世界トップレベルの技術!<br>台湾のロープレスキューの教育体制とは

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世界トップレベルの技術!
台湾のロープレスキューの教育体制とは

台湾のロープレスキューは現在、世界でもトップレベルにある。その成長と発展の歴史は、日本の状況に非常に似ている。台湾のロープレスキューの歩みを振り返ることで、日本の消防が今後目指すべき参考となるはずだ。

写真・文◎GRIMP JAPAN
Jレスキュー2024年7月号(6月10日発売)より抜粋

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以前の状況

台湾では消防士になると最初に約1年間の初任科教育が実施されているが、この教育訓練の中で行われるロープ訓練は、使用するロープが三つ打ちロープではなく全て編み構造ロープであるという違いこそあるが、ロープブリッジ渡過やフットロック登はん、腰確保などの身体確保など、日本と類似したロープ技術の訓練が行われており、台湾消防の教育においてロープレスキューは取り入れられていなかった。

こうした状況の中、台湾のロープレスキューは、それまでのロープ技術の安全性や確実性に疑問を持つ各地の消防士による現場発信が広がり、各消防本部でその運用が始まっていったのだ。

台湾消防のロープレスキュー教育
2023年に実施された台湾消防のロープレスキュー教育レベル2(訓練センターにて)。

ロープレスキューの大会を通じた成長

台湾では、2014年にロープレスキュー競技会「橋」が始まった。大会という競い合う目標を通じて台湾のロープレスキュー技術は一気に台湾全土に広がり、2019年には、高雄市消防のロープレスキューチーム「KRRT」が、世界最大規模のロープレスキュー競技会「GRIMPDAY」で優勝。アジア勢として初めて世界の頂点に立ち、台湾のロープレスキューは文字通り世界トップレベルとなった。その影響は非常に大きく、KRRTが中心となってその技術を広げていったことで、台湾では全土でロープレスキューが取り入れられていった。

台湾の消防チームがロープレスキュー大会GRIMPDAY2019で優勝した様子
台湾(高雄)のチーム「KRRT」がロープレスキュー世界一となったGRIMPDAY2019。

教育への導入

各地の盛り上がりと同時に課題となったのは、これまでのロープを使用した救助技術との乖離であった。台湾では初任科教育において従来の身体確保を中心としたロープ救助技術の教育が行われていたのみで、初任科教育以外でロープ救助についての専門教育はなく、各消防本部が個々にロープレスキューを導入し運用している状況であった。
 
そこで台湾内政部訓練センターでは、2022年からロープレスキューの専門教育課程をスタートさせ、その講師に世界での実績を認められた「KRRT」を中心としたロープレスキューに取り組む各地の消防士を個人指名した。彼らはこれまでの国内外でのロープレスキュー経験を活かし、教育プログラムを策定し、台湾のロープレスキュー教育の礎を創り上げた。教育はレベル1からレベル3までの3段階に分けられ、それぞれ約1週間の期間でロープレスキューに必要な知識と技術を公的に習得させる体制を構築したのだ。

台湾のロープレスキューについてのさらなる詳細はJレスキュー2024年7月号(Vol.130)(2024年6月10日発売)に掲載!

台湾のロープレスキューは現在、世界でもトップレベルにある。その成長と発展の歴史は、日本の状況に非常に似ている。台湾のロープレスキューの歩みを振り返ることで、日本の消防が今後目指すべき参考となるはずだ。
写真・文◎GRIMP JAPAN ※Jレスキュー2024年7月号(6月10日発売)より抜粋

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