News
【コラム】ランクル消防車「ポン太」と北海道の旅
―第2回目―
2024年9月4日(7日目)
目が覚めると外が少し騒がしい。
外ではポン太号を囲んで井戸端会議が繰り広げられていた。
そりゃあ朝起きて横を見たら消防車が止まっていたら、誰だって無反応ではいられないだろう。
挨拶がてら皆さんから話を聞く。
皆さん面白い方ばかりで、一人旅の女性は鳥取から17回目の来道。
別の一人旅の男性は奥様と別れて傷心旅行中。
定年を迎えたご老人はアルファードに荷物を詰め込み旅行中。
また、別の軽バンで旅するご老人は、旅を終えたら免許を返納するとのこと。
皆が三者三様に生きてきて、たまたま、今日会った。
ゆえに皆自由だ。9時も回れば駐車場はまばらになる。
僕も出発。今日も旅が始まる。
今日は知人のMさんと会うことになっている。
彼女は釧路の鶴居村に住み、明日は一緒にサイクリングに行こうと今朝連絡した。
10時過ぎ。遅い出発。
途中自衛隊上がりと思われる日産のトラックがあった。
茶内駅。
ルパン三世の筆者であるモンキーパンチ先生のふるさとということで、ルパン三世に関するモニュメントが点在する。
そんなお祭り雰囲気とは対照的に、茶内駅すぐ近くには大きな石碑が立っている。
青空にそびえたつ「慰霊塔」。
ここにはかつて映画館があった。
昭和26年。鑑賞中のフィルムから出火。炎はあっという間に建物を飲み込んだ。
中に取り残された多くの子供たちは助からなかった。
悲しい歴史を再び起こさぬよう今も火災の恐怖を語る慰霊碑。
忘れてはいけない過去がここにあった。
クルマは茶内駅から再び霧多布湿原を通り海岸線へ戻る。
琵琶瀬の丘の上から望む海は北海道でも指折りの風景。
ただの道端で1時間は時間をつぶせる。
途中、漁村に立ち寄った。
白くきれいな広場が広がる。昆布漁師の家だ。
この日、昆布漁はなかったが面白いものがあった。
昆布を載せるために車両の後ろを切られたランクルで、防錆加工が施されている。
同じような車に乗る身としてはうれしかった。
四駆が四駆たる所以。最後までその使命を全うしようとしている。
漁村を離れ道道123号線を進む。
辺りが夕暮れに包まれ始めるころに厚岸に着いた。
鶴居村まで釧路経由海沿いで進むか、山間部へ進むか迷った。
その結果、コイントスで決めることにした。
はじいたコインは宙を舞い、何処かへ行った。
100円の損失である。
ということで、山間部へ進むことにし道道14、243号線を通り、山々の間を駆ける。
地図は上から見るからわからなかったが、登ったり下ったり、燃費が悪いポン太号には効果てきめんの道であった。
僕は100円玉の呪いだと思っている。
鶴居村に着き、本日お世話になる女性Mさんの家。
北海道に来るようになってから家族ぐるみで迎えてくれる。北海道の母といえる女性だ。
明日は、近くの廃線跡を利用したサイクリングロードを走り釧路駅を目指す。
少しばかりの晩酌後、床を借りて眠りについた。
次のページ:
ポン太号の休めて、釧路湿原を眺めながらサイクリング