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日本になぜRSDLが必要なのか
コストの問題
米国のEmergent BioSolutions社のサイトによれば、RSDLの価格は《$2600/50》という数字が出てくる。1袋約50ドルなので、今の円安の状況では7500円くらい(2024年8月27日現在)かと思う。ただ、別のサイトでは1袋が65ドルという価格になっているので、これだと約9500円以上(同)になっ
てしまう。購入数が少なくなれば、単価が上がる。
まだ、私が現役時代にRSDLの話を最初に聞いたときには、単価は1000円程度という話だったと記憶している。あれから20年、価格が上がるのは当たり前だが、それにしても化学テロ用に一般市民にまで準備するのは費用対効果が悪すぎると思う。
保存期限が5年としても、当面は神経剤用自動注射器と同様に、消防のNBC対応部隊、陸上自衛隊の化学科隊員、警視庁の専門部隊等に持たせる方向が妥当かもしれない。
同じ意見は、米国の専門家からも出ている。大規模イベントの際は別として、化学テロ、特に神経剤テロは、どこでいつ起こるか予測しがたい。地下鉄サリン事件を思い出すまでもないことである。もし、ソマンやTGD粘性ソマンを使われたら、それはリスクとして甘受するしかないだろう。
一方で、陸自の個人用除染具はミット型でFEを使用していたと記憶している。SB社製であったらしいが、最近はこれをTY某社の吸着繊維製に変えたらしい。その単価は2500円ほどだという。現在の予算環境ならば、早くRSDLに切り替えた方が隊員のためである。海上保安庁の特別警備隊や羽田の救難基地など、あるいは警視庁のSATなどは、ノビチョクやVR、TGDを考慮して早めにRSDLを持ち、訓練を始めておくことも一案かもしれない。
何よりも、G7サミットやその他の国際イベントの警備の際に、VIP警護も考慮して、担当医師の個人輸入の形でRSDLを入れるという形はこれで終わりにしたいものである。
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日本へRSDLを導入する際の障害