【ドキュメント】御嶽山噴火災害<br>―被災地病院―

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【ドキュメント】御嶽山噴火災害
―被災地病院―

御嶽山の噴火で被災患者の多くが搬送されたのが、長野県の長野県立木曽病院。木曽地域唯一の病院が61名の被災患者に対応した3日間の奮闘記録。

Jレスキュー2015年1月号掲載記事
文◎新井千佳子
活動写真◎長野県立木曽病院

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負傷者数不明…だが、 何人きても受け入れる!

地域医療を支える木曽地域唯一の病院

御嶽山噴火災害では、長野県内の11病院と、山梨・群馬・新潟・岐阜・埼玉県の病院から災害派遣医療チームDMATが出動した。

被災患者が多数搬送された長野県側の被災患者を一手に引き受け、DMATの現場活動拠点となったのは地元の長野県立木曽病院(以下、木曽病院)。木曽病院では9月27日~29日の3日間で、61名の被災患者を受け入れた。

木曽病院(病床259床)は、へき地医療対策の一環として1964年(昭和39年)に開設された(1992年に現在地に移転)。二次救急に加え、夜間・休日の一次救急も担当し、24時間連日の救急対応に応えている。

木曽地域で唯一の病院(有床診療施設)であり、急性期から慢性期まであらゆる分野の医療サービスを提供。救急告示医療機関・災害拠点病院・へき地医療拠点病院・第2種感染症指定医療機関等の指定を受け、木曽郡約3万人の医療を支えている。

御嶽山噴火災害 被災地病院
火山灰を大量にかぶった被災患者はシャワーで除染されてから、エントランスに搬送され、トリアージが行われた。写真は9月27日当日の午後9時過ぎの様子。(写真/長野県立木曽病院)
負傷者数不明の中での受入準備

9月27日は土曜日で、木曽病院では一般診療のない休診日。そんな普段よりも静かな病院に、御嶽山噴火のニュースが飛び込んできた。

年2回の大規模災害対応訓練と年1回のDMAT訓練を含め、訓練は普段から数多く行っている木曽病院では、スムーズに病院を災害モードに切り替えた。

「院内対策本部」が立ち上がったのは13時45分。平日であれば災害モードに切り替えると一般外来・救急の受入をストップするが、噴火当日は土曜日で一般外来は休診のため救急外来のみをストップ。同時に病院職員の緊急招集を開始した(9月27日~28日の2日間は職員100人体制)。

しかし、どんな状況で、どの程度の被害が出ているのかが皆目わからない。情報を集めようと消防や県庁に連絡するも、確実な情報が全く入ってこなかった。

これからどれだけの負傷者が搬送されてくるのか想像がつかなかったが、多数の患者が搬送されても対応できるように受入体制を整えていくしかない。1階のエントランス部分に、トリアージタグの色別に動線を作り、症状ごとに適切な処置・対応ができるように準備し、患者の搬送を待った。

さらに災害拠点病院のDMATチームを持つ病院として、14時50分にはDMATチームを1チーム、黒沢口の登山口である御岳ロープウェイ駅舎に出動させ、現場救護所を設営した。

この時点で長野県は県内の医療機関に対し、DMATの派遣を要請(県内のDMATチームを持つ木曽病院を除く10病院全てに派遣要請)。木曽病院ではDMAT現場本部設置場所の確保など受入準備を開始。県内のDMATチームが木曽病院を目指し、準備・出発を始めた。

御嶽山噴火災害 被災地病院
9月28日の朝8時過ぎの様子。本格的な救助活動が開始されるため、多数の被災患者が搬送されることが予想された。院内スタッフ100名体制で患者を待つ。(写真/長野県立木曽病院)

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火山灰で真っ白、続々と搬送される被災患者

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