第26回全国消防救助シンポジウムを開催<br>効果的な教育・訓練と災害事例の共有を図る

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第26回全国消防救助シンポジウムを開催
効果的な教育・訓練と災害事例の共有を図る

総務省消防庁は、令和5年12月14日、東京・銀座ブロッサム中央会館にて「第26回全国消防救助シンポジウム」を開催した。

写真◎編集部

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本シンポジウムは、全国の消防職員、消防学校関係者、都道府県消防防災関係者等を対象とし、救助技術の研究開発および消防活動事例の発表や意見交換を行うことにより、救助技術の向上および救助隊員相互の交流と親睦を深め、我が国における救助体制の一層の充実を図ることを目的として毎年開催されている。



テーマ は「最適な救助活動のための備え ~効果的な教育・訓練と災害事例の共有・活用~」

全国の救助隊では、多様化する災害への対応が求められてきている一方で、現場活動を支えてきた経験豊富なベテラン救助隊員の退職等により、技術・知識の継承に滞りが生じている。

長年の技術・知識を継承しつつ、あらゆる災害に対して救助隊が最適な救助活動をするためには、効果的な教育・訓練による救助人材の育成を行うとともに、経験値を補うために貴重な災害事例を活用することが望まれる。

本シンポジウムでは、多様な災害の教訓から取り組んでいる効果的な教育・訓練事例、日常の教育・訓練が活かされた災害事例や効果的かつ効率的な訓練手法等を全国の救助隊員が共有することで、救助活動能力の充実強化を図る。

救助シンポジウム
開会挨拶をする消防庁長官・原邦彰氏。
救助シンポジウム
祝辞の挨拶をする全国消防長会 会長・吉田義実氏。

事例研修発表内容

つくば市消防本部
早川 亮
「ドア開放による救助人材育成について」

東近江行政組合消防本部
板倉 堅司
「2箇所で同時発生した流水救助事案について~過去の教訓が活きた事例~」

倉敷市消防局
井上 明彦
「官民及び地域住民と協力して整えた訓練環境」

豊田市消防本部
福嶋 祐希
「救助活動検証体制~過去の教訓を未来へつなぐ~」

久留米広域消防本部
立石 平和
「映像を活用した効果・効率的な訓練方法の紹介」

岡山市消防局
小倉 良太
「NBC災害活動における教育・訓練体制」

稲敷広域消防本部
大野 卓也
「さらなる救助技術のアウトプットへ~地域の実情に応じた検証訓練の実施および動画マニュアル作成~」

浜松市消防局
伊藤 慎悟
「関係機関との連携訓練が生きた事例」

救助シンポジウム
講演をする陸上自衛隊 開発実験団 装備実験隊長 1等陸佐 松原泰孝氏。

東京オリンピック2020におけるCBRN災害への準備と教訓 ~指揮官として如何にあるべきか~

講演では陸上自衛隊 開発実験団 装備実験隊長 1等陸佐 松原泰孝氏が演題「東京オリンピック2020におけるCBEN災害への準備と教訓」をテーマに、自身の経験談をユーモアを織り交ぜながら語り、来場者を惹きつけていた。

松原氏は、陸上自衛隊最大の化学科部隊である中央特殊武器防護隊の隊長として2019年着任。翌年には東京オリンピックという国家的イベントを控えていたが、もし会場でCBRNによる大規模災害が発生した場合、「果たして警察、消防、自衛隊が有機的に連携し、実効的な対応ができるのか?」、「そもそも我々自衛隊は何を期待され、何をすべきか」と真剣に考えた末、当時の対処マニュアル、部隊運用構想、訓練想定などに様々な問題点や課題があることに気づいた。

そこで、その問題認識から、より現実的かつ実際的なCBRN対処を可能とする新たな運用コンセプト「CBRNレスキュー」を自ら考案した。

救助シンポジウム
リーダーシップのあり方について、自身の経験から得た教訓が現在に繋がっていると話す。このうちの一つを紹介すると、上司は常に「笑顔を絶やさない」ことが職場の環境をより良くする秘訣だという。

本講演では、松原氏が指揮官としての役割を果たすために、新しい手法を隊員に理解させ、浸透させるために実施した訓練を具体的に紹介。また部隊長として、隊員たちと共に厳しい訓練を乗り越え、任務を達成するために必要なリーダーシップについても述べられた。

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会場では胸が熱くなるほどの事例研究が発表される

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