笹子トンネル 天井板落下事故<br>【災害事例ドキュメント】

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笹子トンネル 天井板落下事故
【災害事例ドキュメント】

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難航する消火活動
1.2トンのコンクリートとの格闘

視界が確保されたトンネル内で検索を開始した大月市消防署の救助隊は、延焼中の車両に対し、消火栓から消火活動を行った。天井板再崩落のリスクを抱えるなか、道路の真ん中からVの字に割れているその落ち方を確認し、再び崩落しても下敷きになる危険性が少ないトンネル側面に張り付くなどして消火活動を続けたが、なかなか水が届かず、車両は自然鎮火となった。

「大きな天井板が車両を完全に覆っていて、上からは天井板しか見えない状況。その板の上から放水しても効果があるわけもなく、天井板の下に筒先を入れる方法で放水したが、車両まで水を届かせることはできなかった」(蔦木)

一方、各本部の指揮隊は、それぞれの隊の活動状況、現場の状況を報告するなか、効率的な活動を行うため、10時30分に合同指揮本部を設置することを決定した。設置場所は比較的視界が良好なトンネル東坑口前とした。

この時点ではまだ天井板の下敷きになっている車両の数などは確定されていなかったが、大月市消防署救急隊の判断で10時13分、山梨県ドクターヘリを要請。ヘリは10分後には笹子に到着し、2名の医師が応急救護所で待機していた。

合同指揮本部設置後、10時30分には東山梨消防と大月消防の合同隊で再び現場へ進入し、延焼車両は2台であることを確認した。この事故では3台の車両が下敷きになっていたが、3台目はなかなか発見できなかった。12時半ごろ警察からの「冷凍冷蔵トラックの運転手が下敷きになっている」という連絡を受け、画像探索機で検索をかけてやっとトラックの位置が特定された。

しかし、崩落箇所東側境界に再崩落の危険が認められ、隊員は全員退避することになった。同時に消防からNEXCO中日本に危険箇所の再崩落防止策の設置を要請。12時前になるとNEXCO中日本の派遣で駆けつけたトンネル専門員と、警察が要請した山梨大学の地質学専門家が到着し、危険箇所の調査が行われるようになった。

合同指揮本部
笹子トンネル東坑口(出口側)前に設置された東山梨消防本部と大月市消防本部による合同指揮本部。(写真提供/大月市消防本部)
1車両だけで5時間に及ぶ救助活動

13時40分には消防の合同指揮本部に山梨県警察とNEXCO中日本が加わり、統合指揮本部が設置された。専門家による調査報告が16時にあり、すでに天井板が落下しているエリア内は再崩落の危険性がないと判断されたため、16時16分、消防は救出活動を再開した。

まず車両火災が発生しておらず、生存の可能性があった冷蔵冷凍トラックの運転手の救出に2本部合同であたることになった。大月消防署と塩山消防署から指揮隊と救助隊計14名が油圧救助器具や削岩機などの資機材を搬入し、救出に取りかかった。が、落下して車両に覆いかぶさっていた天板は厚さ8cm、長さ5m、重量1.2トン。ジャッキや救助用支柱で天井板を持ち上げたり、エンジンカッターによる切断が行われたが、これだけの大きさのコンクリート板を一気に撤去するだけのパワーは消防装備にはない。車両上部のコンクリートを削岩機で細かく割っていき、天板に入っている鉄筋を油圧カッターで切断しながら地道に削っていくしか方法がなかった。やっとトラックの天板が見え、要救助者の救出を完了できたのは22時6分。本格的な救助活動が始まってから実に5時間以上経過していた。救出された要救助者は、救急車で病院に搬送されたが、後に死亡が確認された。

重機投入で2台を一気に救出

救助隊がトラック運転手の救出活動を行っている間、NEXCO中日本による天井板不安定箇所の補強も開始され、支柱による安定化が行われていた。また、落下した天井板の下にはまだ2台の車両が残されていたが、1枚が1.2トンもあるコンクリート板の撤去を消防の装備だけで行うには限界があり、消防からNEXCO中日本に重機やエアハンマーによる天井板の撤去を要請していた。

残る西側車両は、天井板の除去が重機により行われ、東山梨消防本部の指揮隊と救助隊が救助活動を開始。瓦礫の撤去作業と油圧救助器具等による各ドアの切断除去、ピラーの切断を行い、ルーフを開放。3時24分に、車内にいた5遺体の死亡が警察により確認され、収容を行った。

続いて、4時から東側車両からの救出活動を大月消防署が開始。天井板は重機で撤去され、4時29分には車のルーフを開放し、車内にいた3遺体の死亡確認が警察により行われた。

その後も、消防指揮本部は現場の安全確認、各関係機関との調整などで同日の午後16時25分まで続いたが、活動隊は6時56分に各消防署へ引き揚げ活動を終了した。丸24時間近くに及んだ今回の活動で、東山梨消防本部は延べ10隊59名、大月市消防本部は延べ8隊51名が出場した。

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