日本になぜRSDLが必要なのか

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日本になぜRSDLが必要なのか

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世界で使われるRSDL

RSDLは米国防総省、陸海空群や海兵隊、NATO諸国の各国軍、さらにそれらの国々の消防、警察等のファーストレスポンダー等で広く使われている。日本を除けば、使ってない国を探すのが難しい状況だろう。

皮膚への安全性に関しては、FDAを始めとして、欧州のEN規格、豪州の薬品・医薬品行政局(TGA)の認証が取れている。

効果に関しては、2分以内に化学剤等が除染されることが、各国のラボで検証されている。具体的には、米国でいえばバッテル研究所、Edgewood Chemical Biological Center(ECBC)、U.S. Army Medical Research Institute of Chemical Defense(USAMRICD)など、欧州等ではオランダ応用科学研究機構(TNO)、スウェーデン国防研究所(FOI)、シンガポール防衛科学技術庁(DSTA)などである。なお、日本の厚生労働省の承認を取ろうと思えば、皮膚への安全性の試験だけで軽く見積もって10年くらい、経費で数十億円単位になるだろうという予測ができる。そのため誰もやろうとはしないだろう。

ちなみに、RSDLの薬効成分はpotassium 2,3-butanedione monoximeで何ら毒性はない。除染は、除去、中和、求核置換によって進行し、スポンジによるふき取り、攪拌も効果があることはいうまでもない。

なおRSDLは、国際機関である化学兵器禁止機関でも当然使われている。我が国周辺でみれば、韓国、台湾、シンガポール等でも使用されている。使用者としては、各国軍、ファーストレスポンダーの他に、大規模イベントの際の一般市民用やG7サミットのような国際会議でのVIP警護用、危険な面に遭遇するリスクのあるNGOや医療関係者等だという。

日本になぜRSDLが必要なのか
RSDLを使用している主要な国の一覧。

2008年以降、米国防総省、陸海空海兵の各軍の制式除染剤となっている他、米国や欧州の主要なラボから推奨を受けている除染剤はこれだけである。

このように広く使われる背景には何があるのだろうか? FEと比べたときに、化学剤がローション側に移り、即座に中和されるので再エアロゾル化の心配がない。化学剤のガスや蒸気が出てくることもない。防護マスクの性能に影響を与えることもない。除染した範囲がはっきりわかる。これらの利点は、確かに魅力ではある。

一方で、FEは化学剤を吸収した粒子が逆に防護マスクの障害となりうる。米陸軍のM291除染キット粒子のFEから再発生するガスが、危険なレベルであることが米バッテル研究所の動物実験データで明らかになっている。どの部分まで除染したか明確でない。このような理由から、米軍は除染キットをRSDLに切り替えたという。

なおRSDLは、湾岸戦争の時代から使用が開始されているが、有害な副作用等は報告されていない。もちろん、使用後は水で洗い流してもよいが、そのまま皮膚に付着していても無害であるという。

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M291除染キットを使用する様子。

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