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【コラム】ランクル消防車「ポン太」と北海道の旅
―第2回目―
2024年9月3日(6日目)
朝が来た。
晴れ渡る空、しかし、吹き抜ける風が妙に冷たく心地よい。
そそくさと準備をし、国道333号線、国道243号線を経由し美幌を目指す。
ここまで、連日暑かったり雨だったりしていたが、この日の朝は秋らしく透き通ったような空だった。
美幌峠までは100kmほど。
途中のクマが出そうな山間部で朝ごはん休憩を挟む。
11時。
美幌峠を駆け上がった先に道の駅があり、多くのライダーや観光客で賑わっていた。
この道の駅には展望台があり、屈斜路湖を見下ろすことができる。
壮大な景色のなか体いっぱいに幸せを感じる。
心がここから離れたがらないせいで、気づくと時刻は昼を回ろうかという所だった。
ここからどこへ行くか。
晴れているなら行く場所は一つ。目指せ開陽台。
距離にして100km程度遠くは無い。
ここから離れたがらない心も開陽台と聞けば話は別。ポン太号は走り出した。
窓から飛び込んでくる秋風が心地よい。
開陽台に着いたのは14時頃。
ここにも多くの観光客がいた。
展望台に上がると地球が丸く見えると言われる景色に息を飲む。
東の方角には北方四島が綺麗に見え、北側には阿寒の山々を望む。
駐車場に戻り遠く広がる牧草地を眺めながらお湯を沸かしコーヒーを飲む。
完全に優勝である。異論は認めない。
時刻は15時半を回ったところ。
今日も夕日が綺麗に見えそうなので、以前から行ってみたかった風蓮湖を目指すことに。
70km程の距離にあるのでそう遠くない。
国道243、272、244号線を通りつつ、寄り道しながら17時過ぎに無事に風蓮湖に到着した。
お腹も減ったので夕日を眺めながらパスタを食べることにした。
夕焼けが空をオレンジ色に染めるなか、一人黙々とパスタを食べる。
どんな安っぽい食事でさえ、こんなロケーションではご馳走になってしまう。
ささやかなランチ兼ディナーを済ませ、コーヒーを飲みながら風蓮湖に沈む夕日を眺める。
贅沢な時間がゆっくりと流れる。
この近くには誰もいないのでポータブルスピーカーで曲を流す。
曲は名曲THE ROLLING STONESの「Gimme Shelter」。
夕焼けに最高にマッチする一曲に男の野心を掻き立てられる。
夕日も沈んだ。
気づくと背後にある海の音だけが聞こえる。
今日の係留地を探すためスマホを開くと、根室の街がそう遠くないことに気づく。
今日の係留地を根室に決め走り出した。
しかし、異変にすぐ気づいた。
燃料が枯渇寸前である。
走るのが楽しくてまったく気にしていなかったが、このままでは根室にたどり着くことはできないかもしれない。
先ほどまでの野心にあふれる男から一転、小心者へ大変身。
巡航速度に気を付けて根室に向かう。
林が両側を覆う真っ暗な一本道。ガス欠なんてしたら助かりようがない。
根室に着いた頃には辺りはすっかり夜。
命からがらたどり着いたオアシス、ガソリンスタンドで念願の給油。
60Lのタンクは55Lものガソリンを飲み込んだ。
残量は4.5Lであったようだ。
この旅で一番肝を冷やした瞬間であった。
ドキドキガス欠チャレンジを終えると、一人の青年が声をかけてきた。
クルマ好きの彼はポン太号に興味津々。
仕事で根室に赴任してきた20代の彼はスズキ・スイフトに乗っている。
いつかは古い車に乗るのが夢だという。
僕は彼がお勧めだという銭湯に向けて走り出す。
さっぱりして外に出るとすっかり寒くなっていた。係留地を決めるためナビを開く。
どうやら町のはずれに無料開放の駐車場があるらしい。僕は星々が見守る中、そこへ向かった。
そこは、すでに満車状態で静まり返っていた。
銭湯に入りすっかり眠い僕は隅っこの一角に車を止め、そのまま寝床に入り眠りについた。
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ポン太号がつなぐ人との出会いと100円玉の呪い