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米国「ラダー・レスキュー」の全7システム
正しく知ることから始めよう!
米国発の消防技術の一つとして時々「ラダー・レスキュー」という言葉が聞かれるが、どのような技術なのか?
日本の消防技術であるはしご操法と何が違うのか?
米国におけるラダー・レスキューの位置づけについて紹介する。
イラスト◎井竿真理子
Jレスキュー2016年3月号掲載記事
アメリカでの位置づけは
大規模災害時の非常的活用法
ラダー・レスキュー(ladder Rescue Systems)は、米国カリフォルニア州のUSAR(Urban Search and Rescue)のベーシック及びライト・レベルの要件に求められるスキルの一部である。
これらの技術をまとめたテキストの中では、ラダー・レスキューについて「大規模災害において、多くの要救助者に対して救助隊は人員も資器材も十分に確保できない。多層階(高所・低所)からの救助においてすばやく効果的に、そして要救助者、救助者共に安全な救出活動が求められる。そして、最低限の技術知識と資器材で要救助者をすばやく安全に救出するいくつかの方法として積載はしごは使用される」としている。
つまり、このシステムは平時(NFPA準拠)の消防活動技術のスタンダードではなく、大規模災害時に実施する手法であり、救助手段の選択順位としては第一選択肢ではないのだ。
7種のレスキューシステム
ラダーレスキューには7種類のシステムがある(表参照)。それらの中には、はしごクレーン救助や、担架の長さを補って搬送を補助するなど、日本の消防でも類似したものがあるが、インテリア・ラダーやカンチレバー・ラダーのように活動がはしごの長さに依存せず、ロープの長さに依存する方法がある。
ところが、米国の消防ツール・技術を規格化しているNFPA(全米防火協会)では、はしごをロープレスキューで使用するポータブルアンカーとして認可していない。
1.ムービング・ラダー・スライド
バスケット担架をウェビングテープではしごに結着し、徒手による受け渡しを行うだけのシンプルな救助方法。担架を高所から降ろしたり低所から引き上げる際の補助的役割をする。所持しているはしごの長さ以下の高低差や障害物を乗り越える際に非常に有効。1階分の高さや低い崖を超える状況でしか使用しないため、ロープは必要としない。
2.ラダー・スライド
担架にロープを結着し、はしごの上を滑らせる救助法。ムービング・ラダー・スライドよりも高低差がある場合に行う。要救助者を引き揚げる時は2分の1システムを行い、降ろす時は担架とはしごの摩擦を使用して降ろす。
3.エクステリア・リーニング・ラダー
応急はしごやはしご水平救助第2法と同様の救助法。要救助者のいる階の窓枠より上にはしごを架梯し、はしごを建物から浮かせることなく高取り支点が作れるシステム。はしごの長さ以下の高さに要救助者がいて、ラダー・スライドシステムを行うマンパワーがない場合に活用される。
4.インテリア・リーニング・ラダー
屋内に架梯したはしごを支点とするロープ救助。救出階の屋内で単はしごを天井と床で動かないように固定させる。ロープを横桟に巻きつけて摩擦を利用する。ロープをはしごの主管近くの横桟に設定すれば、より強度が保たれる。ビレイは必ず救出階か救出階の上階で設定する。はしごに巻き付けてはならない。また約2.4mの4x4木材や直径40㎜の単管パイプも使用可能である。
5.カンチレバー・ラダー
片持ち梁はしご救助法(はしごを摩擦として使用)。救助隊が活動する階の一階以上の階にはしごで支点を設定する。はしごの支点は、エッジから横桟1本分の位置とし、適切なカウンターウェイトを維持するため、少なくとも屋内側に横桟7段分入っている必要があり、はしごの適切な位置に体重を乗せて押さえておく。カンチレバー・ラダーを救出階で操作する方法もある。寝かせたはしごが支点と下降器、エッジガードの役目を果たす。尚、カンチレバーと要救助者を救出する階が同一の場合、支点としての役目を果たさない。
6.ラダー・ジン
コンセプトは日本のはしごクレーン救助法と同じ。広い場所で設定することができ、穴、井戸、立坑などへの接近が容易。建物や車両や縁石に対して設定、もしくは窓や屋根から離して設定できる。
7.ラダー・A・フレーム
はしごAフレーム救助法は、いわゆるマンホール救助器具の代替法。2本のはしごを組み合わせ、はしご上部同士を結着し、75度の角度を保てるように基部同士もウエビングで結着する。ラダー・A・フレームのみ2名の荷重を受け止める事ができる。
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