Special
最小限の人員と道具で戦う究極のレスキュー
【静岡市消防局―山岳救助隊】
しずはた山岳救助隊の装備
背負いハーネスでの交替の仕方
INTERVIEW
静岡市消防局
千代田消防署 しずはた出張所
出張所長山岳救助隊長
消防司令 繁田陽司
昭和61年拝命、特別救助隊(15年)、静岡県防災航空隊(3年)、警防課、総務課、水難救助隊(5年)を経て平成26年4月より山岳救助隊隊長
「隊長として努めているのは、経験豊富な副隊長のサポートとして、2次災害だけは絶対に起こさないこと。そのためには日頃から風通しのよい環境を作っておく必要がある。隊長、副隊長であってもミスすることはあるが、その時に、隊員であっても上司に向かって「危ない」と言える環境でなければならない。一瞬の躊躇が危険防止を遅れさせることになるので、隊員間に壁のない環境を作っておくべきだ。
やる気があって志願してきている隊員も多く、細かい技術的なことは自発的にできている。隊員にゆるみが出た時だけ、隊長と副隊長で管理していけばよいと思っている」
副隊長
消防司令補 望月将悟
平成9年拝命(旧清水市消防本部)。合併前の平成11年11月より山岳救助隊。
「静岡市内でも山の多い地域で育ち、幼いころから山に親しみ、山岳救助に携わって17年目となるが、山岳救助隊員である前に、消防職員として困っている人がいたら助けられるように、という想いで向き合っている。山の救助は、道具が十分ない中でどれだけやれるか、というサバイバル能力が求められるが、それを追求することは、震災や特殊な大規模災害の際にどこまで対応できるかという対応能力を付けることにつながっていると思う。山岳救助隊としては、南アルプスという日本を代表する名山で活動できることを誇りに思う一方で、隊員も足を滑らせれば大きな事故につながるので、一瞬の気の緩みも許されない非常に厳しい活動である。ベテラン組の自分の役割は、後輩を安全に活動させること。ロープレスキューシステムも、ツールの進化によって少しずつ変わっているが、新人も覚えなければならないので、事故のリスクを減らすためにもシンプルをモットーにやっている」
副隊長
消防司令補 長谷川大介
平成12年拝命。平成15年10月より特別救助隊、 平成25年4月より山岳救助隊。
「標高の高い南アルプスは、山岳救助隊1小隊だけで出場しなければならない。平地での一般的な救助事案や、低い山の事故などでは、指揮隊や特別救助隊、救急隊のバックアップも得られ、それぞれの役割だけをやればよいが、山岳救助隊だけの現場では、現地での情報収集から航空隊への連絡、連携方法の調整などすべてを山岳救助隊だけでやらなければならないので、コミュニケーション能力も必要だ。
山で活動することのリスクは、実際に山の中を歩かなければ見えてこない。どれだけ山に入っていたかという経験が実災害で生きる。山では『見る目を養う』ことが大事。危険を察知する目、対処法を見つける力が必要になる。それらの力は訓練の中で身につけていくしかない」