東京消防庁・火災調査チームの【部隊と資器材】

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東京消防庁・火災調査チームの【部隊と資器材】

Jレスキュー2019年1月号掲載記事

文・伊藤克巳
(元東京消防庁 防災部長) 
取材協力/東京消防庁 写真/伊藤久巳(特記を除く)

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予防部直轄と81消防署に配置

東京消防庁の中で火災調査を担当しているのは予防部調査課(損害調査係、資料係、原因調査係)である。本部担当職員28名に加え、全81消防署に担当係長、主任、担当員各2〜3名を配置している。

東京消防庁管内で火災が発生した場合、管轄消防署が調査を担い、調査結果の責任者となるのは各消防署の署長である。火災規模によって、署担当だけで調査を進めるのが困難な場合など、署からの応援要請を受けた場合には、要請に応じて本部担当職員が出向するのに加え、死傷者が発生した火災や、延焼が拡大した火災、車両・電気火災などの専門的な知識を要するケースでは、管轄消防署の要請がなくとも本庁職員が出向し、合同で火災調査を行う体制を採っている。

なお、本庁は鑑識施設を保有していることから、火災原因が製品火災の可能性があるものなどは、燃焼物を本庁調査課の鑑識室に持ち込み、より詳細な調査を行っている。

東京消防庁・火災調査チーム
東京消防庁の本部庁舎に配置されている予防部調査課員。(写真/編集部)
火災調査員の資格

東京消防庁には、予防業務に対する庁内資格「予防技術員」「上級予防技術員」が設けられており、主任調査員は、この資格を保有した職員から任命されている。

東京消防庁・火災調査チーム
予防部調査課は、原因調査係、資料係、損害調査係の3係に分かれている。資料係では毎年「火災の実態」を編纂。有益かつ貴重な資料となっている。
消防の火災調査結果が 製品リコール、改善に導く

東京消防庁の原因調査係約16名はさらに「電気」「燃焼・化学・微小火源」「車両」に専門を分けており、各分野の専門知識を習得し、困難な原因調査に対応している。特に製品火災など、製品そのものの不具合等が判明したケースなどは、その調査結果を消防庁・消費者庁へ報告している。

過去には石油ストーブの転倒防止やふろの空焚き防止など、東京消防庁の働きかけによって、各製品の規制化につながったものもいくつかある。

火災現場の見分・調査活動
東京消防庁・火災調査チーム
火災現場で部屋の外周部から発掘を進めている様子。
東京消防庁・火災調査チーム
残渣物に混ざった発火源を選り分けながら探す調査員。
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写真のように、調査員の仕事は発火源となるものを子細に探す根気が求められる。
聞き取り調査
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調査で欠かせないのが関係者への聞き取り調査。調査内容を図面に落とし込み、住人の生活スタイルなどから火災が起こった状況をあぶりだす。
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聴取内容を図面に落とし込んでいる状態。
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これらの聴取で、住人が普段どのような生活をしているのか、テーブルタップがあったなら、そこに何をつなげているのか、ガステーブルの使用状況等を一通り書き込み、そこから火源を絞り込む。
聞き取りの主な手順は
  1. 間取り
  2. 収容物(家具、ごみ箱など)
  3. 関係者への聴取でさらに詳しく(ゴミ箱の材質(金属、樹脂)・サイズ、捨てていたもの、携帯充電器やテレビのコード差し込み口等)
  4. 電化製品は何があったか(電気カーペット、こたつ等)
  5. 燃焼機器(石油ストーブ等)の有無
鑑識
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鑑識を行っている様子。分解しながらも、火源が分からなくならないように細心の注意を払って扱わなくてはならない。
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燃焼物を拡大して分析する顕微鏡とモニター。
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X線透過撮影装置によるCT画像(リチウムイオン電池)。
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製品内部の状況を断面図で確認することができる。製品火災の可能性がある場合など、むやみに分解してしまうと解析できないため、X線透過装置を活用する。

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