大型化学消防艇「みやこどり」 東京消防庁

日本の消防車両

大型化学消防艇「みやこどり」 東京消防庁

東京消防庁 臨港消防署[東京都]

写真・文◎伊藤久巳
「日本の消防車2014」掲載記事

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総トン数195t、合計出力599kW、最大乗船定員100名 日本最大級の消防艇、就航!

四代目は放水能力向上、大規模災害への対応力強化
消防艇
臨港消防署に配備された四代目「みやこどり」。船体型式はV型、船体構造は鋼で、船首に強化構造を採用する。総トン数195トン、全長43.2メートルという船体規模は、全国の消防本部が保有する消防艇では最大だ。収容人数は約100名。

平成25年4月30日正午、東京消防庁は臨港消防署に配備する大型化学消防艇「みやこどり」を新艇による運用に切り替えた。新「みやこどり」は新潟造船で竣工ののち、同年3月に回航、配備され、運用する臨港消防署第1舟艇小隊が放水訓練、航空連携訓練などを行った上での運用開始となった。従来艇は三代目に当たり、新艇は四代目「みやこどり」ということになる。

新艇は、まず大型化している東京港入港船舶へ備えるため、従来艇でも毎分51,000Lあった計3機のポンプ装置の放水能力を同70,000Lに増強。このためドイツ、MTUフリードリヒスハーフェン社製の3機のディーゼルエンジンは、中央機1302kW、左舷機、右舷機それぞれ2346kW、計5994kW(約8000馬力)という大出力を発揮する。

さらに、大規模水上災害への対応力強化のため、上甲板に救急処置用ベッド14床が置ける救護室を設置、救急救命士による特定行為用を含む救急資器材庫を設置、また上甲板の後方にヘリコプターによる緊急救助用スペースが設けられている。

これらにより、船体は総トン数195t(従来艇は119t)、全長43.2m(同32.09m)と飛躍的に大型化されている。ちなみに、これだけの大型化でも、大出力エンジンの恩恵により、巡航速力は20KT(時速約37km、従来艇は18.7KT=時速約34.6km)と向上している。

3機のエンジンとも、推進力はウォータージェット推進方式として伝え、高い操縦性能が確保されている。ウォータージェット推進方式の採用により、ジョイスティック操船機能、定点保持機能、船首方位保持機能などが付加されることになった。

ヘリコプターからの災害現場からの映像を受信し、状況把握を早期に行うためのヘリテレ映像受信装置、夜間の目標物の視認性を向上させる追尾機能付きの赤外線カメラ、可燃性ガス、毒性ガスなどを検知するガス検知器、海洋汚染を防止するため、汚水を化学処理する汚水処理装置などを搭載する。

消防艇
隊員が乗る甲板は、上から航海船橋甲板、船橋甲板、上甲板で、さらに写真で見える最下階の上甲板の下に調理区画や機関室などがある上甲板下という甲板が設置されている。
消防艇
出場途上の河川に架かる橋などに考慮し、全高は従来艇と同様の20mに抑えられている。
ボート
上甲板に搭載された6人乗り小型搭載艇。左右のクレーン装置によって水上に降ろして活動可能。推進はウォータージェット方式。横方向への推進力を得るサイドスラスターも併設され、この推進は可変ピッチプロペラによる。
放口
上甲板側面に設置された65ミリ放口×6口、100ミリ吸口(救難排水用)×2口。放口は艇全体で65ミリ×12口、75ミリ×4口、150ミリ×4口が設けられている。
放水砲
放水砲
放水砲
放水砲は6基装備する。上段の放水砲2基はマスト甲板に、中段2基は船橋甲板に、下段2基は上甲板に設置されている。写真上から上段の放水砲、中段の放水砲、下段の放水砲。
放水銃
上甲板最前方には2基の放水銃を備える。
ラぺリングポイント
船橋甲板から上甲板後方をふかんする。中央にヘリコプターに対するラぺリングポイントが表示された緊急救助用スペース、その左右には海面上の要救助者を迅速に船上収容するための救難者揚架装置が設置されている。前方(写真下)には小型搭載艇。
クレーン装置
左右に1基ずつ設置された最大吊架重量1トンのクレーン装置。小型搭載艇の卸下、収容などに使用する。
ウォータージェット
推進はウォータージェット方式。舵だけでなく、進行方向にウォータージェット本体を向けることによって容易な回頭が可能。巡航速力は20KT。
消防艇
放水能力は1分当たり実に70,000L。放水量は一般的なポンプ車35台分に相当する。
消防官
四代目「みやこどり」を運用する臨港消防署第1舟艇小隊。船長(小隊長)以下計10名で編成される。

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