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「災害対応に強い指揮隊をつくりたい!」
平成30年に指揮課が発足
―佐久広域連合消防本部―
佐久広域連合消防本部が「指揮機能の強化」、そして「指揮の一元化」を図ることを目的に平成30年4月1日、消防本部に指揮課(指揮隊)を組織した。そのミッションと、発足の背景を紹介する。
Jレスキュー2020年11月号掲載記事
[写真]9名からなる指揮課(指揮隊)を束ねる指揮課長の土屋 勉(中央)と、指揮係長の小林真樹(左)、指揮係長の小林心一(右)。
構成は指揮隊長以下、指揮担当、情報担当
佐久広域連合消防本部は、1消防本部、7消防署、1分遣所、職員242名の体制で2市5町4村にまたがる広大な管轄面積を抱える広域消防だ。以前は災害が発生すると、管轄消防署の日勤者主体に指揮隊を編成、災害の規模によっては、消防本部警防課職員で指揮隊を編成し管轄署合同で指揮活動を行う体制であり、どちらも夜間、休日においては招集による出動となるため初動の体制に課題があった。
平成30年4月1日に運用が開始された消防本部の指揮隊は、指揮専従の常設隊だ。1当直あたり3名の隊員で構成され、上席隊員が現場最高指揮者として全体を統括する「指揮隊長」。これは日勤者である指揮課長または24時間交替制勤務の指揮係長が務める。さらに指揮隊長の補佐として指揮体制をとる「指揮担当」。そして指揮車の機関員として活動するほか主に情報収集を担う「情報担当」だ。各隊員の役割分担は[表1]の通りだが、3名という少人数の隊なので、大規模消防本部とは異なり、それぞれが役割を二重三重でこなさなければならない。
佐久広域連合消防本部指揮隊の特徴は、指揮隊が警防課内に設置されるのではなく、指揮課として指揮専従の課を新たに設けたことだ。その背景を指揮課長の土屋 勉 消防司令長は、
「簡単にいえば、24時間365日即応力のある災害対応に強い指揮隊をつくりたいということであった」
とふりかえる。
訓練を通じて体制づくり 広域連合全体が精強部隊へ
指揮課長1名、指揮係長3名、係員5名の計9名からなる新生指揮課は発足後、性急に先進地消防機関においての実務研修を重ね強固な指揮体制を構築すべく、各種マニュアルの作成や改訂作業に着手。基本となる消防戦術もあらためて見直しをかけ、各署に配布した。
また、指揮専従の指揮課としては、各課との連携も重要である。そこで活動終息後には必ず、通信指令課と指揮課の共同で、活動をふり返る検証会を実施し、課題が抽出されれば毎月月末に警防課と指揮課で検証会を行い、翌月初めには警防課、通信指令課との3課合同検証会を定例で開催、現場活動の改善点を話し合う体制を整え、改善事項などは警防課を通じ、各署へ是正を通知している。
さらに各消防署の中隊長を主たる対象に、指揮隊活動を徹底して体験、修得してもらうための中隊長研修を継続して実施している。この一環として毎年6月から2~3カ月の期間で実施されるのが「指揮隊同乗研修」だ。これは各消防署の中隊長あるいは2番手、3番手のリーダークラスを指揮課に仮配属し、研修を受けてもらうというもの。平時のみならず、災害発生時には現場にも一緒に出動する。また8~9月に行われる恒例の訓練が、各消防署に出向して実施される連携訓練だ。もっとも連携訓練は各消防署から要請があれば、随時、実施されている。このように、平時の本部指揮隊の任務は、とにかく訓練がメインとなる。
「指揮隊だけが強くなっても意味がない。各消防署も同時進行で精鋭部隊となってもらいたい。広域連合全体が災害対応に強くなる体制づくりを、訓練を通じて行っている」(土屋指揮課長)
指揮課長 消防司令長 土屋 勉
昭和60年に消防士拝命。平成31年4月、警防課長からの転属で指揮課長に就任した。
「指揮隊としては、7消防署ある佐久広域連合全体をひとつのチームにまとめ、共有事項等を知ったうえで統一した活動を展開できなければならない。そのためにはやはり、『訓練に始まりあって終わりなし』に尽きるということだ」
指揮係長 消防司令補 小林真樹
平成7年に消防士拝命。通信指令課から平成30年4月の指揮課発足に伴い異動、指揮車の設計に全面的に関わり主導した。
「自分の指示でいかようにもなるという意味で、常に責任が問われる難しい仕事だが、その分やりがいがある。災害時の活動では結果オーライではなく、当初から最適な活動プランを立てることで、結果としてけが人もなく、被害も最小限に抑えられるような活動を行っていきたい」
指揮係長 消防司令補 小林心一
平成7年に消防士拝命。今年4月、所轄署から指揮課に異動。
「これまでは活動隊だったため、自らの指示で隊を動かす立場になったことで、日々難しさを改めて感じている。責任が重大ではあるが、各隊が参集したときにスムーズな活動ができるよう調整する部分にやりがいを感じる。指揮隊発足後、まだ3年ということで、各消防署で統一した意識で活動できるようになるのはこれからだ。災害に対してみなが同じ方向を向けるように、また同じ認識で活動できるように、これから取り組んでいきたい」