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