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【コラム】ランクル消防車「ポン太」と北海道の旅
―第1回目―

子供の頃の夢。
小学生の卒業文集に“消防士になる”と書いた。
しかし、中身をよく読むと“消防車でドライブがしたい”という極めて不純な動機で消防士を目指していたことがわかる。
この夏、その夢を果たしに僕は34年落ちのトヨタ・ランドクルーザー(通称・ランクル)60系の元消防車「ポン太号」で北海道へ13日間の旅に出た。

写真・文◎UsUk

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夢を果たす旅に出る

21歳のころから年に一回、北海道へ旅に出る。
夏だったり、冬だったり。
クルマだったり、バイクだったり、汽車だったり。
いつ、どんなもので旅をしても北海道は優しく、時にえげつないくらい厳しく僕を迎えてくれる。
夏の日差しが痛い8月の終わり。
台風“サンサン”が近づく中、千葉では太陽が“さんさん”
出発まであまり時間がないなか、汗だくになりながら荷台に荷物を放り込む寝袋、故障時の道具、炊事道具、不安と期待。
あらかた積み終わり、運転席に乗り込みエンジンをかけた。オーナー以上にやる気満々のエンジン。
「さぁ出発だ!」
太陽が笑いかける空の下、千葉県を後にした。

2024年8月29日(1日目)

大洗フェリーターミナルに到着。
本州から北海道へ渡るには空路か航路、鉄路か泳ぐ他存在しない。
今回は、お金と時間を犠牲に長い船旅を選択した。

ポン太と北海道の旅
大洗フェリーターミナルにて出航を待つ。

「さんふらわぁさっぽろ」が旅の船。
ターミナルでは知人のN氏が出迎えてくれた。
同船運行会社にお勤めの彼は船の手配をしてくれる旅の強い味方。
僕とN氏はターミナル2階の待合所でアイスを食べながら談笑に花を咲かせる。気づけば乗船の時間になっていた。
名残惜しさを感じながらもN氏誘導の元、乗船の順番待ちレーンに着く。
トレーラーが蟻んこのように船の中にシャーシを運ぶ。
そんな折、誘導員が合図した。僕の番である。ギアを入れアクセルを踏む。
N氏に「行ってきます! 帰るかわかりませんが、また!」と別れを告げた。
N氏は「気を付けてねぇ」と手を振っていた。
雨が降る夜の大洗。台風を振り切って僕の旅が始まる。
船の懐に滑り込んだポン太号から荷物を降ろし、指定席に向かう。

ポン太と北海道の旅
船内へ向かう人々。

今回はコンフォート席。席といってもベッドである。昔の寝台列車のような雰囲気。試しにと横になる。
21時。一瞬で寝てしまった。
食事をしに共用スペースの卓を探す。
船内はツーリング客や旅行客でにぎわっていて、どこの卓も宴会場状態。
隅のほうの席が空いていた。そこに腰を下ろして今夜のディナー。
本当は船内レストランで食事をしたかったが、そんな路銀など持ち合わせていない。
今夜はカップ麺とビールでしのぐ。いつかは気軽にレストランへ行けるようになりたいものだ。
食事が済ませて向かうは風呂、スマホの電波が届きづらい船内での楽しみはもっぱら風呂展望窓から望む海、最高である。
しかし、今は夜、しかも雨、何も見えない……。
入浴を済ませ床に就く。船はゆりかごのように揺れ、眠りにつくのに時間は要さなかった。

ポン太と北海道の旅
快適だったコンフォート席。

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