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ココまで活用できる!消防ドローンのポテンシャル Case01:木更津市消防本部
令和2年にドローンを導入し、積極的に活用している木更津市消防本部。導入直後から有用性を実感し、令和5年には従来より高性能な機種を追加で導入した。そうして運用する中で、活用の幅を広げるアイデアや課題が浮かび上がってきた。そこで今回、国内ドローンメーカー「VFR」の代表取締役社長・蓬田和平氏が同消防本部の疑問や質問に答えた。
写真◎伊藤久巳(特記を除く)
Jレスキュー2024年3月号掲載記事
case01 木更津市消防本部
林野火災で有用性を実感
木更津市消防本部は2020年(令和2年)12月24日にDJI製のドローン「Mavic 2 Enterprise ZOOM」を導入し、警防課で運用を開始した。災害発生時の情報収集を目的に使用し、林野火災が発生した際にドローンでの情報収集の有用性を実感した。
林野火災をドローンで上空から撮影することで、延焼の規模と場所が的確に確認でき、飛び火がどの方角へ飛んで行っているのかを把握できた。同消防本部警防課の杉浦康太は林野火災に対してドローンで情報収集したときのことを次のように振り返る。
「消防隊員が火点にすぐに向かえないような林野火災において、ドローンで上空から撮影することで、延焼の規模と場所がすぐにわかるというのは非常に有用だ。ロープなどを使用して登って確認するしかないような高所でも、ドローンなら5分から10分程度で状況が分かる。判断材料がすぐに得られることで、防災ヘリを要請するかどうかといった消火戦術を組み立てやすくなった」
また、建物火災でもドローンによる上空からの映像を有効に活用している。令和5年3月31日には中型機のDJI製ドローン「Matrice 300 RTK」も導入しており、この機体に搭載した熱画像カメラによって、建物のどの部分の延焼が激しいのか、地上からの視点と上空からの視点の両方から判断し、消火戦術に反映している。
「Mavic 2を活用して、上空からの情報収集を積極的に行っていくうちに、カメラの性能が高ければ高いほど映像で得られる情報がもっと有効になると感じた。そのため、2機目を導入する際に最も重視したのがカメラの性能であり、飛行可能時間や操作性といった要素はカメラより優先度が低かった」(杉浦)
【木更津市消防本部のドローン運用状況】
●火災発生時の情報収集
林野火災における延焼場所の特定や規模の把握、飛び火の発生状況の把握
建物火災における延焼状況の情報収集、熱画像カメラを用いた温度計測
●要救助者の捜索
海での水難救助事案と山での遭難救助事案での捜索活動
赤外線カメラを使用した捜索
●火災原因調査での俯瞰撮影
火災現場の上空からの撮影による原因特定のための情報収集
●検証資料での活用
火災現場での活動時の各隊の配置や、地上と上空から活動を撮影することによる消火活動後の検証での活用
予防課でも積極活用
木更津市消防本部では、ドローンを警防課のほかに予防課でも活用している。火災の原因調査で実況見分を行う際に、上空から撮影した映像や静止画が出火箇所の特定に非常に有効な情報となる。また、建物の図面ではわかりづらかった構造が、上空からの画像などでわかるようになったほか、俯瞰で撮影することで出火範囲や焼損範囲がわかる。さらに、警防課が火災発生の初期段階からドローンで情報収集した映像がある場合は、出火場所から延焼範囲までを記録できるため、調査書類の作成がスムーズに行えるようになった。
「ドローンを導入する前は、火災現場を俯瞰的に見たい場合にははしご車を出動させて自分で上から見るしかなかった。この場合、場所によってははしご車が入れないこともあり、すべての火災原因調査で俯瞰した情報が得られるわけではなかった。ドローンによって俯瞰した情報がほぼ得られるようになったので、調査結果も精度の高いものが作成できるようになった」(予防課 吉田寛基)
24時間体制のドローン運用を目指す
木更津市消防本部は、これまで警防課と予防課で使用してきたドローンを令和6年4月1日から消防署本署に配備する計画を進めている。従来の日勤の職員の運用から署の運用とすることによって、24時間体制での運用を目指している。
「これまで約3年間にわたってドローンを運用してきた中で、有用な情報が得られる資機材だということが十分にわかった。どの隊がドローンを飛ばすのかという課題はあるが、これまで以上に積極的に活用していきたい。例えば、ドローンのほかにボートやCBRNといった特殊な資機材を専門に運用する部隊を立ち上げるという手段もあると思っている。当消防本部は1署制なので、当面は指揮隊の車両にドローンを1台積んでおく体制で運用しようと考えている」(杉浦)
ドローンという資機材が登場する前は、上空で活動するのはヘリコプターが主流であった。そのヘリコプターとドローンを比較すると、直接的な救助活動やバケツ放水などの消火活動は行えないものの、情報収集は同等の活動ができる。また、パイロットを育成するための費用と時間、機体の維持管理費などの運用コストも抑えられる。木更津市消防本部は今後も、情報収集を主としつつ、さまざまな状況でドローンの活用方法を探り、検討していく。
蓬田和平
三井住友銀行、マッキャンエリクソン、リクルートを経て、IoTデバイス開発メーカーにCOOとして参画。その後、2020年にDRONE FUNDに参画し、3号ファンドの新規投資をリード。2023年2月にVFR株式会社代表取締役社長に就任。
ドローンを使用して要救助者と会話したい
実用化される予定
障害物センサーの感度を調整できるようになりませんか?
可能かもしれないがバランスが大事
全天候型のドローンが欲しい
開発を検討している
消防における統一された運用指針やガイドラインはないですか?
現状、自治体ごとの判断に任されている