Special
誇りと情熱にあふれた111人のすごいチーム
東京消防庁装備部装備工場
装備工場案内
装備工場の業務は多岐にわたる。まず門を入って工場建物の入口にある「受付」では各消防署所からの入工中の車両の管理、事務手続き、引き渡しを担当する。
受付の先から中庭に入ると、その左右(南北)に工場のメインとなる整備場が広がる。北側が「第二工場」で、主にポンプ車と救急車の整備、ポンプ試験を担当する。中庭をはさんで南側が「第一工場」で、はしご車や救助工作車等大型車両、特殊車両の整備を行う。第一工場の屋根には開閉式の大型天窓がついており、はしごを全伸梯して点検整備を行うことができる。
第二工場の地下一階は「機械工作室・木工室」。主に動力以外の機器を扱う部門で、ガンタイプノズル、分岐管、車両のシートなどの整備を行う。たとえばガンタイプノズルに水漏れが発生した場合に、ノズルを分解してバルブの交換を行ったりする。状況によっては必要な部品等を製作している。ここで扱うのは消防関連ツールばかりなので、時にはその部品サイズに合わせて専用工具まで自作する必要がある。この一角には、ミシンや糸、型紙、シート用の皮などが並ぶ縫製工場のような一室がある。シートの修繕を行う部門である。隊員が防火服に空気ボンベや安全帯などを装備して乗降する消防車両のシートは破れやすいため、これを放っておくと、消火活動後のびっしょりに濡れた状態で乗車したときに水気がシート内のウレタンに浸透し、さらにその下の木材部分まで濡らして腐食してしまう。それを防ぐためにはシートを張り替える必要があり、縫製までやっているのだ。
次に防音機能を備えた部屋が「電装室」。赤色灯やサイレンアンプの修理を行う部門で、オルタネータテスターが整備されている。第一・第二工場の先(西側)には「空気充填所」があり、大型のコンプレッサーにより同時に35本の空気ボンベの充填を行うことができる。4.7リットルボンベ1本なら2分半程度のスピードで充填可能である。このほか、継続検査(車検)を行える検査施設も備え、さらに塗装室、溶接室、シール室、空気呼吸器の検査室など、車両だけでなく、東京消防庁の消防機械器具の大部分の整備を一手に担っている。
職人魂のかたまり
各部署での精密な整備風景は写真を見ればおわかり頂けると思うが、この工場で最も評価されるべきは、整備士たちが「車両の不調によって災害対応に支障をきたしてはならない」という同じ思いと緊張感を持って整備に臨んでいることだろう。次の定期点検まで1年もたないと思われる部品があれば交換し、問題が発生しないような整備を心がけている。
この工場で30年以上、消防車の整備に携わってきた芹澤宏幸統括整備長は、「すべての整備は都民のためにある。自分で点検したものは責任を持って稼働させる。それが整備士のポリシーだ」と語り、車両を運用する隊員に対してはこんな思いを口にする。
「車両を単なる道具としてではなく、隊員の一員として扱ってほしい。仲間として扱っていれば、車が不調を訴える『ヘルプ!』が聞こえてくるようになる。我々整備士は車の声をくみ取って、修理し、消防署所に送り出しているのだから、それを受け取った側も丁寧に扱ってほしい。どんなに有能な隊員がいても、車両や器具が機能しなければ現場に行って力を発揮できない。だから車は相棒だと思って、自分が現場でホコリだらけになったら風呂で綺麗にするように、車両や器具も綺麗にしてやってほしい」
整備士の仕事を間近で見る総務担当の中嶋消防司令補は、装備工場のスタッフ達を職人魂のかたまりだという。
「装備工場に異動してくる前の自分を振り返ると、車両の使い方が雑だったかもしれないと思う。機関員資格を持ち、大型車両の免許も取得して車両に関わってきたが、装備工場の仕事ぶりを知ってしまった今では、もっと大切に扱わなければならなかったとおおいに反省している」
東京消防庁の車両機器はこのように愛情を持って整備されているのである。
第二工場
ポンプ車・救急車・小型トラック系の整備を担当
第一工場
特殊車両の整備を担当
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機械工作室・資機材の整備・検査場 など